整形外科外来リハビリテーションの役割は寝たきり予備群を救うことである

2019年より外来リハビリテーションでは要介護認定者が算定上限日数を超えてリハビリテーションを受けることが禁止され、算定上限日数を超えた場合は、原則、介護保険リハビリテーションに移行することになった。

そのため、外来リハビリテーションを生業の中心としている整形外科クリニックでは、ビジネスモデルの転換が必要とされている。

患者層の若返り
通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの新設
フィットネスクラブなどの運動サービスの提供
など様々な取り組みを行う整形外科クリニックが増えてきた。

しかし、本来の整形外科クリニックの役割を見失ってはいけない。

来院してくる高齢者の寝たきりの伏線となる関節痛や活動性の低下を防ぐことは整形外科クリニックの重要な役割である。

整形外科クリニックに来院してくる患者の多くが、変形性膝関節症、肩関節周囲炎を罹患している(下図)。


(無断転載禁止)

変形性膝関節症が悪化すると、立ち上がり、歩行能力が低下し、屋外の移動が減少してくる。

また、肩関節周囲炎が悪化すると、掃除、洗濯、調理などが出来なくなり、訪問介護サービスなどを利用するようになる。

すなわち、整形外科疾患は大きく活動性の低下につながる。

活動性の低下は、社会参加への頻度も低下させ、引きこもりや寝たきりを誘因する。

そのため、整形外科クリニックで外来リハビリテーションを担当するセラピストは変形性膝関節症と肩関節周囲炎に対するリハビリテーション技術を高めなければ高齢者の寝たきりを予防することはできないと言っても過言ではない。

整形外科クリニックのは様々なビジネスモデルを模索するだけでなく、本来の役割である「患者様の運動器疾患を治して早く動けるように支援すること」をまずは実現するべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

イラスト提供
福山真樹

理学療法士×イラストレーター
医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
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リハビリテーション部門管理職の皆さん、部下を守っていますか?

私は起業する前は、大阪府内の大手医療法人にて法人本部長とリハビリテーション部部長として勤務していた。

リハビリテーション部門には多くのセラピストが所属しており、セラピストは医局、看護部、介護部、その他様々な部門との連携業務も沢山担っていた。

そんな状況であれば、当然、他職種と意見が衝突し、軋轢が生じることもしばしばあり、その中には医師よりセラピストが指導されたり、叱責をされることもあった。

しかし、時に度が過ぎる指導、叱責が医師からセラピストに行われることもあった。

所謂、パワハラに近い行為と言える。

このようなことは、他の医療法人でもよく生じているのではないだろうか。

その時、リハビリテーション部門の管理職の皆さんはどのような対応をしているだろうか?

当時、私は部下のセラピストに対するパワハラが生じたとき、医局に突撃し、その医師に対して、「私の部下にパワハラをすることは許さない」と強く抗議した。

先日、そのパワハラを受けていた部下を久しぶりに会った時にこう言われた。

「あの時に、医師に強く抗議をしてくれたことでこの職場で頑張ろうと思いました。部下を守ってくれる上司の下で働けたことを誇りに思っています。」

部下は常に上司の行動を観察している。

上司は組織や部下を守るために動いているだろうか?

上司は自らの身分を守るために保身をしていないだろうか?

貴方の部下が退職を申し出た時にはもう既に遅しである。

「部下を守る」という意識の重要性を今一度認識して欲しい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学 客員准教授

誰のために事業を行っているかを見失っている医療機関・介護事業所は多い

筆者がコンサルティングをしているとこのような医療機関・介護事業所と出会う。

とにかく稼働率を上げるためにどんな利用者でも入院を受け取る

医療・介護技術が乏しいまま、難易度の高い利用者のサービスを行う

理念やビジョンは不明確だが、売り上げを上げる意思だけは明確である

このような事業所に共通しているのは、「誰のために事業をしているのか?」が全く理解できていないことである。

どんなに優れた医療機関や介護事業所でも世の中の全ての患者や利用者に対応できるわけではない。

ビジネスにおけるマーケティングの基本として「顧客ターゲットを決める」と言うものがある。

顧客ターゲットを絞ることで以下のようなメリットが生まれる。

自分たちの価値を伝えたい顧客を明確にすることで、顧客の反応が得やすくなる。

ターゲットとする顧客にニーズに答えることで自社の知識や技術などのノウハウが蓄積される。

ターゲットが明確なのでプロモーション活動が効率的に行える。

このようなメリットがあるにもかかわらず世の中には、
どような利用者でも受け入れる老人保健施設、通所介護、リハビリテーションクリニックが存在する。

このような医療機関・介護事業所は結局、自社の特徴を形成することができず、長期的なブランディングに失敗している。

ブランディングがうまくいかなければ、継続的な顧客の獲得は困難となる。

どんな利用者でもいい!という発想は今すぐに捨てるべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

 

