通所リハビリ・訪問リハビリを直撃する大激震から目を背けている経営者や管理者が多すぎる件

2018年度介護報酬改定の全容がほぼ明らかなった。

通所リハビリ・訪問リハビリは医師の関与や要支援者の評価などが追加され、通所リハビリ・訪問リハビリの経営や運営は新次元に移行した。

疾患別リハビリにおける維持期リハビリが近々終了することや後期高齢者が爆発的に増加することを考えると通所リハビリ・訪問リハビリの存在意義は大きい。

しかし、通所リハビリ・訪問リハビリをサイドビジネス的に行っている医療機関も多く、経営や運営をセラピストに完全に丸投げしている院長や事務長は多い。

医師が診察をしない、利用者の顔も知らないのは珍しいことではないし、どのようなリハビリテーションを行っているかなど知るよしもない。

このようなことを厚生労働省は十分に把握している。

だから、今回の改定で医師の関与を強く求めたのだ。

しかし、医師の関与や通所リハビリ・訪問リハビリのマネジメント強化を直視できない医師や事務長、経営者は相当多い・・・・。

訪問看護ステーションからの訪問リハビリ抑制や重度化推進
老人保健施設に在宅復帰等の機能を強化したスーパー老人保健施設が新設
回復期リハビリ病棟の7段階評価
などなど・・・大激震が連発している業界である。

断言できる。

通所リハビリ・訪問リハビリには近い将来、事業所の存続を左右する決定的な制度変更が行われるだろう。

今回の改定内容に積極的に対応しない通所リハビリ・訪問リハビリは必ず淘汰される。

老人保健施設や回復期リハビリ病棟の歴史をみれば一目瞭然である。

現実に目を背けてはいけない。

今なら、まだ間に合う。

心身機能が診れないセラピストが熱心に活動と参加に取り組むのは利用者・家族にとって迷惑な話である

2015年介護報酬改定にて活動と参加が強く推進されて以来、リハビリテーション業界には大きな誤りが生まれている。

その誤りを積極的に広めようとするセラピストも存在し、医療と介護の現場で大きな困惑が生じている。

心身機能・活動・参加

この3つが重要なことには異論はない。

リハビリテーションが全人間的復権を目指すのであれば、心身機能・活動・参加が十分に配慮されたリハビリテーションの提供が必要である。

リハビリテーションの専門職として国家より免許を付与されている理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は心身機能・活動・参加のプロである。

しかし、2015年介護報酬以来、心身機能を十分に評価せずあるいは、評価できず、利用者の心身機能の予後予測を明示することなく活動・参加を強く主張するセラピストが増えた。

筆者のクライアントである医療機関や介護事業所にも、鬼の首を取ったかのように活動・参加を主張する人がいる。

筆者がその人たちの症例検討や症例指導に関わると、心身機能の予後予測が全くできていない、動作分析状の問題点を把握できていないことが目立つ。

そのような状況で、車椅子や補装具での外出、手すりを付ける、難易度を落とした家庭内役割を推奨するなどのハンズオフなリハビリテーションを提供している。

しかし、私がハンズオン評価をしてみると、廃用症候群による筋力低下が顕著であり、正しいADL練習ををすることで車椅子から離脱できる可能性が極めて高い方や歩行能力の改善の余地が残されており、歩行能力が向上すれば手すりが不要となる方が沢山いる。

もちろん、中には心身機能は十分に高まっているが、自己効力感の喪失や他者への依存が強く活動・参加が低下している事例もある。

このような事例の場合は、多職種協働による活動・参加への支援が必要である。

しかし、各種調査より、麻痺を治したい、歩けるようになりたい、立てるようになりたいという心身機能改善のニーズを持つ人は活動・参加を望む人より遥かに多い。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は医学的知識を持つリハビリテーション専門職である。

心身機能への予後予測や介入をせずに、活動・参加を訴えることは、国家資格者としての責務や利用者・家族のニーズも放棄していると言っても過言ではない。

誤解を招く可能性があるため、言っておくが活動・参加は当然重要である。

活動・参加に資する心身機能の予後予測と介入、あるいは活動・参加を通じての心身機能の改善ができなければセラピストして不完全である。

いずれにしても、心身機能が診れないことには話にならない。

活動・参加を適切に実践するには心身機能に対する深い造詣が必須である。

それでは、活動・参加を強く訴える人は心身機能に対して深い造形があると言えるのだろうか?

活動・参加の本質を考えずに主張するセラピストはリハビリテーション業界の課題である。

診療報酬・介護報酬なんてどうでもいい まともな組織を作ることが先!

