急性期におけるキュア&ケアハイブリッドリハビリテーション

高齢化の進展により、急性期病院に入院する患者の属性が変化している。

急性期病院は重症度の高い急性発症の患者が入院する「場」であったが、高齢者の延命率向上や介護保険によるケアの提供により、在宅生活と病院入院を繰り返す高齢者が増加している。

その結果、急性期病院には複数の既往歴や認知症を有する高齢者が入院するケースが増えており、急性期医療の医学的モデルが適応できない状況が進んでいる。

そのため、急性期病院では慢性期疾患を持った高齢者に対する急性期治療を行うという複雑な状況が増えている。

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特に認知症高齢者今後800万人になるとも言われており、急性期病院における認知症対応も大きな課題である。

つまり、高齢化が進展し、介護保険サービスの質が良くなればなるほど、急性期の役割は多様性を増してくる。

治療を意味するキュア、全人的アプローチを意味するケア

この両方の提供が急性期病棟には求められる時代となっており、リハビリテーションにおいてもキュアとケアのバランスが課題となっている。

専門性の高い治療技術、多職種と連携し、最良のQOLを生み出す技術、これらがミックスされたハイブリッドリハビリテーションが向こう30年は加速する。

急性期だから慢性期、認知症の技術を磨く。そんな時代になっている。

 

 

回復期リハビリテーション病棟vs地域包括ケア病棟

2014年度診療報酬改定にて、回復期リハビリテーション病棟は、「回復の見込みがある患者に対して、集中的にリハビリテーションを提供する病棟」に、地域包括ケア病棟は、「回復ののびしろが少ない患者に対して、包括的なリハビリテーションを提供する病棟」になることが求められた。

性質の違う2つの病棟ではあるが、在宅復帰率に関しては双方ともに高い水準が要求された。

すなわち、リハビリテーション医療はADLを自立させる手段だけではなく、「在宅復帰に必要な要素を包括的に提供する手段」であるが求めれたと言える。

現在、回復期リハビリテーション病棟には厳しい目線が注がれている。

診療報酬上は、一日9単位のリハビリテーションの提供が、認められている。

しかし、都道府県の違いによって、7単位以上は見学な要件を満たさなければ、認められない。

また、廃用症候群の病名でも、回復期リハビリテーション病棟の入院料が、査定されるという事態も生じている。

すなわち、国は回復期リハビリテーション病棟の差別化、区別化、淘汰を試みている。

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地域包括ケア病棟では、2単位のリハビリテーションの提供が可能である。

もし、地域包括ケア病棟が、回復期リハビリテーション病棟と同様の在宅復帰率等のアウトカムを出すことができれば、次の診療報酬改定では回復期リハビリテーション病棟には間違いなく逆風が吹く。

また、地域包括ケア病棟も、急性期からの患者だけでなく、在宅からの救急患者の受け入れが、求められている。

したがって、今後は大腿骨頚部骨折や循環器疾患等へ積極的な治療介入が期待される。

急性期病棟は「在院日数が短い超急性期対応型」が移行が進んでいる。

したがって、急性期病棟や回復期病棟とは差別化された病棟としての役割が地域包括ケア病棟には課せられた。

回復期リハビリテーション病棟が生き残るか?

それとも、地域包括ケア病棟が存在感を増していくか?

急性期後の医療体制は、大きな転換期を迎えている。

ワークシフトを実践する人にとって2025年問題は最高のチャンス

15歳から64歳までの現役世代人口は2010年には8174万人、2050年には5001万人になっている。

その間、65歳以上の高齢者は800万人以上増加している。

これは何を意味するか?

