訪問診療・看護・リハビリテーション・介護のコンプライアンス強化が始まる

2014年度診療報酬改定において訪問診療料等、在宅医療に関する同一建物の複数訪問診療について大幅な減点が行われた。

これは患者紹介ビジネス、悪質な訪問診療形態などに対する懲罰的な意味合いが強かった。

訪問系サービスは介護保険開始により日本全国で一般的になり、今や訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションに特化した診療所も多く散見するようになった。

在宅医療を普及させるための政策的誘導により診療報酬、介護報酬の単価は高く設定されてきたが、2014年度改定ではついにメスが入る形となった。

訪問看護、訪問リハビリテーション、介護に関しても常に不適切事例が報告されている。

特別訪問看護指示書の不適切な交付
訪問リハビリテーションのマッサージサービス
訪問介護の水増し請求などは昨今の中央社会保険医療協議会にて議論される話題である。

高齢者や死亡者数の増大を鑑みると在宅医療の推進は必要であるが、「不適切事例」を防止するために今後一定のコンプライアンス要件が課せられていくのは必至である。

訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問介護に関しては参入障壁は低く、異業種からの参入も多い。

異業種からの参入は日本の在宅医療を充実させるために必要な要件である。

しかし、医療・介護情勢の厳しさを知らずに参入した場合、今後さらに強化されるコンプライアンスが事実上の参入障壁となる。

つまり、自らの医療・介護への理念や倫理の低さが参入障壁となる。

いずれにしても国の規制強化に対して対応可能な組織づくりが課題である。

 

 

介護報酬・診療報酬は30年間は上がらない。しかし、それはチャンスである。

昨日、次期診療報酬・介護報酬に関して減額する記事が新聞、インターネットに多く掲載されていた。

財務省から厚生労働省への圧力と国民の反応伺いといったところだろう。

インターネットや新聞では「このままでは介護事業は立ち行かない」「介護者離職が進む」「国は何を考えているのだ」との多数の意見が出ている。

しかし、見方を変えれば以下のようにも考えられる。

「介護報酬・診療報酬は上がるわけない。ただでさえ、保険で守られている業界であり、かつ、大きな市場があるという恵まれた環境である。介護報酬・診療報酬が無尽蔵に上がるようでは保護産業となり、各事業所、職種の堕落が始まる。だからこそ、イノベーションやエボリューションを起こし、多くの顧客とその支持を集め、さらに新しいビジネスモデルを作る必要がある」

ピンチはチャンス。

この時代に評価される事業所、人材になればいいだけ。

 

 

急性期7:1病棟削減から読み取る医療・介護事業の本質

平成26年度診療報酬改定では7:1病床の削減を目的として、重症度・医療・看護必要度の厳格化、在宅復帰等患者割合の新設が行われた。

7:1病床は現在、35万床となっており、医療費を増加させる要因とされている。

今後、国は急性期医療を高度急性期と一般急性期に機能分化させたいと考え、高度急性期を、「総合入院体制加算1」の基準を満たす病院とイメージしている。

※総合入院体制加算1とは
1.一般病棟入院基本料を算定する病棟を有する保険医療機関であること
2.内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科及び産科又は産婦人科を標榜し、当該診療科に係る入院医療を提供している保険医療機関であること
3.全身麻酔による手術件数が年800件以上であること
等が要件である。

では、一般急性期はどのような機能が今後は求められていくのだろうか?

一般急性期は高度急性期のように診療密度が高くはないが急性期の患者に診療を提供する病棟であると国は定めている。

すなわち、肺炎、骨折、内科系疾患等で軽度から中等度の重症の患者が入院する病棟である。

そのような疾患の患者は、2030年まで増加していく。

このような状況で病棟を削減していく国の考えには矛盾している点がある。

それは今後推進される在院日数短縮と病床削減の目的と7:1病床削減の目的が二律背反することである。

在院日数が短縮し、病床が削減されれば、相当数の患者が毎日入院してくる。

そうなると看護師の現場対応はより繁忙となりマンパワーが確保が重要となる。

すなわち在院日数が減らす以上、マンパワーとの確保が重要である。

国がこの点に気づいていないことはありえない。

知っていて言わないという可能性が高い。

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国はかならず、何か仕組みを作り、軽度から中等度の重症患者の対応が可能な社会システムをつくるはずである。

