訪問介護サービスの大改革は介護保険リハビリテーションの在り方を変えていく

2017年11月3日の日本経済新聞に「訪問介護使いすぎ是正」という衝撃な見出しの記事が掲載された。

要約すると、
サービス付き高齢者向け住宅に住む人は、通常よりも1割程度低い料金で訪問介護サービスを利用することが出来ることから、利用の必要性に関わらず最大回数まで利用している。次回、2018年度改定では1割の減額の計算を廃止し、利用回数を低減化させる。
と言うものである。

前回の2015年度介護報酬改定でも、訪問介護の生活支援の単位数は大幅に低減化しており、生活支援の利用抑制策が矢継ぎ早に導入されている。

生活支援サービスに関しては、従来より次のような問題が議論されてきた。

生活支援サービスを行うことにより、利用者の自立を阻害している事例がある

生活支援サービスは民間企業での行っていることから、介護保険を使用した同様のサービスは民業圧迫ではないか

利用者ごとで生活状況が違うことから、これらのことは必ずしもすべての事例には当てはまらないが、財務省はこれらの理由から生活支援の単価の低減化を主張してきた。

2017年11月3日 日本経済新聞

訪問介護サービスの生活支援は、リハビリテーションにおける活動と参加と大きく重なる概念でもある。

リハビリテーションの観点より、生活支援をすることが徹底されていれば、生活支援が自立を阻害しているという事例は最小化できていたかもしれない。

2018年度介護報酬改定では、生活支援の対象の厳格化、自立支援に対する加算、リハビリテーションの介護職の連携がより図られる可能性が高い。

今後、生活支援サービスの課題をリハビリテーション職種がどのように捉え、介護職の方とどのように協業できるか?という視点が大いにリハビリテーション職に求められ、働き方も大きく変わる可能性が高い。

リハビリテーション職種の在宅サービスの在り方はさらに進化が求められる。

 

セラピストとして働きだすと、どんどん世界は狭くなっていく

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として働きだすと、当初は「新しい知識」や「新しい経験」が得られることにより「世界が広がっていく」感じがする。

しかし、5年、10年もセラピストをしていくと世界は広がるどころか、逆に狭くなってくる。

なぜか?

付き合う人が固定化されること
行動する範囲も限定されてくること
リスクを取る勇気が減少していくこと
などにより、日々、同じような世界をみることになる。

同じような世界に身を置いていることにより、生じる恐ろしい副作用は「物事への視野が狭くなる」ことである。

視野が狭くなれば、様々なアイデアや意見を出すことができなくなり、その結果、様々なトラブルに巻き込まれる可能性が高い。

また、トラブルに巻き込まれたくないから、同じ価値観を持つ人とだけの人間関係を大切にする。

同じ価値観を持つ人とだけの付き合いに固執すると自分が人間社会においてどのような人間であるか、自分自身が何者なのかを見失ってしまうことになる。

自分のいる世界より、自分がいない世界の方が圧倒的に広い。

自分の知らない世界では、様々な価値観や意見がある。

その中には、自分の人生や仕事の問題を解決することが出来る「種」が沢山ある。

それでは、どのようにしたら「世界を広げる」ことができるか?

それは、今の会社、組織、肩書とは全く無縁の世界に身を置いてみることである。

そうすれば、自分の真の実力や視野の広さを即座に感じることが出来るだろう。

特に30代になれば、どんどん「世界を広げる」ことにチャレンジするべきである。

もし、40代で「世界を広げる」ことなく、生きていればその後の人生はどんどんピンチになる可能性が高い・・・。

あなたは世界を広げていますか?

 

 

 

「在宅復帰」支援は新次元へ PFM:Paient Flow Mnagemeが導入される2018年度同時改定

現在、全ての入院医療機関や老人保健施設に在宅復帰の要件が課せられている。

病院や施設より在宅で治療やケアを行った方が、ホテルコストや人件費のコストカットが可能あることから、社会保障費の削減には在宅復帰の推進が欠かせない。

日本では、医療機関や施設に依存した治療やケアが長年行われていたが、2025年を前に政府は在宅復帰を急速に進めている。

今まで、在宅復帰に関する施策は以下のようなものが行われてきた。

①7:1病棟・回復リハ病棟・地域包括ケア病棟・療養病棟・老人保健施設の在宅復帰に対するインセンティブ報酬
②退院支援加算・退院前訪問指導・退院時共同指導料などの後方連携を主体とする加算

これらの取り組みは後方連携を強化するものである。

後方連携は退院先での療養やリハビリテーションを円滑に進めるためにも重要であることが様々な調査からわかっている。

しかし、後方連携を強化しても在宅復帰が難しい患者や利用者は多い。

中央社会保険医療協議会は、次のような資料を提示している。

この資料は、入院前からの支援が必要である患者や利用者像を明示している。

このような事例に対応するためには、後方連携のみならず、前方連携が必要であるとの意見が出ている。

この意見を受けて、2018年度診療報酬・介護報酬改定同時改定では、PFMの本格的な導入が予定されている。

PFM(Patient Flow Management)とは

入退院マネジメント強化の手法で、平均在院日数の短縮、病床稼働率の向上、新入院患者数の増加、救急搬送患者の受け入れ数拡大、手術件数増、在宅復帰率の向上などに効果がある。

