介護老人保健施設は回復期リハ病棟・地域包括ケア病棟と同様の在宅復帰施設である

診療報酬改定・介護報酬改定により、入院医療から在宅医療への流れが加速している。

急性期病棟だけでなく、療養病棟もダウンサイジングが行われ、入院医療依存から脱却するための施策が多く導入されている。

このような状況では、在宅復帰を中心機能とした施設の役割が重要となってくる。

よって、回復期リハビリテーション病棟のアウトカム要件強化と地域包括ケア病棟の導入推進は当然の流れである。

介護保険分野においても在宅復帰は重要なキーワードとなる。

介護保険分野で在宅復帰機能を有する施設として、介護老人保健施設が挙げられる。

介護老人保健施設は、本来リハビリテーション施設としての意義を有している(下図)が、リハビリテーションや在宅復帰の機能を高めた老人保健施設は少なく、慢性期の長期療養施設化している現状がある。

老人保健施設

そこで国は、平成24年度介護報酬改定にて「従来型」と「在宅復帰強化型」の2つに介護老人保健施設を区分した。

当然、「従来型」より「在宅復帰強化型」の方が、介護報酬は高く設定されている。

国の在宅シフトを考えると、介護老人保健施設も在宅復帰機能の強化が一層激しくなると予想される。

しかしながら、介護老人保健施設は、歴史的な背景から在宅復帰機能を向上させていくためのハードルが高い。

介護老人保健施設の課題として
在宅復帰施設としての認識を持たない経営者や従業員が多いこと
長期入所利用者で稼働率を維持している施設が多いこと
施設ケアマネが在宅復帰に熱心ではない
セラピストが在宅復帰や在宅生活を目指したリハビリテーションを提供できていない
病院と比較して熱心な医師が務めていない
などが存在する。

課題は山積であるが、これらの課題を乗り越えていく気概がなければ2025年以降、介護老人保健施設としての役割を果たすことができず、急激な収益悪化が予想される。

従来型の介護老人保健施設に残された時間は少ない。

在宅復帰強化型を目指さない場合は、どのような形で施設経営を維持していくかについて真剣に検討しなければらない。

2025年までの砂時計は止まらない。

多くのPT・OT・STが罹患している「努力すれば報われる症候群」

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はまじめな人が多い。

患者さんのためにストイックに勉強する。

毎月、様々な参考書を購入する。

学会発表に熱心に取り組む。

もちろん、20万人近くいる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の中には、何の危機意識もなく、何の努力もせずにテキトーに仕事をしている人も多い。

しかし、一方でかなりまじめな人も多く、「本当によく頑張っているなぁ」と感心するセラピストも多い。

だが、努力しているセラピストほど、罹患している陥りやすい症候群がある。

それは、「努力すれば報われる症候群」である。

努力していれば、いつか給料が上がる
努力していれば、いつか上司に認められる
努力していれば、いつか良い職場に行くことができる
努力していれば、なんとかなる

という思考に陥っているセラピストが多い。

しかし、努力すれば成功するという法則はない。

もし、努力すれば成功するのであれば日本人は成功者に溢れている。

成功するためには、「努力」と「運」が必要である。

「運」がなければ、どれほど努力しても、努力したという充実感だけが残り、実利は何も得られない。

では、「運」とは何か?

「運」とは、自分を成功に導いてくれる可能性のある出来事や人物との遭遇である。

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努力をして自分のスペックを高いレベルに仕上げた者が、自分を成功のステージに導いてくれる機会を得た時に、初めて成功の可能性をつかむのである。

成功の可能性は、自分を成功のステージに導いてくれる機会の数に正比例して高くなっていく。

すなわち、自分一人で地道に努力をしていても成功はしない。

成功のための言動や方法論は、決して誰も教えてくれない。

成功している理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ですら教えてくれない。

なぜかというと、社会や会社はあなたに成功をしてほしくないからである。

社会や会社は、本当に大切なことは教えてくれない。

一生懸命に努力をしても報われていないセラピストは、今すぐに自分を成功に導いてくれる可能性のある出来事や人物との出会いの頻度を高めることをお勧めする。

 

