一生安泰に食べていける職種など、もはや存在しない。
医師であっても、能力が低ければ年収1,000万円に届かない時代である。
一方、看護師長として教育・マネジメントに長け、適度に管理当直を担えば、年収1,000万円を超えることも可能である。
理学療法士がいくら研鑽を積み、認定理学療法士や博士号を取得し、役職に就いたとしても、年収600万円程度が上限であるのが現実である。
その一方で、高度な専門性がなくとも訪問看護ステーションを開設し、優れたコミュニケーション能力と営業力で安定した利用者を確保し、利益を出せば、年収1,500万円を超えることも珍しくない。
今日では、たとえダブルライセンスを取得したとしても、当該職種が既にレッドオーシャンにあるという現実からは逃れられない。
人口減少が進む日本において、すべての職種が今後100年にわたって数を減らしていくことは明白であり、全業界が競争過多の状況にある。
一時的に景気や国策によって時給単価が上がる職種もあるが、それが10年続く保証はなく、その上昇幅も将来的な資産形成に大きく寄与するものではない。
今後、多くの職種は最低賃金を基盤に再構築されていくであろう。
すなわち、日本においては、老後の資産形成や経済的余裕が約束された職業など、もはや存在しないということだ。
現に、医師や弁護士ですら十分な収入を得られず、食べていけない者が多数いる。
ダブルライセンス、資格偏重、学術偏重、夢想的な語りでは、社会への具体的な貢献が伴わない限り、収入の増加にはつながらない。
その一方で、どれほど平凡なスペックの人材であっても、社会に有益なアウトプットを継続できれば、年収は確実に上昇する。
もはや「絶対的に優位な職種」は存在しない。
しかし、「絶対的に優位な働き方」は、たしかに存在するのである。
筆者
高木綾一
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。