 

PT・OT・STと看護師の連携は共通言語の理解が第一歩

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が看護師と連携をしなければならないシチュエーションは増えている。

特に、重症度の高い利用者や終末期対応が必要な利用者においては看護師との連携・協働は欠かせない。

しかし、連携・協働のハードルは高い。

当たり前であるが、看護師と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は共通の教育を受けておらず、それぞれの分野で使用する言語が異なる(下図)。

また、各職種で取得している知識や技術も異なる。

そのため、連携・協働の実現には看護師と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の双方の努力が必要である。

(無断転載禁止)

地域包括ケアシステムが伸展する社会では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はスペシャリストとして専門的な分野を追求するだけでなく、ジェネラリストとして他分野の知見を学んでいく必要がある。

ジェネラリストとして自己研鑽を積んでいなければ、イラストの事例のように看護師との実質的な連携が不可能になる局面が必ず現れる。

看護師との連携が出来ないことで最も不利益を被るのは利用者である。

地域包括ケアシステムは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の従来の在り方を大いに変節させている。

これからは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が社内研修などでも看護師や介護職などの他分野の学習をする機会を設け、看護師との共通言語を一つでも多く増やすべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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関西医療大学保健医療学部 助教

イラスト提供
福山真樹

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目先の診療報酬改定だけでは見えない将来のリハビリテーションの課題を考えることの大切さ

目先の診療報酬改定に対応することは重要である。

なぜならば、診療報酬改定は改定後の数年間の医療機関の経営に大きな影響を与えるからだ。

リハビリテーション部門や経営陣にとって、施設基準や算定項目を精査し、組織の持つ能力の範囲で最大限の診療報酬上の収入を得られるよう努力することは責務である。

しかし、目先の診療報酬改定以上に取り組まなければならいことがある。

それは、将来的に必要とされるリハビリテーションサービスを予測し、そのサービスを開発・運用することである。

将来的に必要とされるリハビリテーションサービスに取り組むことで、他医療機関のサービスと差別化することができ、質の高いリハビリテーションを行うこと ができる。

さらに将来的に診療報酬改定で評価されれば、経済的なメリットを得られるなど医療機関にとって経営上の大きなアドバンテージが手に入る。 915220ac84494934e00fca68a8790899_s では、どのようにすれば、将来的に必要とされるリハビリテーションサービスを予測できるだろうか?

まず、どの医療機関でも出来ることは、自院のリハビリテーションサービスにおける問題点を探り出し、その解決のためのソリューションを検討することであ る。

しかし、これを行うためには、洞察力の高い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が必要であるため、人材の能力が大きく影響する。

もう一つの方法は各種団体が国に要望している内容を精査することである。

各種団体は各職能集団や医療機能集団で構成されており、各分野における課題を常に集約している。

その集約した内容を国に評価してもらうために、定期的に要望書を提出している。 その内容を確認すれば、将来的に評価される可能性高いリハビリテーションサービスが予想できる。

例えば、各種団体は以下のような項目を国に要望している。

呼吸リハビリテーションや心大血管リハビリテーションで言語聴覚士によるサービスを評価して欲しい

摂食機能療法の適応疾患の拡大を行って欲しい 病棟セラピストの配置をより評価して欲しい

看護師と理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が連携して総合的な訓練を行うことを評価して欲しい

認知症に対応するために、認知症チームケアという概念を確立し、そのサービス提供を評価して欲しい

など、その他多くの要望内容が各団体より提言されている。

これらの内容を精査し、自院にとって意味のあるものに取り組むことは、先述したようなメリットがあり、大変意味のあることである。

目先の診療報酬改定は大切 しかし、その先にある診療報酬改定はもっと大切

こういった意識を理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は持たなければならない時代であることを自覚しなければならない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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関西医療大学保健医療学部 助教