人材育成に失敗すると「なんちゃって専門特化医療機関・介護事業所」と呼ばれてしまう

医療・介護事業における最大の経営資源は、現場で働く職員である
現場で働く職員の生産性やサービスの質の高さが直結して、経営に影響する

診療・介護報酬改定により医療・介護事業は機能分化が誘導されており、今日においては
医療・介護事業所が担う地域における役割は明確になりつつある

高度急性期では、脳卒中や循環器に特化している病院が増えており
また、在宅医療においてもリハビリテーションや看取りに特化している診療所や訪問看護ステーションも増加している
つまり、同じ病期や時期であっても対象とする顧客を選択している事業所が増加している

専門特化は、マーケティングや事業戦略において必要不可欠であり、適正な事業ポジショニングは今日の医療・介護事業経営では重要である。

しかし、多くの医療・介護事業所は自らが選択した専門領域における人材育成に苦戦している

経営者や運営者はマーケティングの結果、特定領域での事業を決断し、その事業を断行しようとするが、社内的な人材資源が不足しているために事業計画が頓挫するケースが多い

訪問看護ステーションがリハビリテーションに特化する場合でも、理学療法士や作業療法士を単に採用すれば良いという問題ではない

どのようなリハビリテーションに特化するのかという事業領域の定義は明確でなければ、採用も人材育成も曖昧になってしまう

終末期リハビリテーション、脳卒中リハビリテーション、摂食嚥下リハビリテーション・・・・など、どの領域に力を入れていくかによって大きく人材育成戦略は異なる

また、残念ながら多くの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師は自分の技術と経営の融合や最適化など考えていない

しかし、雇われている以上、その組織が求める技術を最優先で高めていくことは従業員の責務である

例えば、整形外科クリニックのリハビリテーション科で上位から3つのリハビリテーションの処方箋が出る疾患は、肩関節周囲炎、腰痛症、変形性膝関節症である
もし、その整形外科クリニックに勤務するセラピストが脳卒中や足関節疾患などの技術を高めていたとすれば、それは院長や事務長から指導されるべきことである

リハビリテーション技術などの医療・介護技術をどのように経営や運営に活かしていくのか?という視点を持たない医療・介護職は市場では重宝されない

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リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護経営コンサルタント
ワークシフトプロデューサー
高木綾一
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診療所(クリニック)の根深い問題

診療所の存続が危うい
近年、診療所の数は9000から9500の間で増減を繰り返しており
市場開拓における頭打ちの状態になっている

現在、診療所は様々な問題を抱えている
もっとも、深刻なのは承継問題である
現在の診療所の院長は、団塊の世代であり2025年に後期高齢者になる人が多い
朝から晩の外来だけでなく、緊急の往診、経営的な活動が年齢的に難しくなる
また、診療所を取り巻く経営環境も10年前と比較すると、劇的に変わっており
環境変化に対する対応には相当な労力が必要とされる

このような状況においては、診療所の存続は容易ではない
息子、娘、親戚縁者に継がせるにせよ、血縁関係のない第三者に継がせるにせよ
経営的な問題が付随してくる
経営に対して積極的な姿勢を持つ医師でなければ、後継者にはなりえない

そのような経営に
積極的な後継者を確保できない場合は
廃業をしなければならない
診療所はそもそも最小限の人数で運営をしている所が多いため
院長先生の引退は即、閉院につながりやすい側面がある

診療所は、訪問看護ステーションとならんで
地域包括ケアにおける中核の存在である
近年の診療報酬改定、介護報酬改定は
明らかに診療所のかかりつけ医師の機能を強化している

しかし、先述したように、承継問題により
診療所の経営者である院長先生は
あと10年で引退をする可能性が高い

よって、新しいことに取り組むことに対する
エネルギーが残されていない
このような状況では、2025年に向けて、
廃業を前提とした緊縮運営が行われやすい
そのことにより、
働く看護師、セラピスト、介護福祉士等のキャリアの発展は厳しい状態になる

将来にわたって永続に事業を継続する予定の診療所
近い将来に事業を停止する予定の診療所

あなたが勤務する診療所はどちらですか?

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理学療法士・作業療法士は歯科医師のワークシフトを学べ

近い将来、理学療法士・作業療法士は過剰供給になるのか?ならないのか?
そういった議論が、業界内で渦巻いている
現状のペースで新規資格取得者が増加すれば、2025年には理学療法士、作業療法士が30万人近くになる可能性もある。

劇的な経済発展が望めないことや社会保障費の圧縮などにより、医療・介護分野へのお金の流れは低調になる。また、理学療法士や作業療法士の有資格者も増加し、人件費の自然増もさけられない。
したがって、理学療法士や作業療法士の給料が今後、劇的に増加していく見込みはない。
年3,000円の昇給をしたとしても、10年間で月30,000円の増加である。

今後は国や外部環境に強く依存しない「働き方」が必要とされる時代になったと言える。
「働き方」を考える上で、必要な軸としては「個のブランディング」である。
すなわち、個人としての実力を磨き、世の中から信頼を得ることである。

このような「働き方」が、顕在化している医療職が既に存在している。それは、歯科医師である。

現在、歯科診療所はコンビニエンスストアの数より多い。
歯科医師の数も近年では、10万人を超えており、過当競争となっている。
そのような環境では、自ずと市場原理が作用し、歯科医師の個の力の差が顕在化する。

