医療・介護従事者の生き残り策:自身の資源を資産化せよ

自分や組織が持っているあらゆる経営資源を有効活用し、、市場からの金銭的対価や社会的評価という資産を得ることを意識している医療・介護従事者はどれぐらいいるのだろうか?

経営資源の代表例はヒト・モノ・カネ・情報・技術・時間・知恵・顧客などがある。
医療・介護従事者にも経験、知識、技術、人脈、行動力、お金、知恵、勇気、コミュニュケーションなどの資源が存在する。
これらの資源は、「ただ、もっているだけ」では意味がない。これらの資源を組み合わせて、サービスや商品を創り出し、市場に売り出すことで、はじめて資産化の可能性が得られる。
多くの医療・介護従事者は、自身の資源の棚卸しすらしていない。あるいは、棚卸しを実行しても、サービスや商品を創りだす行動にたどり着いていない人がほとんどである。
自身の資源を認識し、市場へアプローチを実行する少数派だけが、圧倒的に市場で優位になる時代になっている。

本ブログでも述べているように、日本の社会情勢は大きく変化している。企業が個人を守る時代は終焉し、個人が社会の中でサバイバルしなければ、生活水準を向上させることが難しい時代に突入した。
特に、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師・介護福祉士などは、医療保険・介護保険市場という規制ビジネスでご飯を食べている。この市場は、業界の総収入が、政府による総量規制を受けている。つまり、普通に仕事をしているだけで収入は上がりにくい状況であることは明白である。

組織や社会の課題を解決する人材のみが評価される時代になったと言っても過言ではない。自身が有している資源を資産化するためには、自身が所属している組織やコミュニティーの課題を認識した上で、自身の資源を有効活用し、その世界の利害関係者(ステイクホルダー)のシェアーを取ることが必要である。

あなたは自身の資源を理解しているか?あなたは自身の商品化を図っているか?
あなたは所属してる組織やコミュニティーの課題を認識しているか?

 

2040年以降に大量に余る医療・介護従事者とシニアビジネス企業

2040年代中盤に高齢者の数は減少に転ずる。
今後、日本は大きな局面を迎える。
2040年まで高齢者が増え続け、かつ、医療・介護従事者やシニアビジネス企業の市場が拡大する局面 と 2040年以降高齢者が減少し、医療・介護従事者やシニアビジネス企業の市場が狭小する局面である。

今後、十数年間は医療・介護従事者は2040年までの局面を乗り切るために、量産されていく。
資格制度の規制緩和、養成校や大学の設立や学部変更など2040年までを乗り越える施策が展開される。しかし、2040年以降に関する施策はなんら立案されていない。

現実的に大都市を除く、地方都市では1割~3割の急性期病床の削減や特別養護老人ホーム等の新設も停止している。つまり、今後は2040年以降の情勢に合わせた医療・介護政策の出口戦略も密かに始まっている。

状況はめまぐるしく変化する。一年ごとで、規制緩和、制度改訂が行われ、不要と判断されたビジネスの淘汰が始まる。現在、参入障壁が低いヘルスケアビジネスもどんどん新しい企業が参入し、そして、どんどん淘汰されていく。ヘルスケアビジネスが、安定した市場であると勘違いしている企業が参入しているのが現状である。市場があっても、生き残れるかは別問題である。多くの企業は2040年以降、狭小するシニアビジネス市場を冷静に把握できていない。

現状の市場モデルでは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士・・・などの医療・介護従事者が確実に余る時代が迫っている。2040年に確実に引退し、悠々自適に生活できる資産家以外はこの問題を真剣に考えなければならない。

今後は、2040年までを乗り越える地域包括ケアシステムの構築と2040年以降の市場拡大を得るための職域拡大という状況に我々は対峙しなければならない。

所有している知識と技術を100%発揮できる人は少数派である

医師・看護師・理学療法士・作業療法士等の専門職は、文字通り専門分野を有する職能人である。したがって、特定の分野に関する知識や技術を高めることが重要であることに疑問の余地はない。実際に特定の分野に造詣の深い医師や理学療法士、作業療法士が存在する。

しかし、知識や技術の高さと仕事の生産性や社会貢献度は正比例しない。
なぜならば、知識や技術はコミュニケーションやマーケティングにより、発揮されるものである。知識や技術を相手に伝えるコミュニケーション能力や知識や技術が活かせる市場や場所を選定するマーケティング能力が低ければ、どれだけ博学でも仕事の生産性は低い。