筆者は2018年度診療報酬・介護報酬改定に関して全国各地でセミナー講師の依頼をいただくことが多い。

多くの参加者は、施設基準の内容や加算の算定要件に関して関心がある。

施設基準や加算が経営に直結するため、大きな関心があるのだろう。

しかし、多くの人は施設基準や加算は手段であることを忘れている。

経営理念という目的を果たすために施設基準や加算という手段を存在することを忘れているのだ。

施設基準や加算を満たすことだけが、目的となっている事業所に共通することは質の低い人材の雇用、書類だけ揃えて監査を乗り切る、人材育成に興味がないである。

このような事業所は、診療報酬・介護報酬改定のたびに10円単位の金額に一喜一憂する。

言い換えれば、厚生労働省に自社の運命を委ねていると言える。

このような事業所は遅かれ早かれ、厚生労働省と市場に抹殺される。

在宅復帰、ADL改善、活動と参加の推進、看取りの促進などは元来崇高なものであり、簡単にできるものではない。

社会保障費が厳しくなる現在、効果的な医療や介護が求められるようになっている。

理念がない事業所は向かうべき方向性が定まっていないため、見かけ倒しのサービスを行い加算等を算定しているため、決して効果的な医療や介護サービスを提供しているとは言えない。

誤解を恐れずに言えば、診療報酬・介護報酬などどうでもよく、社会に貢献することができる組織を作れば、診療報酬・介護報酬はあとからいくらでもついてくるというものである。

施設基準や加算要件だけを追いかけるから組織がおかしくなる。

あるべき姿を追いかけた結果、施設基準や加算要件を満たすことができるのだ。

診療報酬・介護報酬の10円単位に一喜一憂するのではなく、自社の理念を実践することができる組織作りに邁進することが最も効果的な生き残り政策である。

あなたの医療機関や事業所は組織作りに邁進していますか?

それとも加算算定に邁進していますか?

利用者ベネフィットを考えられない通所介護は潰れる

2018年度介護報酬改定は様々な分野に影響を与えている。

プラス改定と言っても、アウトカム重視のプラス改定なのでアウトカムを出せない事業所や稼働率が低い事業所は一瞬で赤字に転落すると言える。

通所介護にも厳しい項目が目立つ。

通常型・大規模型の基本報酬が下げられ、BIに関する指標が導入されたが、その報酬は非常にわずかなものであり、ほぼ、財務的な意味はないだろう。

そのため、今後、重要なのは利用者の確保である。

通所介護は5万件に迫る勢いで全国に散在している。

リハビリ、入浴、長時間、お泊り、ヒノキ風呂、おいしい料理、カジノなど様々なサービスが玉石混合状態である。

このような中において、通所介護が生き残っていくためには「利用者のベネフィット」に訴求する必要がる。

利用者は通所介護というサービスを求めているのではなく、通所介護に通ったことによる効果を求めている。

この効果をベネフィットと言う。

通所介護に通うことで得られるベネフィットが少なければ、通所介護にこまめに行く動機付けが低下し、欠席することも多くなり、いつしか別の通所介護に乗り換えることに繋がる。

稼働率が極めて重要な通所介護において、顧客のベネフィットに訴求できない通所介護は、今後、利用者から選ばれることなく時代に淘汰されていく。
顧客のどのようなベネフィットに訴求しているのかがわからない通所介護の経営者やスタッフは多く、単に「お世話をしている」のが通所介護であると認識している事例が散見する。

お世話は利用者のベネフィットにならない。

お世話は手段であり、目的にはなりえないからだ。

当然、利用者が求めているベネフィットの全てに答えることは難しい。

したがって、どのようなベネフィットを提供するかを定義し、その実現に向けてひたむきに努力をすることが通所介護には求められている。

利用者のベネフィットを訴求しないお世話型通所介護は今後、利用者、ケアマネ、地域医療機関からも選ばれることが非常に厳しい状況になる。

改めて、通所介護は利用者のベネフィットを考える必要がある。

 

 

 

 

 

規定路線の延長にリハビリテーション業界の未来はない~時代の扉は突然開かれる~

筆者は2000年当初より、リハビリテーション業界に関わってきた。

この20年近くの間にリハビリテーション業界は大きく変容し、そこで働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は様々な人間模を映し出してきた。

時代に飲み込まれる者
時代を読んで活躍する者
ただ、時代を傍観する者

セラピストの人生の複雑化はより激しくなってる。

2000年に回復期リハビリテーション病棟が開設され、順調に成長してきたが算定単位数が財務省の目に留まり、直近では厳しい診療報酬改定が相次いでいる。

また、2008年に医療保険に疾患別リハビリテーションが導入されたことで、介護保険リハビリテーションが着目された。

当時、突如としてリハビリテーション特化型デイサービスが出現し、全国各地に広がった。

当初はデイサービスにおけるリハビリテーションとして注目され、現在までに4万件を超えるデイサービスが存在するまでに至った。

しかし、2018年度介護報酬改定ではリハビリテーション特化型デイサービスに暗雲が立ち込めている。

リハビリテーションだけを行うことは、デイサービスの役割ではないことを厚生労働省が主張している改定内容であるからだ。

また、2018年度介護報酬改定では、訪問介護におけるリハビリテーション、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションにおける要支援者向けリハビリテーションが評価されることになった。

これらのことに愚直に取り組んでいた介護保険事業所が突如として評価されるに至った。

これまでのようなリハビリテーションの歴史的な変遷を踏まえると、わかることが2つだけあると言えるだろう。

それは、既定路線の上にリハビリテーション業界の未来はないということである。

そして、新たなリハビリテーションのカタチを受け入れる時代の窓は突然、開かれるということである。

これからも、新たなリハビリテーションの窓が開かれていくだろう。

その窓を開けるのは誰か?

その窓からはじき出される者は誰か?