診療報酬・介護報酬低額化時代 勝ち残るために必要なのはネットワークである

ネットワークとは
連絡を保って網状になっている構成体
のことである。

ビジネスの世界では、一度ネットワークを構築することができれば必ず一定数の販売は確保できるという原則がある。

わかりやすい例は、「Google」である。

Googleはchrome、Gmail、Google calendar、Google Street View、androidなどのITテクノロジーを駆使して、全世界におびただしい数のエンドユーザーを確保している。

そのGoogleが、今後、どような商品を発売しようとも、必ず一定数は売れる。

なぜならば、Googleとエンドユーザーは強くネットワークにより結ばれているからだ。

また、様々なネットワークを持つことでGoogleは自らの技術を活かした商品を発売することができる。

例えば、Googleは現在、自動運転ができる車を開発している。

その技術の裏には、Google Street View、androidが活用されている。

このように、エンドユーザーと強く結くことができるネットワークを数多くもつことで、市場に対しては「破壊的な力」を持つこと可能となる。

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診療報酬・介護報酬が低減化していく中、医療機関や介護事業所は、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士の雇用者数を増やして、できるだけ一人当たりの売り上げを確保しようとする。

つまり、薄利多売作戦である。

しかし、この薄利多売作戦がうまくいくためには、患者や利用者が常に一定数確保できるという前提条件が満たされる必要がある。

すなわち、患者や利用者を確保することができるネットワークの構築がこれからの時代では重要である。

2000年以降の緊縮財政政策により、社会保障分野の費用は削減された。

2000年以降、医療・介護分野では「営業が重要だ!」と言う経営者が増え、多くの医療機関や介護事業所は営業活動を行っている。

しかし、その営業活動は
パンフレットを配る
事業所へ挨拶周り
電話を掛ける
営業のFAXを送付する
という程度のものであり、認知度向上程度の効果しか期待できないものがほとんどである。

これからの時代において、患者、利用者を確保していくために必要なのは、ネットワークの構築である。

そして、地域包括ケアシステムは、まさにネットワークの構築を求めている。

特に、リハビリテーション分野や重症者対応に関してはネットワークの構築が重要である。

なぜならば、リハビリテーション分野と重症者対応は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、医師のサービスの差が最も目立ちやすいものであるため、エンドユーザーであるケアマネージャー、患者、利用者、家族は質の高いサービスを得ることができるネットワークへの関与を希望するからである。

皆さんが勤めている医療機関・介護事業所は、ターゲットしている患者や利用者に対してネットワークの構築ができているか?

 

 

 

2018年度診療報酬・介護報酬ダブル改定で予想されることを全部書いてみた

急性期病棟
5:1病棟の創設
7:1病棟の看護必要度の厳格化
7:1病棟の平均在院日数短縮(17日~16日)
7:1自宅等復帰率80%以上
10:1自宅等復帰率60%以上
13:1・15:1病棟の入院基本料減額
DRG/PPS対象の拡大
認知症対応の標準化
退院支援加算の増額と要件強化(プロセス・ストラクチャー評価だけでなくアウトカム評価導入)
ADL維持向上等体制加算の点数増加とアウトカム要件の厳格化
7:1病棟からの直接自宅退院の評価
集中治療室におけるリハビリテーションの評価

回復期病棟
FIM利得率の厳格化
在院日数低下(脳卒中150日・運動器90日)
6単位標準化(9単位を行う場合は特別な条件が必要)
家屋評価・退院前ADL指導・地域連携等の評価料の増額
80歳以上・高ADL・低ADL患者の入院制限要件の強化
施設基準Ⅲの消滅
施設基準Ⅰの要件強化(訪問リハビリテーション事業や通所リハビリテーション事業の必置等)

地域包括ケア病棟
在宅患者からの入院患者の受け入れ評価
低ADL患者の受け入れ評価
在宅復帰率の要件強化(80%)
在宅復帰に向けたシーティング・ポジショニング・福祉機器調整や指導の評価