医療、介護職が不足する
医療、介護報酬が上がらない
医療、介護職の賃金が上がらない
・・・・などが毎日のように新聞、ヘルスケア雑誌に記載されている。

しかし、マイナスなことばかりが起こるわけではない。

ワークシフトを実践する医療・介護従事者には、最高の市場が訪れている。

労働力が減る社会においては、有能な人材はより、輝きを増す。

マネジメント
コーチング
急性期から慢性期に対応できる医療・介護技術
医療・介護業界マーケター
技術開発
などの能力を有する人材は、医療・介護業界において益々、至宝の存在になる。

今後、そういった人材は、複数の病院や企業に勤務し、同時に高い報酬を受けるだろう。

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ワークシフトを実践する人にとっては今後の労働市場はブルーオーシャンである。

ワークシフトを達成するためには「連続的スペシャリスト」を目指す必要がある。

連続的スペシャリストとは
独自の専門分野を持ちながらも社会の変化に対応し、連続的に専門分野を取得していく人
である。

しかも、20代だろうが60代だろうが関係ない。

真のワークシフトは死ぬまで続けることに意義がある。

ブルーオーシャンの市場が現れるのではない。

ブルーオーシャンの市場を自分で造るのだ。

 

 

リハビリテーション潜在市場

現在、介護保険サービスを利用していない高齢者は高齢者の中でも圧倒的多数を占める。

介護保険制度の仕組みを知らない人や介護保険に対する誤解がある人が多く、身体機能や社会参加が低下していても、要介護認定を申請しない人も多い。

2025年に向けて後期高齢者が爆発的に増加していく過程では、医療保険、介護保険を利用する前の健康的な時期をいかに長くするか?すなわち、健康寿命延伸への取り組みがが重要である。

現在の日本では、病気や介護が必要な状況になれば、医師、看護師、ケアマネージャーなどの支援により、医療・介護サービスを受けるシステムは完全に構築されている。

しかし、徐々に身体機能や社会参加が低下していく時期に対して、具体的な介入を行うサービスは乏しい。

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自発的に健康に留意している高齢者なら、地域の社会活動、フィットネスクラブ、老人クラブなどにも通う。

しかし、健康に対する意識が低い高齢者は、廃用症候群やフレイルの発症を無防備に待っているのが実情である。

2014年度の介護報酬改定にて介護保険から要支援者が外されることが決定しており、2017年度までには地域支援事業として地方公共団体が要支援者へ介護予防サービスを行うことになる。

しかし、要支援認定を受けていない高齢者への政府の対策はあまり見えてこない。

2025年以降、今後も要支援認定を受けていない虚弱老人は、確実に増加していく。

今後、要支援者への介護予防サービス、要支援認定を受けていない人への健康増進が大きな市場になるのは確実である。

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の知見は、健康増進に大きく活用できるし、他の分野と組むことでさらにその強みを増す。

転倒予防、認知症予防、活動参加支援、就労支援、栄養改善などの身体機能に関するコンサルテーションなどは異業種と組むもできる分野である。

また、産学官連携を強化すれば、リハビリテーションのエビデンス作りも、加速するだろう。

リハビリテーション潜在市場は希望に満ち溢れていると言える。

訪問診療・看護・リハビリテーション・介護のコンプライアンス強化が始まる

2014年度診療報酬改定において訪問診療料等、在宅医療に関する同一建物の複数訪問診療について大幅な減点が行われた。

これは患者紹介ビジネス、悪質な訪問診療形態などに対する懲罰的な意味合いが強かった。

訪問系サービスは介護保険開始により日本全国で一般的になり、今や訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションに特化した診療所も多く散見するようになった。

在宅医療を普及させるための政策的誘導により診療報酬、介護報酬の単価は高く設定されてきたが、2014年度改定ではついにメスが入る形となった。

訪問看護、訪問リハビリテーション、介護に関しても常に不適切事例が報告されている。

特別訪問看護指示書の不適切な交付
訪問リハビリテーションのマッサージサービス
訪問介護の水増し請求などは昨今の中央社会保険医療協議会にて議論される話題である。

高齢者や死亡者数の増大を鑑みると在宅医療の推進は必要であるが、「不適切事例」を防止するために今後一定のコンプライアンス要件が課せられていくのは必至である。

訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問介護に関しては参入障壁は低く、異業種からの参入も多い。

異業種からの参入は日本の在宅医療を充実させるために必要な要件である。

しかし、医療・介護情勢の厳しさを知らずに参入した場合、今後さらに強化されるコンプライアンスが事実上の参入障壁となる。

つまり、自らの医療・介護への理念や倫理の低さが参入障壁となる。

いずれにしても国の規制強化に対して対応可能な組織づくりが課題である。