仕事や人生の前進を阻害するベーシック・ミステイクに注意しろ

アーロン・ベックが確立した認知療法では、「人間の認知が行動や感情に影響を与えている」と考えている。

人間がどのように外界をとらえ、それを意味づけたか?という認知が、行動や感情に影響を与えている。


歯科医師になったが思ったより、給料をもらえないという出来事により、落ち込むという感情が生じた場合、「思ったより給料をもらえない」という出来事をどのように捉えているかという信念が落ち込みの感情を生じさせるのである。

このような非論理的な認知を、心理学では認知の歪みと呼ぶ。

認知の歪みには、6つの例があり、「ベーシック・ミステイク」と呼ばれている。

6つのベーシック・ミステイク
1.選択的抽出  文脈の中から一部だけを取り出し、全体の状況は把握せずに判断すること

2.恣意的推論  証拠がない、あるいは正反対の証拠があるにもかかわらず、否定的な結論を出してしまうこと

3.過度の一般化 一部分だけを取り上げて、すべての事柄に当てはめる

4.拡大解釈や過小評価 失敗の拡大解釈、成功の過小評価

5.自己関連付け わずかな情報を自分に関連付ける

6.分極化思考 白か黒か、両極端に考えること

このようなベーシック・ミステイクという非論理的な信念を持っていると、多くの出来事を悲観的に捉え、行動を制限してしまう。

例えば、すこし失敗しただけで「取り返しのつかないものである」と考えてしまったり、人から少し批判されただけで全員から批判されていると感じるなどが挙げられる。

セルフケアや部下の指導においては、ベーシック・ミステイクをしていないかを充分に注意し、もしベーシック・ミステイクに取り付かれている場合は、認知の歪を正していく必要性がある。

ちょっとしたことで落ち込む人、失敗を恐れて何もできない人、他人の目が気になる人はベーシックミステイクに陥っている

 

 

 

PT・OT・ST・Nrsのキャリア・デザインは相互依存型から自律支援型へ

バブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機や日本の債務超過により、企業のダウンサイジングやリストラクチャリングは加速を極めている。

その結果、長期雇用を前提としたキャリア・デザインは困難となっている。

長期雇用が約束される代わりに、従業員は退職せずに労働を提供し続けるという相互依存のキャリア・デザインのスタイルは完全に崩壊したと言える。

医療や介護においても、定期的に行われる診療報酬改定・介護報酬改定により、事業の再編、人材市場の流動化が加速化しており、長期雇用を前提とする状況ではなくなっている。

このような状況の労働市場で勝ち残るためにはエンプロイアビリティーを開発しなければならない。

エンプロイアビリティとは、「雇用され得る能力」「労働移動を可能にする能力」である。

現代におけるエンプロイアビリティの開発においては
一つの組織の中で展開されるキャリアではなく、様々な組織や労働市場で展開することを前提としたキャリア・デザインが重要と考えられる。

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特に、地域包括ケアシステムの推進により、医療・介護分野においても新たな労働市場が生まれており、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師等のキャリア・デザインは複雑化している。

環境変化の激しい医療・介護分野において人材は企業にとっての「固定資産」ではなく「流動資産」となった。

この現実の中で、企業に対して優れた貢献を提供できる人材は、自らが望む労働市場を自由に移動することが可能となる。

つまり、能動的にキャリアを想像する自律支援型キャリア・デザインが今後の主流と言える。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師等が自らの資格にしがみつくのではなく、転移可能なスキル(どんな業種でも通用するスキル。例:コミュニケーション能力・事務能力・交渉能力等)も積極的に開発することが重要な時代に突入している。

 