現在、歯科医師でワークシフトをしている事例には以下のものがある。

・往診専門に特化する
・摂食嚥下リハビリテーションを行う
・STを採用し、訪問リハビリテーションを行う
・審美歯科を行う
・介護事業所やサービス付き高齢者向け住宅を運営する
・他院と連携して、術後感染予防のために、術前患者への治療を行う
などである。

外来で、ひたすら治療するという「働き方」から、脱却している歯科医師が自分の専門性を新しい市場で提供している。他の歯科医院とは差別化することで、業界や地域で新しいポジショニングを得ているのだ。

では、理学療法士や作業療法士はワークシフトを行うことが可能なのか?
確かに、理学療法士や作業療法士には開業権がないので、開業という視点ではワークシフトは困難である。
しかし、理学療法士や作業療法士の専門性を活かせる市場は山とある。
社内を見渡しても、リハビリテーションの教育や他職種との連携、新しいリハビリテーション技術の開発やその治験、介護士や看護師への教育やカンファレンスのファシリテーター・・・・など多くの活躍できる分野があるのではないか?
社外においては、在宅生活を支えるサービスや異業種へのアドバイス、物販やインターネットを活用したサービスなど・・・・非常に多くの可能性を秘めている。

資格という国家が与えてくれたパワーで働くのではなく、その資格の専門性を活かして社内外に貢献できる新たな分野で個の力を発揮していく。
これが、今後、理学療法士や作業療法士に求められるものではないか。

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地域包括ケアシステムの本質

地域包括ケアとは何か?

住み慣れたところで、その人らしく生きていける社会システムを構築すること

これが一般的に理解されている内容である。

しかし、この本質は非常に複雑である。

地域包括ケアには、地域という言葉が含まれている。

だが、全国津々浦々、地域の事情は大きく異なる。

大病院がひしめく地域、在宅診療が少ない地域、医師会が先進的な取り組みをしている地域、力のある民間医療法人がある地域、極端に高齢者が多い地域、高齢者の少ない地域、訪問看護やデイサービスなどの事業所が過剰な地域など・・・・・。

つまり、地域という性質の標準偏差が大きく、一概に「地域包括ケアシステム」と言っても、地域が抱える課題が異なる。

すなわち、地域包括ケアシステムは「地域課題解決システム」と言い換えることができる。

地域課題解決システムが日本において導入できる要因は何か?

介護保険の保険者は市区町村(市町村・特別区)である。

また、国民健康保険(国保)は、2018年度に市町村から都道府県に運営を移管される。

すなわち、保険の主たる運営者が地方自治体であることから、その財源の使い道を地域課題解決に活用することが可能となっている。

言い換えれば、地方自治体の医療・介護行政に対するリーダーシップが非常に必要とされる時代になっており、地方自治体の担当者のプレッシャーは相当なものと推察される。

さらに、医療機関・介護事業所・民間産業は地域課題が解決できなければ地域から必要とれなくなり、経営はジリ貧になっていく。

地域包括ケアシステムとは地域課題解決システムであり、地域課題が行政や医療・介護事業所のマーケティングの対象である。

行政や医療機関、介護事業所は今まで本気でマーケティングをしてこなかった。

粗悪なサービスをしていても、それなりに患者、利用者が確保できた。

しかし、これからは患者や利用者だけでなく、地域課題解決に目を向けなければ事業所としての存在意義が問われることになる。

 

 

 

 

多くの看護師・療法士とって病院・診療所・介護施設の経営は他人事である

帝国データバンクによると、医療機関や介護事業所の倒産件数は増加している。

特に、介護事業所と診療所の倒産件数の増加が目立つ。

年々、事業所や診療所が増加しているため、競争が激しくなり倒産するケースが増えている。

言い換えると、「少し競合が増えるだけで倒産するような診療所や介護事業所が増えている」と言える。

2010年ぐらいまでの倒産の原因は、多角経営の失敗、設備投資の失敗であったが、近年は経営環境の悪化に対応できなかったための業績不振である。

安倍政権になって、多少、金融機関の締め付けが緩くなり、資金繰りが改善したため、倒産件数はやや減少傾向となった。

しかし、2018年診療報酬・介護報酬のダブル改定で大幅に減収する医療機関や介護事業所が増えると予想され、倒産件数が急増するのではないかと予想されている。

医療機関や介護事業所の生業を支えているのは間違いなく現場で働く職員である。

その職員の経営参画の意識なしに今後の医療機関・介護事業所は生き残ることは不可能である。

当然、経営者や事務長クラスが経営への意識が低ければ、倒産まっしぐらである。

「従業員への経営参画意識の向上」が2018年に向かって大きな課題である。

基本的には「看護師・療法士とって病院・診療所・介護施設の経営は他人事」である。

医療関連資格を取った時点で、専門家として働いていることから、あくまでも「自分の専門性を発揮するが仕事」と考えている看護師・療法士が多い。

経営体力があるうちに、経営指標や統計を公表し、現状把握に対する問題意識を常日頃から現場に伝達する必要がある。

そして、改善策を立てて、実行していく。

改善策をより効果的なものにするためには、職員に経営参画意識を浸透させ、モチベーションを高められるようにしなければならない。

そのためには、組織風土醸成、採用者の厳選、経営幹部のリーダーシップ、中間管理職のフォロアーシップ、研修によるスキルアップなどが日頃から実行されていなければならない。

これらのことは当たり前な事であるが、多くの人は他人事だと思っている。

他人事ではなく、自分事である。

倒産するような組織で働いていること自体が、自分の成長を阻んでいるからである。