複数資格取得推進政策に理学療法士資格が含まれるという相当な事態になっていることを知っていますか!!?

2016年7月16日 日本経済新聞に「医療・福祉にまたがる領域の資格の取得に関する規制緩和」に関する記事が掲載された(下図)。

予てより、フィンランドで導入されているラヒホイタヤという政策の導入が検討されていたがついに、現実味を帯びてきたと言える。

ラヒホイタヤとは、医療・介護・福祉領域の人材不足を補うために様々な資格を取得しやすいように各資格カリキュラムに共通科目を設ける制度である。

簡単に言えば、看護師と介護福祉士の資格を同時に取得するとった「ダブルライセンス」を推進するような政策である。

様々な資格を有する人を確保し、人材不足が生じた業界や領域に速やかに人材を供給することを目的としたものである。

また、在宅医療や介護において複数のサービス担当者が入れ替わりで訪問するのではなく、同一人物が医療や介護のサービスを提供してほしいという利用者側のニーズもあり、この制度が検討されている。

確かに複数の資格があれば、仕事の幅は広がる。

保育園で働いた後に、介護福祉士として高齢者施設で働くことや在宅にて介護福祉士として介護サービスをした後に、看護師として医療サービスを提供することが可能となる。

確かにキャリアデザインにおいて、本制度は有用であるといった印象がある。

新聞記事によると、介護士、保育士、看護師、理学療法士などが本制度の対象となっていると報道されている。

すなわち、理学療法士で介護福祉士、理学療法士で保育士、理学療法士で看護師などのダブルライセンスホルダーが今後生まれる可能性が高い。

この制度の導入は、理学療法士のキャリアにどのような影響を与えるのか?

複数の資格を持つことで、確かに複数の資格が有する専門的な業務を行うことはできるかもしれない。

しかし、複数の専門的な業務を行うことが許可されただけであって、各資格の専門的な業務の質が高いかどうかは不明である。

各資格の専門性の向上は、簡単なものではない。

時間と努力という投資をした結果、専門性が高まる。

看護師として働いている期間では、理学療法士としての専門性を向上させる機会を失ってしまう可能性は高い。

ただ、看護師として働きながら、理学療法士としての知識を看護業務に活かして、看護師としての能力を養うことはできるかもしれない。

複数の資格が取りやすくなる制度に関しては、理学療法士だけでなく、他の資格でも大きな波紋を呼ぶ制度になるだろう。

忘れてはならないことは、「ダブルライセンスホルダーだろうが、トリプルライセンスホルダーだろうが、その人のサービス提供価値が最終的には問われる」ということである。

専門性の高い価値を提供する
複数の領域の知識や経験を活かした価値を提供する

いずれにしても、このどちらができなければ労働市場では評価が低い。

ダブルライセンスやトリプルライセンスを持つことはあくまでも手段であり、目的ではない。

厚生労働省は、マンパワー不足や在宅医療・介護のサービス提供体制への対策として、この制度の導入を図っているが、労働者側である医療・介護・福祉職はこの制度に踊らされることなく、労働者としての真の価値を考えて行動するべきであろう。

理学療法士のキャリアデザインの重要性が益々高まっていることは確実である。

 

記事2016年7月16日 日本経済新聞

通所リハビリテーションへの移行を妨げている理由が、本当の理由ではない件

2016年4月27日に開催された中央社会保険医療協議会にて、「平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成27年度調査)の 本報告案について」が報告された。

その中で、「通所リハビリテーションを開設する意向がない理由」に関して報告がなされた。

ddd2016年4月27日 中央社会保険医療協議会 資料

人員を確保することができない
場所の確保が必要である
送迎体制を整えるのが困難
など・・・・たくさんの理由が列挙されている。

しかし、これらの理由は本当に「理由」であるか?

