言語聴覚士という仕事

言語聴覚士の定義
1997年に定められた「言語聴覚士法」により定められたリハビリテーション専門職の一つである。

「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいうと定義されている。

言語聴覚士の仕事場

医療機関
医療機関の口腔外科、耳鼻科、リハビリテーション科に属している言語聴覚士が多い。

口腔機能、音声機能、脳機能などの検査と治療を行う。

高齢者の入院患者が多い病院では、誤嚥性肺炎が多いことから、管理栄養士、看護師、歯科衛生士と連携して摂食嚥下のリハビリテーションに携わることが多い。

介護老人保健施設などの高齢者施設
施設の場合、加齢や脳卒中などの影響から口腔機能が低下している高齢者が多いため、食事面において、言語聴覚士の役割が大きい。

特に食形態や歯の状態なども言語聴覚士として、評価し、治療や支援をしていく必要がある。

施設の場合、医療機関と異なり、リハビリテーションを提供する時間が短いことから、日常生活の場面を利用して支援していくことが求められる。

今後の傾向
現在、国策により、在宅で生活をする高齢者や障害をもつ方は増加している。

現在、在宅分野に就労する言語聴覚士は理学療法士、作業療法士と比較して少なく、

今後は、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションといった介護保険領域での活躍が期待されている。

言語聴覚士の数
言語聴覚士は全国的に不足しており、4割前後の医療機関が言語聴覚士の不足を感じている(下図)。

言語聴覚士の活躍の場はこれからも増えていくと予想される。


医療従事者の需給に関する検討会 第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会
資料3(平成28年8月5日)

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

「動作分析はできませんが、活動・参加は促せます」は詭弁

理学療法士の専門性は基本的動作能力の改善

作業療法士の専門性は応用的動作能力の改善

これは法律で定められていることである。

2015年度介護報酬改定にて、利用者の活動・参加の推進が強くなって以来、活動・参加に尽力するセラピストが増えている。

これは素晴らしいことであり、本来のリハビリテーションのあるべき姿である。

しかし、一方で、心身機能と活動・参加の介入のバランスが偏っているセラピストがいるのも実情である。

まずもって、理学療法士・作業療法士は基本的動作能力、応用的動作動作能力の分析ができなければ、本末転倒である。

しかし、動作分析が全くできず、利用者のポテンシャルを引き出せないセラピストが急増している(下図)。


(無断転載禁止)

動作に対する評価や治療は、活動・参加を推進する土台である。

動作分析をもろくにせず、ただ、活動・参加を促すのでは、活動・参加が心身機能を改善させることもないだろう。

動作を構成するのは各関節運動である。

そして、各関節も大関節から小関節で構成されている。

したがって、理学療法士・作業療法士は、活動・参加、そして、動作、関節運動を包括的に見れる能力が必要であり、それが他のライセンスとの差異であろう。

動作分析ができる人が活動・参加に取り組む。

活動・参加ができる人が動作分析に取り組む。

こんなことが当たり前になる時代にならなければ、セラピストに未来はない。

投稿者
高木綾一

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イラスト提供
福山真樹
理学療法士×イラストレーター

医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
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セラピストの落とし穴 内科系疾患の知識不足

急性期・回復期・生活期の全ての領域において、利用者の高齢化が進展している。

そのため、セラピストが対応しなければならない範囲が拡大している。

医療保険や介護保険においてリハビリテーション部門が必要となった原因疾患が脳卒中や大腿骨頸部骨折などの運動器疾患であっても、ほとんどの利用者が既往歴として内科系疾患を有している。

そのため、リハビリテーションの実施中に内科系疾患が原因となるトラブルが起こることがしばしばである(下図)。

関節可動域練習や筋力強化練習時の痛みの管理
立位・歩行練習時の転倒リスクの管理
などを行っている理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はいるが、平素から内科系疾患の管理を根拠をもって行っている人は少ない。


(無断転載禁止)

なぜならば、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は内科系疾患について学ぶ機会が圧倒的に不足しているためである。

卒前・卒後においても、主に脳血管疾患と運動器疾患に関する学びが多く、内科系疾患に関する学びは、特別講義などの機会に学ぶ程度である。

また、内科系疾患の管理は医師や看護師の仕事と考えている理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も多いのも否定できない。

利用者が飲んでいる薬や受診状況なども把握していない人もいる。

しかし、高齢化が進展するリハビリテーションの現場では、内科系疾患の知識不足はセラピストの落とし穴になる。

これからのセラピストは内科系疾患の知識を高める努力を怠ってはならない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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作業療法士という仕事

