診療報酬・介護報酬なんてどうでもいい まともな組織を作ることが先!

筆者は2018年度診療報酬・介護報酬改定に関して全国各地でセミナー講師の依頼をいただくことが多い。

多くの参加者は、施設基準の内容や加算の算定要件に関して関心がある。

施設基準や加算が経営に直結するため、大きな関心があるのだろう。

しかし、多くの人は施設基準や加算は手段であることを忘れている。

経営理念という目的を果たすために施設基準や加算という手段を存在することを忘れているのだ。

施設基準や加算を満たすことだけが、目的となっている事業所に共通することは質の低い人材の雇用、書類だけ揃えて監査を乗り切る、人材育成に興味がないである。

このような事業所は、診療報酬・介護報酬改定のたびに10円単位の金額に一喜一憂する。

言い換えれば、厚生労働省に自社の運命を委ねていると言える。

このような事業所は遅かれ早かれ、厚生労働省と市場に抹殺される。

在宅復帰、ADL改善、活動と参加の推進、看取りの促進などは元来崇高なものであり、簡単にできるものではない。

社会保障費が厳しくなる現在、効果的な医療や介護が求められるようになっている。

理念がない事業所は向かうべき方向性が定まっていないため、見かけ倒しのサービスを行い加算等を算定しているため、決して効果的な医療や介護サービスを提供しているとは言えない。

誤解を恐れずに言えば、診療報酬・介護報酬などどうでもよく、社会に貢献することができる組織を作れば、診療報酬・介護報酬はあとからいくらでもついてくるというものである。

施設基準や加算要件だけを追いかけるから組織がおかしくなる。

あるべき姿を追いかけた結果、施設基準や加算要件を満たすことができるのだ。

診療報酬・介護報酬の10円単位に一喜一憂するのではなく、自社の理念を実践することができる組織作りに邁進することが最も効果的な生き残り政策である。

あなたの医療機関や事業所は組織作りに邁進していますか?

それとも加算算定に邁進していますか?

介護事業所 戦国時代!マーケテイングミックスを極めよ!

介護事業所はその数が増えており、従来より顧客の獲得が難しくなっている。

特に訪問看護ステーション・通所介護は既に国の整備目標を超えており、顧客獲得の競争が激しくなっている。

顧客を獲得するためには、マーケティングが有用であるが意図的にマーケティングを実践している介護事業所は少ない。

マーケティングの基本として「マーケテイングの4p」が挙げられる。
製品(Product)
価格(Price)
場所(Place)
販促(Promotion)
を4pと呼ぶ。

それぞれのpが重要ではなく、4pをいかに関連をさせながら事業を展開するか?が重要である。

製品のコンセプトを的確に顧客に伝えるためには、価格・場所・販促を製品コンセプトに合ったものにする必要がある。

例えば、高級な鞄を、安い値段で、大手雑貨屋で売りさばき、顧客に対して販売促進をすることは、逆に高級な鞄の価値を下げることになる。

従って、4pを整合性のある組み合わせで構成することが重要である。

例えば、訪問看護ステーションの中重度者向けサービスと言う製品のマーケティングを進めるためには次のようなマーケティングミックスが重要となる。

製品(Product)    中重度者ケアの提供
価格(Price)   介護報酬で設定された価格
流通(Place)   高齢者の多い地域・在宅
販促(Promotion)  中重度者の退院調整を行っている急性期病院へ販売促進

中重度者のケアというサービスを若い人が多く住む地域を対象に行う事や、軽症ばかり扱っている病院に営業を行っても効果的な集客は困難である。

介護支援専門員や病院へやたらめったに営業に行く介護事業所があるが、そのようなやり方では、効果的な利用者の獲得は難しい。

今一度、自社の4pを見直し、効果的なマーケティングを考えてみてはいかがだろうか?

 

勝ち残りたい介護事業所は市場分析から始めよう!

介護報酬改定は益々残酷なものとなり、市場原理が作用しやすい介護業界に加速している。

簡単に言うと経営努力が乏しい、介護事業所は淘汰され、事業からの撤退を余儀なくされる時代である。

そのため、介護事業所はマーケティング活動を通じて、市場の優位性を確保する必要がある。

マーケティングの第一歩は「市場調査」となる。

自社がどの市場を狙っているかを考えることからマーケティングは始まる。

市場調査は次の3つに分類される。

①市場の性格
利用者の特徴
市場の成長性
市場の寿命

要支援の高齢者は比較的活動性が高く、自身の趣味や仕事への希望もある。
人口動態から考えると段階のジュニアが要支援者である2045年ぐらいまで要支援者に対する事業は成長すると考えられる。

②競争相手の状況
どんなライバルがいるか?
異業種からの参入はあるのか?
ライバルのサービスはどのようなものか?
ライバル社の市場戦略はどんなものか?

要支援の健康増進・介護予防ビジネスには大手A会社が参入している。A社はIT会社を子会社として持っており、インターネットを通じた介護予防支援も得意としている。スマートホンユーザーが多い50代から60代を取り込もうとする戦略を進めている。

③自社の状況
自社の規模・実績
市場における強みと弱み
自社サービスの特徴はどのようなものか?