そこで考えられるのが「地域包括ケア病棟」、「地域包括診療料」、「訪問看護」の推進である。

これらの仕組みは慢性期機能でありながら、ある程度の急性的な医療的処置が可能である点である。

このようなフレキシブルな機能をより強化していくことで、急性期病棟に対する負荷を減らしていく可能性が高い。

しかし、最大の問題はそれらの機能の質の担保である。

回復期リハビリテーション病棟も当初かなり診療報酬上のインセンティブが導入され多くの医療機関が参入したが、その診療の質に対して国は懐疑的であり、毎回の診療報酬改定で厳しい要件が設定されている。

今後も「地域包括ケア病棟」、「地域包括診療料」、「訪問看護」の質の向上が求められていく。

医療・介護というのは公的保険で賄うサービスである以上、マーケットの拡大とサービの質の担保という相反することを成立させなければならない。

今後の医療・介護事業の成否は質の担保にあることを忘れてはならない。

 

 

 

 

国は訪問診療を医師会を中心に進める予定!?

平成26年診療報酬改定では訪問診療は大きく点数が引き下げられた。

減額された理由は不適切事例に対する対応であった。

不適切事例は患者紹介ビジネスや生活保護ビジネスなどを示しており、それらに対する警鐘のために保険点数の減額がなされた。

そのため、今まで大きく規模を拡大してきた訪問診療専門の診療所が訪問診療から撤退したり、居住系介護施設の医療的対応の不備という事例が生じている。

このような事例に対して国は「訪問診療等の在宅医療について問題がある場合は地域の医師会が連携し、解決を図る」と回答している。

今回の国の声明により、医師会が訪問診療へ参入することが公に示され、医師会としても在宅医療への参入の意思を示した形となる。

しかし、医師会に入会している多くの診療所の医師は訪問診療に積極的ではないのが実情である。

そのような中でも、医師会が在宅医療に関して参入の意思を示したことは並々ならぬ決意を感じる。

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医師会が訪問診療のインフラをコントロール出来るかどうかは全くの未知数である。

日本では診療所の地域医療に対するマインドが低い現実がある。

多くの診療の医師は在宅医療はできればしたくないというのが本音だろう。

診療所の点数が下げられる昨今、経営的安定のために訪問診療を仕方なしにしている医師も多い。

みなさんの地域の医師会がどれほど本気で訪問診療に取り組んでいるか?について一度調査してはいかがだろうか?

そこから、地域医療や介護の質を向上させる糸口が見つかるかも知れない。

 

 

 

医療・介護の在宅シフトは、医療・介護の人材育成、マネジメント重視シフトである

平成26年度診療報酬改定では、各病棟機能に在宅復帰要件が追加された。

特に急性期病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟に在宅復帰要件が追加され、医療・介護の在宅シフトの流れがさらに加速したと言える。

しかしながら、現在、在宅インフラが十分な地域は少ない。

大手医療法人においては、在宅部門は病棟や介護施設の整備が終了した後に着手される傾向が強い。

主たる収益源である病院や介護施設のマネジメントで手一杯であり、在宅部門は運営に力を入れることが難しい。

単独型の訪問看護ステーションや医療法人の在宅診療所も増加しているが、小資本や人員不足が原因で大きな拡大が図りにくい。

医師、看護師、セラピストの数が少ない中で、在宅医療をどのように行っていくか?

これは在宅医療の現場における大きな課題である。

特に医師が担当する患者数は多く、また、急変時には医師自らが訪問をする必要があることから医師の負担も大きい。

したがって、医師の在宅医療への参入障壁は決して低くないと言える。

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医師に負担が偏らないためには、医療現場では「看護師、セラピストの判断の上、医師に診察を打診する」というシステムが必要である。

欧米では、看護師・セラピストから医師への診察依頼はすでに一般的になっている。

そのため、看護師、セラピストはより深い医学的な知識が必要となっている。

また、スタッフ間の物理的距離が遠い在宅医療においては、情報の共有が難しい。

そのため、電子媒体や既存のクラウドシステムなどを用いた情報共有の仕組みが必要となっている。

さらに在宅医療ではそれぞれ別の事業体の医師、看護師、セラピストが関わることがある。

つまり、異なった医療知識、介護知識、理念などを有している者同士が患者のQOLの向上に関わるわけである。

したがって、一定地域における標準化された医療、介護知識、理念などを啓蒙する活動や、自身の事業所がどのような方針で在宅医療を行っているかについて情報開示が必要である。

在宅医療を推進するためには、権限移譲、情報共有、情報開示という今までにはない取り組みが必要である。

在宅医療の実現ためには、新しい形のマネジメントの実現が必要であり、マネジメントができる人材の育成の実現が必要である

このパラダイムシフトを乗り越えるには、人材育成とマネジメントが必要不可欠である。