2015年 介護報酬改定 医師の働き方が狙い打ちされた

2015年度介護報酬改定が明らかになってきた。

介護保険領域における各職種の働き方の変化が求められている。

介護保険制度の変革は、「携わる労働者の働き方の変革」を求めている

2015年度介護報酬改定では看護師、介護士、セラピストのみならず、医師に関しても働き方の変革が求められた。

通所リハビリテーションにおいて、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)が新設された。
その要件は以下のようなものである。

次に揚げる基準のいずれにも適合すること。

(1) リハビリテーション会議を開催し、利用者の状況等に関する情報を、会議の構成員である医師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、居宅介護支援専門員、居宅サービス計画原案に位置づけられた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有し、当該リハビリテーション会議の内容を記録すること。

(2) 通所リハビリテーション計画について、医師が利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得ること。

(3) 通所リハビリテーション計画の作成に当たって、当該計画の同意を得た日の属する月から起算して6月以内の場合にあたっては1月に1回以上、6月を超えた場合にあっては3月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、利用者の状態の変化に応じ、通所リハビリテーション計画を見直していること。

(4) 指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供を行うこと。

(5) 以下のいずれかに適合すること。
・ 指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、指定訪問介護の事業その他の指定居宅サービス事業に係る従業者と指定通所リハビリテーションの利用者の居宅を訪問し、当該従業者に対し、介護の工夫に関する指導及び日常生活上の留意点に関する助言を行うこと。

・ 指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、指定通所リハビリテーションの利用者の居宅を訪問し、その家族に対し、介護の工夫に関する指導及び日常生活上の留意点に関する助言を行うこと。

(6)(1)から(5)までに適合することを確認し、記録すること。

(1)と(2)の項目に関しては、厚労省の強い意図が見える。

リハビリテーション会議に医師が参加すること、そしてその医師が通所リハビリテーション計画を利用者あるいは家族に説明することになっている。

筆者の経験から、「通所リハビリテーションの利用者に対して医師が積極的に関わる」という事業所はほぼ皆無ではないかと考える。

医師が、利用者の記録媒体へサインをしたり、急変時対応をすることがあっても、日頃のアセスメントやリハビリテーションへの参画、助言を行っている通所リハビリテーションはマイノリティーである。

通所リハビリテーションは、医師がいる病院、診療所、老人保健施設にて運営をすることができる。

よって、本来は医師が関わることができる通所系の介護施設であり、その存在意義は医師や医療専門家による充実したサービスを提供することである。

しかし、現実はどうか。

通所リハビリテーションと通所介護で行われている内容は大部分において超複しており、通所リハビリテーションとしての特性を出せている事業所は少ない。

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2014年度診療報酬改定にて、診療所に対して「地域包括診療料」(月1回/1,503点)という項目が新設された。

これは算定対象患者は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾病のうち2つ以上を有する患者に対して、医学的管理、介護保険の相談、夜間対応等をした場合に算定できる。

この算定要件には
①24時間対応(「時間外対応加算1」の届出)がされていること
常勤医師が3人以上在籍していること
③在宅療養支援診療所であること

これらの3条件を全て満たしている必要があり、一般の無床診療所での届出は、ほぼ不可能といわれている。

ここで重要なのは、②の常勤医師が3人以上在籍している必要があることが求めている点である。

今後、地域における診療所の役割は拡大していく。プライマリーケア、看取り対応、介護保険対応などが地域の診療所に求められるものである。

これらの内容を、診療所が真剣に取り組んでいくためには、一人だけの管理医師の勤務体制は不可能である。

しかし、現実的にはオーナーの医師のみが常勤の診療所がほとんどである。

医師が勤務している病院、診療所、老健は「複数医師の勤務体制を確立し、現実的に介護保険領域にも関わっていきなさい!」というメッセージが厚生労働省から出されたと言える。

看護師、介護士、セラピストだけではなく、医師も働き方を変えなければ、存続が難しい医療・介護制度へと加速している。

 

脱雇用社会への兆戦

現在の日本を取り巻く状況は激変している。

少子高齢化・経済のグローバル化・テクノロジーの変化は著しく、社会の予測が難しい情勢だ。

そのため、労働環境も不安定であり、安定的な環境下での労働が困難を極めている。

倒産、買収、人員整理、ビジネストレンドの変化などにより、職場の人間関係、求められる能力、雇用条件も影響を受けている。

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このような21世紀の不安定な労働環境をマーク・サビカスは「脱雇用社会」と呼んでいる。

皆さんは10年後の自分の生活を想像できるだろうか?

どこで働いて、どれぐらいの給料をもらって、誰と居て、どんなやり甲斐をもって生きているか?

安定した環境や職場で、将来の予測が可能な人生を歩む人はどんどん減っていき、多くの人が著しい環境変化の中で生きていくことなる。

すなわち、キャリア開発は、組織に依存させるのではなく、個人が能動的に取り組んでいく必要がある。

あなたの職場は明日、なくなるかも知れない。

5年後、あなたの勤めている会社は急激に業績が悪化するかもしれない。

あなたは明日、病気で倒れるかも知れない。

あなたは3年後、給料が減額されるかもしれない。

このような状況になっても、戦っていける能力を身につけなければならない。

脱雇用社会を前提とした生き方が常識の時代である。

診療・介護報酬改定前後だけ、盛り上がる経営者はあきまへん!

