イノベーションのジレンマ
業界上位の企業が顧客の意見に耳を傾け、高品質の製品・サービス提供で破壊的イノベーションに市場を奪われる現象 ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン氏が提唱した概念である。
破壊的イノベーションとは性能面は劣り、低価格、利用が容易であるという特徴を持つ。
優良企業は、顧客の要求する性能を愚直に追い続けていくことにより、製品やサービスの機能は向上していく。
次第に、顧客が理解しずらい、扱いずらい製品やサービスになっていく。
例えば、高品質で多品種をそろえたデパートが衰退し、ディスカウントストアーが発展したような事例である。
このように顧客が理解しやすく、扱いやすい破壊的イノベーションが顧客から支持される現象を、イノベーションのジレンマと言う。
実は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の業界にもイノベーションのジレンマは存在する。
臨床現場や教育現場において、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が難しい理論を追求すればするほど、臨床では応用しにくい技術になっていく。
特に、優秀なセラピストほどこの傾向は強く、難解な治療手技を展開することで他者が模倣することが出来ない技術が完成し、統一した医療技術の提供が困難となりチーム医療が破綻することがある。
優秀でまじめなセラピストは高品質・高煩雑な評価や治療を作り上げていく。
一見、このことは良いことに思えるが実は組織の中においては、「イノベーションのジレンマ」という大問題に発展していく。
難解な治療技術は、周りのセラピストにとって使いにくいものになり、結果的には使われない技術となる。
周囲から評価されるのは、誰もが扱いやすい破壊的のベーションである。
セラピストは自分が行っていることが、周りに理解され、扱いやすいものなのか?を強く意識する必要がある。
この視点がなければ、地域包括ケアシステムやチーム医療の中で働くことは難しいだろう。
執筆者
高木綾一 株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術)(経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授