キャリアカウンセリングにおいては、「キャリアデザイン」に関する相談が非常に多い。
その際、クライアントからよく聞かれる言葉が「これから何をしていけば良いかわからない」である。
これは、漠然とした未来への不安を表している。
しかし、本来キャリアデザインの本質は未来を漠然と考えることではない。
キャリアデザインとは、「過去の自分を見つめ直し、肯定的な要素をもとに将来の自分を描き出す作業」である。
したがって、まずは過去の棚卸が必要となる。
これまで自分が大切にしてきたこと、一生懸命取り組んだこと、心から嬉しかったことや悲しかったこと、達成感を味わえた瞬間などを振り返り、そこから自分自身の価値観を抽出するのである。
自分が何を大切にしてきたかを知ることは、自分がこれから何を目指すべきかを知るヒントになる。
さらに、医療や介護の現場で培ってきた知識、技術、経験もまた、自分の武器であり、次なる挑戦へのテコとなる。
つまり、未来に挑戦するための材料は、決して遠い場所にあるのではなく、自分自身の過去の中に豊かに存在しているのである。
挑戦とは、無謀な旅立ちではない。
過去というエンジンを積み込み、情熱という燃料を注ぎ込んで進む旅路である。
そのような姿勢を持つ人材が医療・介護業界に増えていけば、いきいきと前向きに働く職員が増え、この業界は必ず変わる。
未来を切り拓く力は、自分の中に既に眠っているのである。