2015年介護報酬改定がいよいよ行われる。

年明けから多くの情報が一気に公開され、いよいよ改定に熱を帯びてきた。

この時期になると診療報酬や介護報酬改定前後だけ熱くなる経営者や管理職がいる。

次々と出てくる改定情報に一喜一憂し、不安になり、管理職との面談が急に増える。

管理職の方はこの時期に経営者に呼び出されることが増えているのではないだろうか?

しかし、普段、コミュニケーションを取っていないものだから、経営者から急に熱い話をされても、理解が難しい。

常日頃、経営者と管理職が意思疎通をとっていれば、共通の課題を背景にして、協議ができるが、急に熱く話をされても、逆に冷めるだけである。

そもそも、診療・介護報酬改定の準備は、改定年の4月に行うものではない。

常日頃から、2年後、3年後の改訂を見越して、組織のダーバーシティーを高めておくことが重要である。

日頃から、愚直に経営や現場の運営に力を入れることが、診療・介護報酬改定を乗り切る基本である。

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医療・介護報酬改定前後だけ、急に話し合いの数が増えるのはマネジメントレベルが低いとしか言わざる得ない。

ドラッガーは「既に起こっている未来」を探すことが重要であると述べている。

未来は既に起こっている。

今の現実をしっかりと見定めることで、未来は見えてくる。

改定前だけ騒ぐレベルでは、今後の地域包括ケアシステムは乗り切れない

 

 

人間関係の悪い病院・診療所・介護事業所は2025年まで生き残れません

マズローの欲求段階説によると人間の欲求は5層構造になっており、それぞれの階層を満たすことで上位の階層にたどり着けると結論づけている。

第一層「生理的欲求」
生きていくための基本的・本能的な欲求

第二層「安全欲求」
危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたいという欲求

第三層「社会的欲求」
集団に所属することやより良い人間関係を求める欲求

第四層「承認欲求」
他者から認められたい、尊敬されたいという欲求

第五層「自己実現欲求」
自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという欲求

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多くの病院、診療所、介護事業所の最大の問題点は、第三層「社会的欲求」を満たせていないことである。

生理的欲求や安全欲求すら満たせていない組織は以前、より少なくなっている。

むしろ、生理的欲求、安全欲求だけの外面の福利厚生や給与面だけを満たして、社会的欲求を満たさないというレベルの低いマネジメントが展開されている。

特に、経営者の医療や介護へのマインドが乏しい場合、社会的欲求のための活動は急激に乏しくなる。

マインドが乏しいオーナーや経営者が採用した管理者や幹部は、医療や介護サービスの本質や従業員の育成という視点が乏しい場合が多く、その結果、人間関係や職場におけるモチベーションが低下する。

社会的欲求が乏しい状況が続けば、第四層「承認欲求」・第五層「自己実現欲求」のステージに個人がたどり着くことはない。

したがって、地域包括ケアや医療介護の連携、質の向上といった極めて高次元の課題に取り組むために必要な「従業員のモチベーション」を醸成することができず、組織は衰退の一途を辿る。

社会的欲求に最大限配慮した組織作りが2025年に向けてのキーワードである。

人間関係を良好に保つ機能は別名「集団維持機能」と言われる。

「集団維持機能」を高めるためには、人材マネジメント・組織心理学・メンターの存在、そして、企業理念の学習と展開が重要である。

これらの内容は、「マネジメント」の領域であり、「マネジメント」の学習なくして、組織の発展などありえない時代になっている。

 

 

 

経営者を支えるブレーンがいない病院・診療所・介護事業所は潰れます

2025年に向けた医療・介護制度のパラダイム転換が本格的に始まっている。

経営課題は山積しており、課題の解決なくして次期介護報酬・診療報酬改定は乗り切れない。

各分野における経営課題をあげると
病院
在宅復帰推進・在院日数短縮・病床機能報告制度への対応・介護との連携・医師や看護師の確保・電気料金増加への対策・稼働率の向上

診療所
外来患者の確保・大規模診療所への転換・基幹病院との連携・夜間対応・在宅診療報酬減額への対応・医師、看護師、セラピストの確保・介護の多角経営・

介護事業所
利用者の確保・介護報酬減額への対応・診療所、ケアマネージャー連携・在宅復帰の受け皿機能・介護施設間連携・重度者への対応・介護職の確保と教育

などが挙げられる

このような経営環境を、経営者一人で乗り越えることは不可能である。

最低、二名のブレーンが必要である。

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しかし、日本の多くの病院・診療所・介護事業所は中小企業レベルのマネジメントスタイルであり、家族経営中心の家業気質が抜けていない。

今後は、この家業気質が今後の経営のボトルネックになる可能性が高い。

家業では、家族や身内の保身を背景とした経営判断が行われやすく、環境変化に対応することが難しい。

今後、生き残る医療・介護事業になるためには、経営と家業を分離する家業分離経営を実現し、優秀なブレーンを雇用する必要がある。

オーナーや創業家のマネジメントだけで、乗り切れない時代になった今日、医療介護の従事者はマネジメント能力を磨く必要がより高まっている。

医療・介護従事者が医療技術・介護技術だけを提供していれば良い時代は終焉している。

マネジメントに関する能力を高めることは、一労働者としての生き残るためにも必要である。