2025年に向けた高齢者向けジム開設ラッシュはリハビリテーション自助時代の扉を開ける

2017年1月19日の日本経済新聞にて「イオンが高齢者向けに小型の簡易フィットネスジムの多店舗展開を始める」と報道された。

記事によると、健康機器大手のタニタと提携し、同社の健康プログラムを活用するとのことである。

また、本格的な筋力トレーニング等の機器を配置するのではなく、交流を重視し、店舗の大半は飲食や休憩スペースに充てるとのことである。

セントラルスポーツ、東急スポーツオアシス、ルネサンスなどのフィットネスクラブ大手もシニア向けジムのサービスを拡充させており、フィットネス市場はシニアの取り込みに本格的に取り組んでいる。

フィットネス業界が高齢者向けサービスを拡充していることには、それ相応の理由がある。

大きな理由は、「地域包括ケアシステムにおける自助の推進」である。

現在、軽度者向けサービスとして、日常生活支援総合事業(以下、総合事業)が推進されている。

現在のところ、通所介護と訪問介護を利用している要支援1.2の方は、介護保険を用いたサービスから、2017年4月以降は市町村が運営・管理する総合事業が提供するサービスに移行することになる。

この総合事業は要支援者の受け皿として考えられているが、実は厚労省はもう一段高い次元の介護予防に関する仕組みを実現したいと考えている。

厚生労働省が出した「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」には次のように記載されている(下図)。

総合事業は市場において提供されるサービスでは満たされないニーズに対応するものであることから、市場における民間サービス(総合事業の枠外のサービス)を積極的に活用していくことが重要である。

総合事業資料つまり、総合事業は民間サービスを補完するものであり、民間サービスを利用した自助活動が前提条件ということである。

特に、民間サービスが潤沢な都会においては総合事業ありきではなく、民間サービスありきと厚生労働省は考えている。

総合事業は民間サービスではフォローできないサービスを受けたい人や民間サービスを購入することが出来ない人の受け皿として機能する可能性が高い。

しかし、総合事業は事業として成立することが難しい料金設定であることを考えると、質の高いサービスを成立させることが難しいかもしれない。

民間サービスが潤沢な地域と、潤沢ではない地域では、市町村の判断で総合事業の在り方も大きく変わる。

いずれにせよ、民間の高齢者向けサービスは国を挙げて推進されていく。

公的保険に頼っていた予防医学や介護予防、生活支援が民間サービスにシフトしていくのは間違いないだろう。

民間サービスの開発や提供に携わる医療・介護関係者の活躍も今後期待される。

 

全国のセラピストに「地域包括ケアシステムシンドローム」が蔓延中

地域包括ケアシステムが必要だ!と叫ばれて久しい。

毎日のように全国津々浦々で、地域包括ケアシステムに関する研修会やシンポジウムが行われている。

最近は、ネット上でも地域包括ケアシステムに関する情報を発信している人が多い。

今の医療・介護・福祉分野においては、地域包括ケアシステムに取り組んでいることをアピールしないと世間から排他的に取り扱われる空気がある

誤解を恐れずに言うと、「地域包括ケアシステムに取り組んでいます」とさえ、叫べば、なんとなく優秀な人と思われる風潮が蔓延している。

しかし、現実はどうだろうか。

自分の勤めている法人の中でさえ連携や統合がうまくできてない。

目の前の患者さんに偏ったリハビリテーションしかアプローチできない。

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の評価や治療技術が著しく低い。

このような状況にありながらも、「地域包括ケアシステムに取り組んでいます」と言えば、なんとなく「すごいですねぇ」と思われる。

これ、おかしくないか?

’j«ŠÅŒìŽt_¢‚Á‚½

地域包括ケアシステムを語るのは簡単である。

しかし、地域包括ケアシステムの中身は地に足の着いた医療や介護の現場にしか存在しない。

地域ぐるみで介護予防をしている
健康増進を啓蒙している
地域で認知症の対応をしている
地域の医療・介護・福祉関係者の会合を主催している
などの素晴らしい活動をしていても、医療・介護現場でセラピストとして質の低いことしか提供できていないのであれば、本当の意味で地域包括ケアシステムを理解しているは言えない。