療養型病床
医療区分の厳格化
特殊疾患病棟・障害者病棟・療養病棟の統合
摂食嚥下障害・排泄障害・循環障害・栄養障害に対するリハビリテーションの評価
在宅復帰のさらなる評価
退院支援加算の増額と要件強化(プロセス・ストラクチャー評価だけでなくアウトカム評価導入)
介護療養型病床の転換先として新たな医療強化型介護施設の新設

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外来リハビリテーション
算定上限日数超え要介護被保険者の外来リハビリテーションの廃止
若年者や回復が望める患者のリハビリテーション算定日数の緩和
消炎鎮痛処置料とリハビリテーション料の要件の厳格化

通所介護
認知症対応・リハビリテーション対応・重症対応していない事業所の単位数低下
生活相談員の要件強化(外部連携の強化や地域資源の発見)
個別機能訓練加算Ⅱの要件強化
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置加算
通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの連携加算

通所リハビリテーション
短時間通所リハビリテーションの増額と要件強化(活動・参加・卒業)
認知症対応・重症対応の加算増額と要件強化
言語聴覚士対応の加算の設置
訪問リハビリテーションとの連携評価
リハビリテーション会議の要件強化(医師の出席要件)

訪問リハビリテーション事業所
活動・参加・卒業の要件強化
地域連携に関する連携加算
重症度対応に対する加算

訪問看護ステーション
PT・OT・STによる訪問看護サービスの回数制限もしくは期間制限(介護保険)
看取りに対する看護・リハビリテーションの評価
活動・参加に関する加算の新設
要支援者の訪問看護サービス料の減額

その他
(看護)小規模多機能型居宅介護と定期巡回・随時対合型訪問介護看護の要件緩和と単位の増加
要介護1と2の単位数の低下
介護老人保健施設の医療費包括化の見直し
特別養護老人ホームにおける訪問看護サービスの要件緩和

 

 

 

 

地域包括ケアシステムの中核であるリハビリテーションの社会化は民間サービスから発展!?

2017年4月より、要支援者の通所介護・訪問介護は「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行することが決定している。

先進的な自治体は、様々な仕組みを構築し、介護保険に頼らない高齢者の自立支援に資する活動を始めている。

自治会レベルで体操教室を自主運営している地域
ボランティアや定額時給支給により集った市民による生活援助を行っている地域
社会福祉法人が運営する小規模デイサービスに要支援者が通所する地域
商店街やスーパーなどのスペースを利用して介護予防サービスを提供する地域
などリハビリテーションが生活に近い場面で提供される事例が増えている

しかし、各自治体は、通所介護・訪問介護は「介護予防・日常生活支援総合事業」の移行に、頭を悩ませている。

2016年9月の時点で大阪府下で通所介護・訪問介護を「介護予防・日常生活支援総合事業」に完全移行している自治体は、箕面市・茨木市・大東市のみである。

特に大都市では、様々な障壁が多い。

移行が難しい理由としては
地域資源が乏しい
行政と住民のネットワークが脆弱である
行政にケア・リハビリテーションに関するノウハウがない
財源が乏しい
などが考えられる。

しかし、財務省は要介護2以下が対象のサービスを、「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行させ、訪問介護の生活援助や福祉用具の貸与、住宅改修の給付については自己負担を原則とする仕組みに切り替えることを提言している。

また、要支援者への訪問介護とデイサービスも、原則として利用者の自己負担にすべきだとも意見している。

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これが実現するかどうかは定かではないが、医療保険・介護保険に頼らないリハビリテーション関連のインフラが社会に増えていくことは、間違いないだろう。

介護予防
疾病予防
高齢者就業
栄養指導
生活習慣指導
など、リハビリテーションに関するサービスが民間が開発され、行政が委託・注文する形がこれからの新しいケア・リハビリテーションの形になって行くと推測される。

医療保険・介護保険に依存しない健康づくり・生きがいづくりのインフラも思想も不足している日本

これからの将来を担う医療・介護従事者や行政は重大な責任を負っている。

 

2025年に後期高齢者数が爆発的に増加する。ということは、現時点での介護関連事業の参入はキビシイに決まっている。

「高齢者が増えているはずなのに利用者がなぜ増えない?」
「儲かると聞いていたので参入したのに利益が出ないじゃないか?」
「介護事業の需要は増加しているはずなのに、なんで利用者紹介が少ないのだ?」