結局、経験から学べないPT・OT・STはなんの成長もできない

年末年始になると過去の振り返りや今後の豊富などを語ることが多い。

自分の人生を自分でデザインしている人ほど、自身の過去の経験から感じたことやその意味を語ることができる。

これは経験からの学びが多いということを示す。

経験から学ぶ内容は、その経験が自分に与えてくれた意味である。

例えば、仕事で失敗した時にその事実から自分がどのような意味を感じるか?ということは、非常に重要である。

二度と失敗しない方法、失敗の要因分析、失敗から感じた自身の改善点などの「意味」を、肯定的に抽出できる人は、確実に成長できる。

つまり、自分で自分自身を成長させる。

これを自己概念の成長と言う。

人は誰しもそれぞれの人生で獲得してきた経験がある。

しかし、経験から成長できる度合いには個人差がある。

この差は、自分への意味の抽出ができるか、できないか?という行為に依存している。

あらゆる経験から意味を抽出することが、キャリアデザインには必要不可欠である。

自己概念を成長させるためには、以下の要素が必要である

1)多くのことを経験すること、経験がなければ意味を抽出することは困難である

2)当事者意識を持ち、経験から生じた問題に対して正面から向き合うことで、意味が抽出される

3)意味の抽出が難しい時は、信頼できる人に相談すること

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どのような資格を有しても、どのような専門性をもったとしても、自分が経験したことから学びがなければ、仕事の生産性は頭打ちなる。

また、多くの経験をすることで、抽出される意味も多くなり、その分だけ自己概念が成長する。

大量に行動をしている人や信頼できる相談相手が身近にいる人は、間違いなく仕事や人生に情熱的、精力的に取り組むことができる。

ステータスや表面的な知識が理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を成長させるのではなく、その人自身の過去がその人を成長させるだけである。

すなわち、過去を顧みることは未来を見ることになる。

 

目の前の利用者を幸せにしているか?という自問自答がセラピストを成長させる

2015年度介護報酬改定は、リハビリテーションの現状にメスを入れた。

デイサービスやデイケアは「利用者の生活機能向上」を担う明確な方向付けが行われた。

医療保険では「キュア」、介護保険では「ケア」というすみ分けが進んでいたが、現在は多重に疾患を持つ人、慢性期症状と急性期症状が混在している人、認知症を有する人が、医療保険や介護保険の両方を利用する状況になっている。

すなわち、「キュア」も「ケア」も提供できる体制を、地域や組織で構築しなければならない事態が進行している。

その体制を構築するためには、「利用者の生活機能向上」という視点が有用である。

生活を主軸におけば、「利用者の生活に必要な要素」が見えてくる。

「利用者の生活に必要な要素」は、関節可動域?筋力?姿勢調節機能?装具?住宅改修?外出の機会?業者間の連携?・・・・・。

2015年度介護報酬改定では、「利用者の生活に必要な要素」について、考える概念そのものが「リハビリテーション」であると再定義を行った。

言い換えれば、リハビリテーションとは「人を幸せにする」武器である。

人の幸せは人それぞれで違う。

それぞれに違う幸せの状況を実現するためには、多くの武器が必要である。

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しかし、現在のセラピストの教育モデルは、医学モデルが中心となっており、他領域の武器を持つことに対しての整備は不足している。

当然、養成校への通学期間だけで、すてべを学ぶのは困難であり、セラピストを引退するまでを見据えたキャリア教育が重要である。

厚生労働省は、巷にある多くの「リハビリテーション特化型デイサービス」は「マシントレーニング特化型デイサービス」と考えている。

決して「リハビリテーション特化型」とは考えていない。

その考えが、2015年度介護報酬改定では全面的に顕在化している。

あなたのリハビリテーションは利用者を幸せにしているか。

この質問にしっかりと応えていくセラピスト業界を作り上げることが、セラピストに課せられた責務である。

急性期におけるキュア&ケアハイブリッドリハビリテーション

高齢化の進展により、急性期病院に入院する患者の属性が変化している。

急性期病院は重症度の高い急性発症の患者が入院する「場」であったが、高齢者の延命率向上や介護保険によるケアの提供により、在宅生活と病院入院を繰り返す高齢者が増加している。

その結果、急性期病院には複数の既往歴や認知症を有する高齢者が入院するケースが増えており、急性期医療の医学的モデルが適応できない状況が進んでいる。

そのため、急性期病院では慢性期疾患を持った高齢者に対する急性期治療を行うという複雑な状況が増えている。

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特に認知症高齢者今後800万人になるとも言われており、急性期病院における認知症対応も大きな課題である。

つまり、高齢化が進展し、介護保険サービスの質が良くなればなるほど、急性期の役割は多様性を増してくる。

治療を意味するキュア、全人的アプローチを意味するケア

この両方の提供が急性期病棟には求められる時代となっており、リハビリテーションにおいてもキュアとケアのバランスが課題となっている。

専門性の高い治療技術、多職種と連携し、最良のQOLを生み出す技術、これらがミックスされたハイブリッドリハビリテーションが向こう30年は加速する。

急性期だから慢性期、認知症の技術を磨く。そんな時代になっている。