さまざまな理由で退院の困難な症例に対し「医療ソーシャルワーカー(MSW)による退院先探し」という従来型の退院調整ではなく、病院全体のチーム医療により患者をどうマネジメントか問われている。

入院コーディネート・ベッドコントロール・退院支援/退院調整などの入退院マネジメント強化を通じて収益性を飛躍的に向上する手法「PFM」が次期診療報酬改定で注目されている。

最大の特徴は、入院前から退院後を見据えた支援を行うことで、ソーシャルワーカーだけでなく、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士などが入院前から関わることである。

「在宅復帰」支援は新次元に突入する。

今後は、入院前からの支援という新しい取り組みが今後着目される。

 

 

 

 

 

 

要支援高齢者の孤独死が増える!?

孤独死が日本の大きな社会問題となっている。

総務省の統計では、日本国内の独居老人の数は漸増している(図1)。

図1 総務省 報道資料 統計トピックスNo.84(平成26年9月)

独居生活が可能であるということは、日常生活動作レベルは著しく低下していないことを示唆し、元気高齢者か要支援の方が殆どを占めている。

一般的に孤独死は都会に多いとされる(図2)。

図2 平成28年版高齢社会白書より抜粋

なぜか?

それは、都会では人間関係が希薄であり、地域の見守り機能が低下しているため、個人の変調を把握することが困難であるからである。

また、介護保険制度において要支援の方へのサービスは限定的なものとなる。

要支援の方が使えるサービスの回数は、要介護の方と比べて少ない。

そのため、要支援の方の身体状況の変化をサービス提供事業所が把握することは要介護の方より難しい状況と言える。

したがって、都会に住んでいる要支援の方の孤独死リスクは高いと言える。

特に男性は地域コミュニティとの関係構築が苦手な方が多く、互助の恩恵を受けにくい。

政府は、地域包括ケアシステムにおける自助・互助を推進している。

一般的に都会では互助は難しく、自助の機能が適していると言われている。

よって、都会では自助による孤独死を防止する仕組みが必要である。

見守りサービス
見守り家電
趣味や仕事のコミュニティ
訪問看護や訪問リハビリ
の活用が今後ますます孤独死防止に寄与すると考えられる。

要支援だから大丈夫と考えるのではなく、その人を取り巻く環境を考えることが孤独死防止には最も重要である。

 

 

 

 

 

診療報酬・介護報酬改定をいくら勉強しても実践しなければ何の意味もない

2018年度診療報酬・介護報酬改定が近づいている。

私自身も様々な団体にお声がけを頂き、全国各地で次期同時改定に関しての講演を行う機会が増えている。

診療報酬・介護報酬改定のセミナーは非常に人気があり、大変多くの方が参加され、また、非常に熱心に受講している。

診療報酬・介護報酬改定セミナーへの参加理由は、経営や運営の改善、事業所の売上向上、自部門の経営方針の検討のため等である。

つまり、目的は「診療報酬・介護報酬改定という情報を知ること」ではなく、「経営や運営における具体的な変革や改善」であると言える。

しかし、私の経験上、「診療報酬・介護報酬改定の情報を得ても、具体的な組織改革の行動を起こす人は非常に少ない」と感じている。

経営や運営を安定させるためには、「正しい情報の収集」と「適切な組織管理」のバランスが重要である(図1)。

図1 経営や運営のバランス機能

 

中国の格言に「知行合一」と言う言葉がある。

この言葉は
「知っているだけで実行しないのはまだ本当の知とはいえない。実践のうえで知と行とが一致することが重要であり、実践重視・体験重視の考え」
を意味するものである。

つまり、診療報酬・介護報酬改定の内容を知っただけで、実践に移さなければ、それは何も知らないことと同じである。

知行合一は、経営者や管理者にとって大きな示唆である。

医療機関や介護事業所の一流と二流の差は何か?

それは、決して医療職や介護職のマインドや技術の差ではない。

経営や運営の意思決定プロセスに全力を尽くせるか?否か?

これが一流と二流の差である。

二流経営者や管理者は
年次計画書、部門運営計画、行動目標、朝礼でのスローガンなどを重視し、計画や目標を実践するためのプロセスには力を入れない。

簡単に言うと「計画好きの実践嫌い」では二流に陥ると言える。

「診療報酬・介護報酬改定の内容を知る」だけでは、組織になんのインパクトを与えることはできない。

大きな制度変更が行われる2018年度同時改定が近づいている。

知識を実践に移せる医療機関・介護事業所だけが生き残る時代が到来している。