ここに記載されいている内容はすべて、通所リハビリを開設するために必要な手段である。

手段は目的を達成するために必要なものであり、多くの手段はマネジメントの手法により解決できる。

人員を確保できなければ、人材獲得のマーケティングを行えば良いし、
場所を確保できなければ、必死で不動産に関する情報を集めればよい。

病院や診療所の院長、経営幹部と話をしていると、そもそも通所リハビリがどのようなものであるかを理解していないことが圧倒的に多い。

通所リハビリは儲かる→だったら、やってみよう→え、開設するのは意外に大変じゃん→しかも、運営には結構手間と費用が掛かるんだね→通所リハビリの開設はやめておこう

という展開に陥る病院や診療所が非常に多い。

通所リハビリの運営がうまくいっているところは、通所リハビリの社会的意義や地域リハビリテーションへの情熱や理念が明確にしている。

理念を実現するために必要な手段には、全力を尽くすことができる組織だからこそ、様々な問題を解決することができる。

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誤解を恐れずに言うと、通所リハビリ、通所介護、訪問リハビリは、あくまで外来診療、入院診療の本体事業とは別の副業事業として考えている医療機関が多いのではないだろうか?

「外来医師の負担が大きくなる」という理由が挙げられているが、この理由は理由になっていない。

通所リハビリを開設する理念があるなら、人材の問題は解決しなければならない。

副業の感覚で捉えているから、人材を増やさずに儲けたいという気持ちが芽生えるのだ。

副業感覚で通所リハビリをとらえている以上
通所リハビリが開設できない
通所リハビリの運営がうまくいっていない
という状況は打開できない。

 

整形外科クリニックが院内でリハビリテーションだけを提供していればよい時代は終わった

整形外科クリニックの勝ち組と負け組の二極化が止まらない。

2000年前後から2010年ぐらいまでは、リハビリテーションの施設基準を取得し、理学療法士によるリハビリテーションを提供することが整形外科クリニックの差別化戦略として有効であった。

しかし、このブログを作成している2016年では、リハビリテーションを提供している整形外科クリニックは山とあり、リハビリテーションの提供の有無が整形外科クリニックの差別化に繋がらない状況である。

筆者がコンサルティングをしていると、「どこもかしこもリハビリテーションをしているから、これからの時代はなかなか患者が集まらなくなった」とか、「これからの整形外科クリニックはじり貧ですね」などの声が、院長、経営幹部から聞こえてくる。

果たしてそうだろうか?

今の時代においても、患者が沢山集まり、収益が増加している整形外科クリニックは沢山存在する。

結局のところ、勝ち組の整形外科クリニックが存在する以上、「時代の流れ」は全く関係がない。

整形外科クリニックは時代の流れに身を任せるのではなく、新しい市場やニーズに対してマーケティングができなければ、経営の再構築は難しい。

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整形外科クリニックを取り囲む状況は急速に変化している。

環境変化の事例としては
1)医療の在宅シフトが急速に進んでおり、在宅患者のフォローが求められている
2)デイサービスが急増し、運動器疾患を持つ方のリハビリテーションサービスが行われている
3)整骨院が急増し、運動器疾患の初診患者が整骨院に流れている
4)予防に対する意識が高まっており、医療と運動を組み合わせた民間サービスが増えている
5)維持期患者の介護保険リハビリテーションへの移行が進んでいる
などが上げられる。

これらの環境変化に対して、なんらかの行動を起こさなければ間違いなく「ジリ貧」になっていく。

また、当然、整形外科クリニックの専門性も重要である。

画像診断、日帰り手術、病院との連携など医療の本質の部分の強化を忘れてはならない。

さらに、見込み患者や既存患者へのマーケティング活動も怠ってはならない。

地域へのアピール
Webを通じた情報発信
新規患者の導線確保
などのマーケティング活動が安定的な患者増加には欠かせない。

院内で理学療法士によるリハビリテーションだけを提供していれば、整形外科クリニックとして安定的な経営ができる時代は終焉した。

リハビリテーションを活用した新たな価値の提供が、これからの整形外科クリニックには必須である。

 