特に、自分の勤める法人のマネジメントがうまくいってないのに、地域包括ケアシステムを大義名分に対外的な活動に力を入れているセラピストは勘違いも甚だしい。

地域包括ケアシステムは、目の前の患者・利用者へのリハビリテーションサービス、そして、自分が勤める組織の中にあることを今一度認識するべきである。

自分のセラピストとしての仕事ぶりを顧みずに、地域包括ケアシステムをやたらめった声高に叫ぶ「地域包括ケアシステムシンドローム」は地域包括ケアシステムを阻害する要因である。

医療機関・介護事業所のフリーライダーを排除せよ

フリーライダー
組織においてメンバー同士の貢献によって付加価値を産み出すとき、何も貢献せず、他のメンバーに貢献に依存し得られた付加価値の恩恵にはあずかる人、ただ乗りの人。

わかりやすく言うと、「給料泥棒」である。

ご存知の通り、診療報酬・介護報酬の体系はより厳しくなっており、生産性の高い働き方を実行できる集団でなければ、安定的な利益を確保することは難しくなっている。

生産性を高めるには

投資する時間や費用を少なくしても、成果には変化がないこと

もしくは、

投資する時間や費用は変化がないが、成果が大きく変化すること

が必要である。

すなわち、時間や給与あたりの成果が大きい人が生産性が高い人と言える。

次のような人がいる職場は、生産性の観点から考えると最悪である。

大した実力もないのに肩書だけの上司が指示ばかり出して、自分自身ではなんら仕事の成果を出していない人

職場における仕事の責任を果たさずに、外部の仕事(セミナーや副業)などの仕事を職場に持ち込んでしている人

よくわからない経営者や院長の親族の人が月に数回だけ勤めて、えらく高い給与をもらっている人

毎日残業をして、残業代も高く、しかも普通の仕事の成果しか残せていない人

1分でわかる話を5分も10分もする人

同じ失敗を何度もする人

今までの診療報酬・介護報酬の体系では、生産性の低い人がいても最低限の利益率を維持することが出来ていた。

また、生産性の低い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護職、看護師、医師も人手不足をアドバンテージにして、雇用されていた。

しかし、地域包括ケアシステム構築の最終コーナーを回っている昨今では、もはや生産性の低いに人間は不必要となってくる。

Team Of 8 Blue People Holding Up Connected Pieces To A Colorful Puzzle That Spells Out "Team," Symbolizing Excellent Teamwork, Success And Link Exchanging Clipart Illustration Graphic

医療・介護現場は、まだまだ生産性が低い。

マネジメントレベルの低下
個々の職員の技術力
コミュケーションの不備
生産性への意識
ITの活用
など多くの課題の解決が先送りされている。

また、生産性の低い人を排除する仕組みも乏しい。

特に、経営者の知り合い、血縁関係者や立場の高い人のフリーライダーの排除をする力は乏しい。

あなたの組織にはフリーライダーを排除する考えや仕組みはありますか?

フリーライダーが増えれば増えるほど、組織崩壊は近い。

 

2018年以降、地域包括ケアシステムの議論は収束し、いよいよ実践・実戦のステージへ

2025年に向けた地域包括ケアシステムの構築はいよいよ最終章へ突入する。

2000年の介護保険発足以来、地域包括ケアに関する議論はやむことはなかった。

実は、2000年に発足された高齢者介護研究会による「2015年の高齢者介護」では、次のような報告がされている。

  • 介護以外の問題にも対処しながら、介護サービスを提供するには、介護保険のサービスを中核としつつ、保健・福祉・医療の専門職相互の連携、さらにはボランティアなどの住民活動も含めた連携によって、地域の様々な資源を統合した包括的なケア(地域包括ケア)を提供することが必要である。
  • 地域包括ケアが有効に機能するためには、各種のサービスや住民が連携してケアを提供するよう、関係者の連絡調整を行い、サービスのコーディネートを行う、在宅介護支援センター等の機関が必要となる。

つまり、地域包括ケアシステムの議論は15年以上続いており、その制度設計には、相当な時間がかかっていると言える。

しかし、2018年には地域包括ケアシステムの議論には終止符が打たれそうである。

2018年には診療報酬・介護報酬改定ダブル改定、第七次医療計画、第七期介護保険事業計画の策定が行われるという「奇跡の年」である。

したがって、地域包括ケアシステムの構築に向けた「トドメの制度設計」が行われる可能性が極めて高い。

地域包括ケアシステムが、世の中の医療・介護・福祉関係者に認知されるようになったのは2012年度介護報酬改定からである。

2012年度介護報酬改定、2014年度診療報酬改定では地域包括ケアシステムが色濃く反映された報酬体系が導入され、各医療機関や介護事業所は「地域包括ケアシステム」を意識せざる得なくなった。

e31f36e1593b36218975e8d813072ded_s

地域包括ケアシステムは日本社会を変える国策である。

医療の機能分化
医療・介護連携
在宅看取りの推進
認知症ケアの推進
自立支援の推進
地域医療構想
医療の在宅シフト
など様々な取り組みが求められ、医療機関や介護事業所はその対応に追われている。