作業療法士の定義
1965年に定められた「理学療法士及び作業療法士法」により定められたリハビリテーション専門職の一つである。

法律上の定義は「厚生労働大臣の免許を受けて、「作業療法士」の名称を用いて、医師の指示の下に、「作業療法」を行うことを業とする者をいう。」となっている。

また、法律では『「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。 』となっている。

作業療法士の仕事場
上記の作業療法士の法律上の定義より、医師の指示を受けて作業療法を行うことが原理原則となっていることから、病院、診療所、老人保健施設などの医師が勤務しているところで働くことが一般的になっている。

介護保険分野で働く作業療法士が増えてきたのは、2010年前後からである。

特に、訪問リハビリテーションや老人保健施設に勤務する作業療法士が増加している。

作業療法士の仕事内容
作業療法士の仕事は一般的に以下の3つのステージに分けられる。

急性期
救急機能をもつ病院や大学病院などで、重症な患者に対して救急治療や濃厚な治療を行う時期である。術前・術後にリハビリテーションを開始する。病院によっては、集中治療室(ICU)でリ ハビリテーションを行うこともあり、高度な医療知識やリスク管理が求められる。作業療法士は急性期から自立した生活にむけたセルフケアや日常生活動作の獲得を支援する。

回復期
病状が落ち着き本格的に身体機能の回復と在宅や職場復帰のために環境調整を行う時期である。日常生活動作や日常生活関連動作の回復を図りつつ、住環境の調整を行うなどの取り組みを行う。在宅や職場で自立した生活が行えるように日常生活動作の指導や自助具などの使用方法についても検討する。

生活期
在宅生活や施設で生活をしている人への身体機能や活動性の維持・向上に関する支援を行う時期である。また、近年では重症な人や看取り期の人も在宅で生活をしていることから、急性期に関する知識やターミナルケアに関する知識が必要である。さらに、長い生活期では状態変化に応じた介助方法や日常生活動作に関して家族や介護者への支援も作業療法士の仕事である。 作業療法士の特徴として、以下に示す分野での就労がある。

精神科病院・デイケア
精神科作業療法を用いて、精神障害の方へリハビリテーションを提供する。個別あるいは集団療法により、症状の回復、安定を図る。また、環境整備や様々な体験を通じて、自己効力感の回復、生活技能の獲得を促進する。個別評価に基づき心理療法やレクレーションなど様々なアプローチを行う。

就業継続支援
通常の会社や企業に雇用されることが困難な障害者に対して,就労の機会を提供するとともに,就業に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業所。

作業療法士の数 理学療法士と同様に、作業療法士の数も急増している。 作業療法士人数

出典元:厚生労働省 2015年12発表 作業療法士従事者数

投稿者
高木綾一先生

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術)
関西医療大学保健医療学部 助教
関西学院大学大学院 経営戦略研究科

学術研究活動→臨床に役立つ→経営に好影響でなければ、待遇は改善しない件

セラピストの大学院進学がブームである。

また、現在は、様々な学会があり多くのセラピストが学会発表を行っている。

昔と比べて学術に取り組むセラピストの絶対数は非常に増えている。

その中で、学術をがんばっても待遇が変わらないと嘆くセラピストも多い。

特に大学病院以外の民間病院や民間事業所ではよく見られることである。

経営者の筆者に対する相談の一つに「学術活動に頑張っているセラピストの評価方法はどうしたらいいのか?」というものがある。

ようするに、「学術を頑張っているのだから組織からもっと評価されてもよいのではないか!」と訴えるセラピストがいるという事である(図)。

それでは、学術を頑張っているセラピストを組織が評価することの正当性や合理性はどこにあるのだろうか?


(無断転載禁止)

 

企業経営から考えると、企業業績や企業活動の質の向上に資するものかどうか?という判断軸が重要となる。

簡単に言えば、その学術活動は、組織にどのようなインパクトを与えたのか?が重要であるという事である。

学術活動が組織が抱える課題の解決に寄与することができればその学術活動は非常に有意義なものであり、評価の対象となる。

在院日数が短縮した
FIM利得が向上した
後方連携の質が向上した
早期離床のシステムが完成した
誤嚥性肺炎や転倒が減った
など・・・
実利に資する研究であればあるほど評価は高い。

しかし、組織の課題を決して解決することはないような学術活動・・・セラピストの極めて個人的な興味による研究、社内で議論されることない症例発表などは評価に値しないだろう。

研究だけが評価されたいのであれば、研究機関や大学病院などに就職することが望ましい。

しかし、民間病院や民間施設では実利が求められる学術活動が必要である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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イラスト提供
福山真樹
理学療法士×イラストレーター

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