リハビリテーション部門はそろそろ、意味のない社内研修会はやめましょう

PT・OT・STの有資格者は、2016年時点で25万人に届こうとしている。

業界の平均年齢も若く、20代から30代のセラピストが突出して多い業界である。

したがって、現場経験の少ないセラピストが働いている医療機関や介護事業所も多い。

よって、社内研修会を通じて、若手セラピストをいち早く一人前のセラピストにすることが組織運営において極めて重要であり、日々、全国津々浦々のリハビリテーション部門では、様々な研修が行われている。

おそらく、どの部門より研修を行っているのではないだろうか。

一方、医療保険・介護保険の双方においてリハビリテーションの効果判定がシビアに求められるようになっている。

アウトカムを出すことができなければ、医療保険や介護保険収入が減少し、組織運営が存続の危機に直面する時代である。

厚生労働省は、地域包括ケアシステムの推進や要介護度を軽減させるためにリハビリテーションが必要と考えており、今後はより急性期、回復期、生活期においてアウトカム評価を導入していく。

筆者がリハビリテーション部門コンサルティングをしている中で、よく遭遇する現象がある。

それは、「社内研修が行われているが、求められているリハビリテーションのアウトカムの改善に寄与する研修や取り組みが行われている医療機関や介護事業所は稀有である」ということである。

1)整形外科中心の回復期リハビリテーション病院なのに、脳卒中の研修会が圧倒的多数を占める
2)在宅復帰を強化している療養病院や老人保健施設なのに、家屋評価、基本動作の評価や治療の研修会が少なく、痛みを取る○○テクニックや○○手技などの汎用性の低い内容の研修会が多い
などの状況に陥っている医療機関や介護事業所は多い。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は学ぶことに貪欲な人が多い。

しかし、学ぶべき内容を間違えてしまうと、勤め先の業績改善に寄与する力を持つことはできない。

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特に、研修会の開催が目的化している医療機関や介護事業所は要注意である。

研修会は手段であり、目的ではない。

良好なリハビリテーションのアウトカム達成が目的であり、研修会はその手段の一つである。

セラピスト自身の興味だけで行う研修やなんの意図もない研修会は、開催しないほうがマシである。

ましてや、勤め先から給与が発生している業務時間中に開催されている研修会は、医療機関や介護事業所の発展に寄与する内容でなければ、道義的に大きな問題である。

みなさんの職場には意味のない研修会はないだろうか?

 

慢性期医療は2025年に向けて、勝ち組と負け組に二極化する

地域医療構想では、急性期病床の絞り込みに注目が集まるが、実は療養病床の絞り込みも進められている。

療養病床には、未だ、相当数の社会的入院の患者がおり、医療行為が極めて少ない患者が入院している医療機関も多い。

また、入院しやすいように、疾患名を強引に付けるアップコーディングも相当行われていると言われている。

看護配置が25:1、医療行為の少ない患者が入院している、在宅復帰率が著しく低い療養病床は、2025年に向けて淘汰されていくことは間違いない。

2016年度診療報酬改定では、療養病床の今後の方向性が示された。
参考
病院は重症の方が入院する所であるという論理は、療養病床にも当てはめられた

非常に高度な医療行為をしている療養病床は、今後も生き残ることができるが、医療行為が少なく社会的入院が多い療養病床はダウンサイズが余儀なくされる。

今後、慢性期医療においては以下のものが台頭してくる
1)医療に強い有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅
2)多機能大規模型訪問看護ステーション
3)高度な医療を提供している療養型病院
4)多機能型老人保健施設
5)新たな慢性期患者の施設(政府検討中)

1)~5)の中でマーケットシェアーの取り合い合戦が起こる。

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地域医療構想は、確実に進んでいる。

今後、慢性期医療が対象となる患者数は膨大に膨れ上がる。

全国にはまだ、今後の方向性を決定できていない医療機関は多い。

しかし、2025年までに完全にフルモデルチェンジするためには、現時点で優秀な人材の確保や将来の方向性が決まっていなければ、到底フルモデルチェンジなどできない。

療養病院に完璧な逆風が吹いてからでの対応では時すでに遅しである。

早期に大改革に取り組み、状況を打開するべきである。