しかし、2018年からは、もはや失敗は許されない状況になる。

2000年~2017年までは地域包括ケアシステムの模索の段階であり、様々な取り組みへの挑戦が求められ、たとえ失敗をしてもやり直しが可能であった。

しかし、2018年~2025年は地域包括ケアシステムの実践と実戦が求められる。

一段と厳しくなる地域包括ケアシステムへの取り組みに乗り遅れた場合、経営や運営が困難に陥る可能性が高い。

現在、地域包括ケアシステムを語る評論家は多いが、2018年以降は地域包括ケアシステムの実践家・実戦家が求められる。

あなたの勤める医療機関や介護事業所は、地域包括ケアシステムを実践・実戦することはできるか?

そして、あなた自身は地域包括ケアシステムにおいて勝ち残れるか?

 

 

 

 

2018年以降加速する医療・介護制度改革におけるリハビリテーション分野の最大の課題

2025年に迎える未曽有の超高齢化に対し、医療・介護分野の改革が急加速している。

特に、2018年から始まる医療・介護分野の改革は過去の比ではない。

2018年には
第7次医療計画
第7期介護保険事業計画
が同時スタートし、
さらに、
診療報酬改定と介護報酬改定
が行われる。

つまり、2025年問題に向けた大改革を行う最高のタイミングが2018年である。

それでは、どのような改革が行われるのだろうか?

周知の通り、改革の基本的な方針は、「地域包括ケアシステム」である。

「地域包括ケアシステム」の本質に関しては、下記のブログを参照してほしい。

地域包括ケアシステムの本質

現在、地域包括ケアシステムの完成を目指して政府は病床の機能分化を急いでいる。

日本は急性期機能を持つ病院が多く、急性期後に対応する病院が少ない。

その上、過剰とされている急性期病院の急性期機能が諸外国と比較して低い。

日本の急性期病院は在院日数が長く、投入している医療資源も乏しく、総じて、急性期医療が必要ではない患者が多く入院しているとされている。

また、療養型病院にも、入院治療が必要ではない在宅医療で対応可能な患者が多く入院している。

このような状況を背景に、政府は急性期・回復期・慢性期の医療機能を強化し、各医療機能に適切な患者が入院する仕組みの導入を急いでいる。

2014年より始まった地域医療構想や2年に一回行われる診療報酬改定では、医療の機能分化が徹底されている。

しかし、この医療の機能分化は新たな課題を生んでいる。

それは、機能が分化されることによる「情報や連携の分断」である。

機能を分化させれば、させるほど情報や連携は分断される。

したがって、機能分化と連携は表裏一体の関係と言える。

Team Of 8 Blue People Holding Up Connected Pieces To A Colorful Puzzle That Spells Out "Team," Symbolizing Excellent Teamwork, Success And Link Exchanging Clipart Illustration Graphic

クリティカルパスの導入
病院間や病院と介護事業所の連携会議
医療情報の共有
などが、現在、連携を強化するために行われている。

しかし、リハビリテーションに関する連携は難しい。

なぜならば、リハビリテーションに関する哲学や思想の違いが、各病院やセラピストで存在するため、連携は容易ではない。

脳卒中患者を事例にすると
急性期病院で装具療法を中心とした治療をしているが、転院先の回復期リハビリテーション病院で装具使わない手技の治療が展開されることが散見される。

また、訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションを併用している利用者のリハビリテーションにおいて異なる目標が設定されていたり、異なる手技が行われていることも多々ある。

機能分化による情報や連携の分断は、リハビリテーション分野に新たな課題を生んでいる。

医療の機能分化に伴う新たな課題に対して、リハビリテーション関係者は真剣に向き合わなければならない。

これからの時代は、連携先を含めたリハビリテーション技術の共有が重要となってくる。

頭ごなしにどの哲学や思想が正しいと決めるのではなく、議論をしながらリハビリテーション技術を共有していく姿勢が求められる。