アウトプットこそ人材育成のゴール

リハビリテーション部門の人材育成に悩む経営者や管理者は多い。

弊社には日々、人材育成に関する悩み事の相談が寄せられている。

研修をしてもセラピストの業務が変わらない
研修はしているが、人が育たない
社内にある様々な問題にリハビリ職種の関与が浅い
リハビリ職種の業務改善が乏しい
などなど・・・

医療機関や介護事業所におけるリハビリ職種の人材育成の問題は根深い・・

このような相談を受けたときに、弊社からアドバイスの一つに、「研修内容を業務の中でアウトプットすること」がある。

簡単に言うと、研修で学んだことを臨床や業務の中で活かすと言うことである。

なぜ、これが重要なのかと言うと、人材育成のゴールは「学んだことのアウトプット」だからである。

つまり、行動変容が人材育成で求められるべきものであり、研修によって知識や技術をインプットすること自体は、重要ではないと言うことである。

医療機関か介護事業所には業務上の課題が多く存在する。

その課題を解決することこそ、そこに働く人の責務であり、義務である。

課題を解決できる人材になることが、人材育成のゴールである。

しかし、残念ながら、多くの医療機関や介護事業所では「研修を実施すれば人材育成が行える」と勘違いしており、人の行動の変容に関する仕組みが全くと言って行われていない。

人材育成に悩んでいる経営者や管理者の人は次のような取り組みを検討していただきたい。

①社内の課題を抽出し、課題を解決するためのプロジェクトを立ち上げる。
②症例検討会や症例報告を実施する。
③学会発表や外部講師を積極的に行う。
④社内の職員が講師を担当する研修会を実施する。

以上のように、インプットではなく、アウトプットを行う場をマネジメントすることが人材育成のためには重要である。

研修によるインプットはあくまでもアウトプットの「きっかけ」であり、インプットのみで人材育成が実現されることはあり得ない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

キャリアデザインの重大課題!行動できない症候群!

医療・介護の職種にキャリアデザインの必要性が叫ばれて久しい。

診療報酬や介護報酬にて優遇されにくい分野や過剰供給が予測される分野で働く職種は戦略的なキャリアデザインが必要である。

特に、上記の理由から理学療法士、作業療法士、准看護師、放射線技師等の職種は今後、キャリアデザインは必須と言えよう。

しかし、キャリアデザインが必要性を頭ではわかっていても、行動に移せない人は非常に多い。

それでは、なぜ、行動に移すことができないのだろうか?

筆者の数多くのキャリアカウンセリングの経験から、行動に移せない人の特徴は以下のようなものがあると感じている。

①非常に優秀な人であるため、自分の行動の結果を先読みし、少しでもリスクがあると行動に移さない。

②失敗を悪と捉え、一度失敗すると立ち直れないと勘違いをしている。

③キャリアデザインの重要性を心底理解していないため、結果的に行動が中途半端になる。

簡単に言うと以下のような方が行動に移せない人である。
①はインテリの方
②は失敗したらどうしようが先立つ方
③自分の人生に向き合わない方

筆者はキャリアカウンセリングにおいてはこのようなクライアントに次のようなアドバイスを実施している。

インテリの方
リスクを取らないことの方がリスクになることが多い。
人生では正解だけを求めて行動すると不正解に出会った時の対処法を学ぶことができない。
リスクがある場合、リスクを管理しながら人生を前に進める方が前向きな人生になり、人生も好転しやすい。

失敗したらどうしようが先立つ方
そもそも、失敗しない人間に成功はない。
失敗しないと成功の方法が理解できない。
人生はトライ&エラーであり、トライしない人間にエラーはないし、エラーのない人間に成功はない。

自分の人生に向き合わない方
あなたはいつまで他人の人生の脇役を演じるかの?
自分の人生の主役は自分である。
自分の興味、関心、価値観を満たさない人生では永遠に環境の奴隷になる。
本当にそんな生き方でいいのか?

キャリアデザインには様々な理論があるが、上記のような問題がある人にどれだけキャリア理論を提供しても行動に移すことはない。

まずは、行動に移すため前提条件としてのキャリアデザインに必要な価値観を確立する必要があるだろう。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

2022年度診療報酬改定 回復期医療の変更ポイント

今回、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟はリハビリテーションサービスに直接的に影響する改定はなく、病棟マネジメントや連携に関する改定内容となった。