介護事業の経営者や管理者が、よく話す愚痴である。

2025年に後期高齢者が、爆発的に増加する2025年問題。

2025

この問題を乗り越えるために、国は様々な施策を講じている。

当然、地域包括ケアシステムの構築には、介護関連事業が欠かせない。

そのため、介護関連事業への参入件数は増加の一途を辿っており、通所介護・訪問看護・サービス付き高齢者向け住宅が過剰供給された地域が増えてきている。

多くの介護関連事業者は、「高齢者が増えるから必ず儲かる」という本音で介護関連事業に参入している。

しかし、世の中の多くの介護関連事業所の経営の実態は相当厳しい。

2016年1月から8月までに倒産した介護事業者が62件に上り、過去最多のペースとなっている(東京商工リサーチ)

介護関連事業の経営が厳しくなるのは当然である。

なぜならば、今はまだ2025年ではないからである。

急激に後期高齢者が増加する2025年より、手前の時期に相当数の企業や個人が介護関連事業に参入しているため、業界はレッドオーシャンになっているのだ。

すなわち、2025年までのレッドオーシャン時代に、シェアを取った介護関連事業者が2025年にブルーオーシャンの状態になると言える。

将来の圧倒的シェア獲得によるブルーオーシャン実現のために、今はレッドオーシャンでガチンコ対決をしているのが介護関連事業所の実情である。

通所介護・訪問看護・サービス付き高齢者向け住宅は明らかに過剰供給である。

だから、経営能力が乏しいところは、稼働率が上がらない。

2025年の後期高齢者数のファーストピークまでに、如何ににシェアと取るか。

これが、介護関連事業者の生き残る唯一の戦略である。

 

社会保障費圧縮は、インフォーマルサービス市場の活性化を生む

社会保障費圧縮に関する政策は、大きく日本のヘルスケア市場の在り方を変えていく。

高齢者が増える日本においては、財政面の問題から、「高齢者一人当たりが受ける医療・介護サービスの提供量」を、漸増的に低下させていくことが今後の基本政策となる。

よって、今後は、必要な医療・介護サービスを受けることができない要介護者が増大する可能性がある。

この問題を解決する一つの方法が「インフォーマルサービスの活用」である。

しかし、日本国民は、「医療・介護サービスは国が提供してくれる安価なサービスである」という意識を持っており、インフォーマルサービスの活用は一般的なことではない。

介護保険サービスを計画・実行する介護支援専門員にも、インフォーマルサービスの導入が役割として求められているが、積極的にインフォーマルサービスを活用するケアプランが立案されることは皆無である。

国民や医療・介護関係者の意識を変えていくために、政府は、自助・互助・共助・公助の概念を地域包括ケアシステムを導入し、自助の重要性を啓発している。

また、自分自身で健康を管理し、あるいは疾病を治療するセルフメディケーションに関する政策も導入されている※1。

※1
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができる

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このような状況を受けて、様々なインフォーマルサービスが生まれている。

従来のインフォーマルサービスは、家族、友人、地域住民、ボランティアなどによる、制度に基づかない非公式な支援という意味合いが強かったが、これからは民間企業の創意工夫によるインフォーマルサービスが日本社会では一般的になる。

フィットネスクラブによる高齢者向けプログラム
靴屋によるインソールや下肢装具サービス
ITを活用した見守りサービス
ITを活用した介護予防プログラム
セラピストや運動指導員による訪問フィットネス指導
趣味活動を支援するホビークラブ
栄養指導と調理指導を同時に行う料理教室
在宅の大工・清掃・家事を行う家事代行サービス
などなど・・・
様々なサービスが、医療保険・介護保険がカバーできない領域で開発・発展していくと推測できる。

課題は、介護支援専門員、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの医療・介護関係者がインフォーマルサービスに関して興味が薄いことである。

利用者の健康と生活を守るために必要なサービスを提案できる能力が、社会保障費圧縮の時代の新たな医療・介護従事者の形でもある。