つまり、100の知識や技術を持っていても上記した能力が低下していると、20の知識や技術しか市場で発揮できない人もいれば、50の知識や技術しか持っていなくても、高いコミュニケーション能力やマーケティング能力で50発揮できる人もいる。このケースでは後者のほうが市場価値が高いことになる。

医療・介護の市場は地域包括ケア、ロボットテクノロジー、脳科学、バイオメカニクス・・・などの知見が混在している。よって、博学な知識や高い技術スキルに加え、コミュニケーション能力、マーケティング能力を高めなければ、市場で生き残りにくい状況になっており、今後もこの状況はさらに続く。

高いレベルの知識・技術・コミュニケーション・マーケティングの獲得では容易ではない。そのため、所有している知識と技術を100%発揮できる人は少数派である。しかし、少数派だからこそ、市場から高評価が得られるのである。したがって、今後の人材育成においては、100%の知識と技術を発揮できるための教育的介入がますます重要となる。

 

地域包括ケア病棟の役割のミスマッチを解消せよ

2014年度診療報酬改定にて、地域包括ケア病棟が新設された。
地域包括ケア病棟の役割は①急性期からの受け入れ ②在宅復帰支援 ③緊急時の受け入れである(下図)。

10:1病棟、回復期リハビリテーション病棟ⅡorⅢ、療養型病棟などが経営的安定を図るために地域包括ケア病棟に変更するケースが多い。現在、地域包括ケア病棟は徐々に件数を増やしてきており、今後さらに存在感がます病棟である。
しかし、地域包括ケア病棟は厚労省が期待する役割を満たせていない現状がある。

多くの地域包括ケア病棟では
①地域からの緊急時の受け入れは少なく、自前の急性期病棟からの転棟患者が多い
②リハビリテーション2単位/日の提供で在宅復帰を達成するため、回復が見込める整形外科患者の入院が多い
という現状が散見される。

このような運用では、事実上、「整形外科リハビリテーション病棟」であり、決して地域との密な連携を期待されている地域包括ケア病棟になっていない。

2014年診療報酬改定後に経営的安定を図るために地域包括ケア病棟へ機能転換した病院は多いが、本来の地域包括ケアの仕組みを構築しないまま病棟運用をしている病院も多い。そのため、求められる機能とのミスマッチが生じている。

現在、地域包括ケア病棟の運用状態に関する調査が行われている。おそらく、上記した問題点が具体的なデータとして抽出され、2016年度診療報酬改定では地域包括ケア病棟の要件強化が図られるだろう。特に地域との連携実績、在宅医療への関与、軽症患者の要件強化などが検討される可能性が高い。
そのため、現在、地域包括ケア病棟を開設している病院、あるいはこれから開設する病院は、病棟運営だけでなく、地域包括ケアの意味を理解し、地域連携に努めるべきである。さもなければ、次期診療報酬改定で痛いしっぺ返しをいただくことになる。

地域包括ケア病棟の役割

平成26年度診療報酬改定資料 厚生労働省

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現状の不満に耐えるか?未来の不安を消し去るか?

医療・介護情勢が混沌としている。
今後、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護福祉士を取り巻く状況はますます厳しくなる。
与えられた仕事をしていれば、給料や処遇が改善するかどうかもわからない。非常に不確実な時代に突入している。このような時代では職場に対して不満や憤りをもつ人が増加する。多くの人が不満や憤りを心に抱えながら働いている。かといって、不満を解消するために行動する人も多くいるわけではない。転職や起業をしたからといって、成功するのかどうか?わからないという不安もある。

多くの医療・介護従事者は不満と不安の狭間で立ち止まっている。
不満に耐えるか、不安を消し去るかを選択できずに思考停止になっている。

しかし、不満は外部環境から生まれ、不安は内部環境から生まれる。外部環境は職場、政治、経済であり、人が制御できるものではない。しかし、内部環境は人の知識や経験であり、人によって調整ができるものである。つまり、自分の知識や経験を高めていくことで、将来の不安は消し去ることができる。

今の時代は明治維新や戦後直後の状況に近い。価値観の変化、政治や経済の不安定、国外からの情報流入などが目まぐるい。明治維新や戦後直後の環境変化に対して不満を耐え忍び、愚痴ばかり言っていた人達は時代の荒波の飲まれていった。
しかし、環境変化とともに知識や経験を高めていくことで時代に適応し時代を創造する側に立つ人達もいた。

不満に耐えるか?不安を消し去るか?
あなたはどっちを選択する?