その中でも以下の点が、重要な改定内容だったと言える。

地域包括ケア病棟
入院料・入院医療管理料 3・4にも在宅復帰率7割の要件を新設され、満たさない場合は入院料が減算となる。

入院料・入院医療管理料3.4ではリハビリテーション職種も少なく、在宅復帰に取り組んでいない病棟があり、在宅復帰率7割の要件は相当厳しいものと予想される。

また、全て入院料で「自宅等から入院した患者が2割以上」の要件が設定された。

これは、自院の急性期病床からの受け皿機能に特化する病床を規制するものであり、地域包括ケア病棟として地域からの入院受け入れにシフトするように促すものである。

特に200床以上の医療機関の地域包括ケア病棟は、地域からの受け入れが乏しい傾向があるため、今後、ベッドコントロールに大きな課題が生じたと言える。

今回の改定を鑑みると、次期2024年度ではさらに地域包括ケア病棟の本来の役割であるサブアキュートや在宅復帰の強化が今後も行われると予想される。

回復期リハビリテーション病棟
今回はFIMの実績指数や施設基準に大きな変更はなかった。

今回、唯一大きな変更としては入院料1 ~ 4の重症患者割合が厳しくなったことである。

入院料1.2は重症度割合4割以上

入院料3.4重症度割合3割以上

に変更が行われた。

これにより、急性期と回復期の連携が重要となってくる。

回復期リハ病棟としては、より早期に急性期より患者の転院を促す必要がある。

しかし、急性期が回復期リハ病棟に早期に患者を転院させるためにはより状態を安定化させる必要があると言える。

また、急性期としてもどのような状態であれば回復期リハビリ病棟が受け入れることができるかの判断が重要となってくる。

したがって、回復期リハ病棟の重症度が上がることは、急性期の医療やリハビリテーションの質に影響すると言える。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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2022年度診療報酬改定 急性期医療の変更ポイント

2022年度診療報酬改定の個別改定項目が明らかになった。

今回は急性期医療について主な改定項目について解説する。

急性期
重症度、医療・看護必要度において
看護必要度のA 項目から「心電図モニター管理」を削除され
「点滴ライン同時3本管理」が「注射薬剤 3種類以上管理」となった。

心電図モニターが外されたことにより、心電図モニターに頼った運用をしていた病棟にとっては厳しい改定となった。以前より、心電図モニターによる管理が医学的に必要のない患者に対して、心電図モニターを装着している事例が散見しており、ついにメスが入ったと言える。

メディカル・データ・ビジョン社によると心電図モニターの削減により、重症度、医療・看護必要度は平均4.2%減少、最大8.89%減少、最小0.03%減少するとのことである。
参考サイト→ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000089368.html

心不全・呼吸器疾患・誤嚥性肺炎などを中心に見ている内科系の病院にとっては苦しい改定となったと言える。

「点滴ライン同時3本管理」が「注射薬剤 3種類以上管理」に変更された点であるが「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者のうち、使用薬剤数が2種類以下の 患者が存在することが判明したため、整合性が合わないとして、点滴ラインの評価が削除された。

また、手術や救急医療など高度かつ専門的な医療を提供している病院が算定できる「急性期充実体制加算 (460 ~ 180点)」を新設された。(ただし、総合入院体制加算との併算定は不可)

急性期充実体制
手術や救急医療等の高度専門的医療・急性期医療の提供体制を十分に確保する急性期病棟について評価する加算

一日につき
7日以内:460点
8-11日:250点
12-14日:180点
が加算できる。

施設基準
急性期一般1を算定する病院
高度専門的医療・救急医療にかかる体制と実績を有すること(ICU等にユニット設置や手術・救急搬送受け入れ件数が一定以上など)
入院患者の急変徴候をとらえて対応する体制(RRS:Rapid Response System)の導入

RSSとは、院内心停止になる前に早期に患者の急変に気付き、心停止になる前に介入することで、予後を改善するシステムである(下図)。

院内急変は高齢化患者が多い急性期では大きな問題となっているため、RSSが導入された。

 

しかし、【急性期充実体制加算】は【総合入院体制加算】との併算定が認めらない。

急性期充実体制加算や総合入院体制加算は「手術実績」や「救急搬送受け入れ実績」は共通している。

ただ、総合入院体制加算は「精神科、小児医療を含めた診療科要件や分娩件数要件などがあり、総合的な機能を持つ地域の基幹病院」を評価するものである。

一方で急性期充実体制加算は「ICU等の設置などが求められ、高度急性期医療を提供する病院」とより急性期寄りの医療機能を評価するものになる。

今回、急性期充実体制加算が急性期に認められたことにより総合入院体制加算も含め、相当急性期の評価が進んだと考えらる。

投稿者
高木綾一

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2022年度診療報酬改定 標準的算定日数を超えた場合、月1回のFIMの導入による懸念

2022年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーションに対する大きな改定はなかったが、気になる制度が導入されることになった。

疾患別リハビリテーションにおいて標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行う場合において、月1回以上のFIMの測定が要件化された(下図)。

これは、治療を継続することにより状態の改善が医学的に判断される患者が対象となっている。

回復期リハビリ病棟で実施されているアウトカム評価が特に標準的算定日数を超えた患者が多い外来リハビリにおいて実施されたと言えるだろう。

これは中医協の議論において「疾患別リハビリの質の高いリハビリテーションの推進」の観点から、標準的算定日数越の患者のリハビリテーションの効果に疑念が持たれた他ならない。

この制度が導入された真の目的は2つ考えられる。

1)将来的に期限を超えての改善目的のリハビリテーションでは改善割合が一定以上とする制度を導入したい

2)標準的算定日数を超え、状態の改善が期待できると判断されない場合においても、1月に13単位まで疾患別リハビリテーションを算定できるが、将来的にはこの維持期リハビリテーションも制限をかけたい

今回は上記の目的にのためのデータ収集事業としての側面が強いと考えられる。

また、FIMだけの計測で本当にリハビリテーションの効果を測ることができるのか?という問題が残る。

特に、整形疾患、心疾患、呼吸器疾患ではADLは自立しているが、生活の質の低下が顕在化しているということが多い。

今回の改定では、疾患別リハビリテーションのデータ提出加算も導入されており、リハビリテーションのサービスの中身に関するデータ収集が本格的に始まる。

以上のようなことを踏まえると次回の改定では、疾患別リハビリテーションに大きな制限がかかる可能性が高い。

投稿者
高木綾一

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