自社は地域で軽度者向けの通所介護を4件展開しているが、すべての事業所の稼働率は70%であり、十分に顧客を獲得できていない。利用者のリピート率は高いが新規利用者の獲得が弱く、利用者との接点が不十分と考えられる。専門職による直接的な指導をサービスを強みとしているが、専門職の人材育成が追い付いていない。

まず、これら3つの項目について整理し、自社の事業が進むべき方向性を決定するための材料を揃えることがマーケティングの第一歩である。

介護事業所をつくれば、儲かる時代は完全に終了している。

経営努力=マーケティングである。

 

販売活動とマーケティングの違いがわからない介護保険事業所は潰れる

2018年度介護報酬改定が明らかになったが、あらゆる事業において軒並み基本報酬は低下している。

基本報酬分を補うためには加算の算定が推奨されているが、加算の算定より遥かに大きな課題が介護事業所には存在する。

それは、競合が増えているため、利用顧客が増えないということである。

利用顧客が増えなければ、事業所の収益は全く増えず、倒産と言う深刻な事態を迎える。

利用顧客を増やすためには、マーケティングが必要であるが多くの介護事業所はマーケティングを単なる販売活動と勘違いしている。

「より沢山売る」ことを考えてしまう経営者が圧倒的に多いため、マーケティングとは「販売活動」であるとという考えが広がっている。

しかし、販売はすでに出来上がったものを売り込む活動であるため、その商品を買ってくれる人は限定的な人である。

より多くの利用顧客に満足してもらい、それによって会社の収益を向上させるためには「売る」という発想ではなく、「売れる」仕組みを作る視点が重要だ。

そのためには、
市場調査
製品やサービス開発
価格設定
流通方法
販売促進
などを一貫して考えることが重要である。

例えば、良いサービスはしているがホームページがみすぼらしいため、事業所の良さが伝わらない、逆にホームページは立派だがスタッフの能力が低く、ホームページの内容が虚偽であるなどはマーケティングができないないと言える。

これまでの介護事業所がやっていることは、介護支援専門員や医療機関への営業行為やチラシの配布が多いが、これらはただの販売促進であり、もはやギャンブルに近い行為である。

あなたの介護事業所はマーケティング活動を一貫して行い、狙った利用顧客を獲得できているか?

それが出来ていなければ、基本報酬が下がる今後の介護分野での生き残りは極めて厳しいと考えるべきである。

 

急成長したユニコーン型リハビリテーション部門は、早晩、崩壊へ向かう

ユニコーン企業とは、急速に事業が拡大し、従業員の増大とともに売上高が急増している企業のことを言う。

日本ではDDM.com、メルカリ、ツタヤ、楽天などが代表例である。

急成長企業であることから、イノベーティブな会社として認識されることが一般的で、素晴らしい企業であるとの印象が強い。

しかし、ユニコーン企業の大企業は早晩厳しい局面が待っている。

なぜならば、大企業は最大30年程度しか寿命がないことがわかっている(図1)。

中小企業白書 2011 p187

つまりユニコーン企業のように急成長し、従業員をたくさん抱える大企業になれば、いつしか企業としての寿命を迎えることになる。

リハビリテーション部門にもユニコーン型の発展を遂げたところも多い。

セラピストが50人以上所属するリハビリテーション部門は今や珍しくない。

そのようなリハビリテーション部門は、業務内容の硬直化、人材が育たない、環境変化についていけない、マニュアル重視で発想が乏しい、働く目的を失った従業員が多いなどの問題を抱えていることが多い。

なぜ、このようなことになるのだろうか?

それは偏に大企業病にかかっているからである。

セラピストの数が多くなり、組織が分化し、管理しなければならない範囲が増加すると沢山のルールが生まれてくる。

つまり、ルールを重視する「官僚主義」が拡大することになる。

組織の人数が増えてくると、リーダーの思い通りの運営は難しくなってくる。

コミュケーションも難しくなり、採用数が増えるので能力の低い人も組織に入ってくる。

そのような、状況では「ルール」を用いて人や組織を管理することが効率的である。

仕事の進め方
報告の仕方
インシデントへの対応
などのルールが設定される。

このようなルールは、強制的に人や組織を動かすことには有効であるが、働く人の創造性ややる気を阻害することにもなる。

これが大企業病を発祥させる原因である。

さらに、リハビリテーション部門の難しい課題は、従業員が職人気質のセラピストであるということである。

職人気質はルールを嫌い、ルールを無視する傾向がある。

そのため、官僚主義を入れても、それに従わない人も一定数いるため、官僚主義も通じにくい。

大企業病と職人気質が入り混じると言ったカオスがユニコーン型リハビリテーション部門には蔓延っている。

ユニコーン型リハビリテーション部門の方は、組織寿命を保つためにマネジメントへの一層の努力が必要とされる。