三流リハビリ部門・看護部門・介護部門によくある人事と切り離された教育は戯言である

教育と人事のプロセスは一つのことを成し遂げるために、存在している。

それは、「法人の理念を実行できる人材を輩出する」ことである。

教育というのは、様々な分野に関しての知識と経験を教授し、一人の専門職として医療や介護の現場で、理念に沿って自立して行動できるように働きかけるものである。

教育は、医療・介護事業において最も重要な資源である人材をより有効な資源に変化させるための最強のツールである。

しかし、その最強のツールが最弱のツールに変化することがある。

それは、教育と人事が切り離されている場合で生じる。

人事は、企業や組織における採用活動、昇進、出向、人事制度運用、報酬・福利厚生、労務を行う業務である。

採用は、理念や組織の方針に共感した人材を採用する最大のチャンスである。

採用機能が弱い事業所では、理念や方針に共感していない人が沢山入社している。

理念や方針に共感していない人をいくら濃厚に教育したところで、法人の理念を実行する人材にはならない。

どんな人でも採用してから、教育すれば何とかなるではないの?と多くの方から声が聞こえてくるが、それは戯言である。

お金儲けが目的の事業所
離職率が高い事業所
理念の本質が理解できない経営者が運営している事業所

このような事業所では、採用機能が脆弱になっており、組織の理念も方針が完全に形骸化し、理念に適合しないどうしようもない人材が多く事業所内で働いていることが多い。

昇進は、理念を実現するために適材適所に有能な人材を配置することである。

しかし、昇進をくだらない判断で行っている事業所も多い。

前任者が辞めたから、この人を昇進させよう
数字責任を負わせたいから、役職者を設けよう
指示命令系統を明確にしたいので誰でもよいから役職者にしよう

このような事業所では、管理職は使い捨てであり、会社の歯車としてだけ動くことが要求される。

三流組織

世の中の三流医療・介護事業所では、人事と教育は切り離されて運用されている。

どれだけ教育を充実させても、人事機能が乏しければ教育の効果は表れない。

しかし、人事と教育が切り離されている三流医療・介護事業所は、人が育たないのは現場の教育が悪いからだと現場に責任を問う。

人事と教育は、統合されたものでなければならない。

一体的な採用・教育・昇進の取り組みが機能する医療・介護事業所は、二流、一流の組織になることができる。

ぜひ、リハビリテーション部門、看護部門、介護部門は教育だけでなく、どうか採用と昇進に関する人事権も掌握していただきたい。

採用と昇進の人事権を移譲してくれない法人や会社であるならば、もう、それ以上の発展はなく、永遠に三流の医療・介護事業所になることを覚悟しなければならない。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護士・看護師にも作品がある

給料が安い
待遇が悪い
将来が不安だ
上司が悪い
仕事が多い

医療・介護業界でよく聞く愚痴である。

しかし、愚痴は愚痴である。

それ以上の意味もなければ、なんの解決への推進力を持たない。

愚痴を言う暇があれば、自分の作品を作るほうがよっぽど健全だ。

こんなことを言うと、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・薬剤師・介護士などの医療・介護従事者にどんな作品が作れるのだ?と声が聞こえてくる

医療・介護従事者にとって、最高のセルフマーケティングであり、最良のブランディングは「自分自身によって成し遂げた仕事の成果」である。

すなわち、「この仕事は自分の作品です」というものをどれぐらい積み重ねていくことができるか?がセルフマーケティングやブランディングでは重要となる。

私が提案したポジショニングでこの患者の褥瘡は改善しました
私のトランスファーを用いればこの利用者は個浴に入れます
私は脳卒中の早期離床に関する新しい知見を論文にしました
私は多くの優秀や人材の獲得と教育を行い部門を拡大してきました
私は日々の臨床での工夫を常に整理し、インターネットを通じて発信しています
私は栄養状態が悪い患者を早期に抽出し、他職種と連携をしています
私は自分の考えを広げるために専門誌へ定期的に投稿しています

これらのことは、本人の努力なくしては成し遂げられない事柄ばかりである。

まさに、努力の賜物であり、作品である。

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作品のメリットは、その作品の作者が周囲に認知されやすいことである。

作品の力 イコール 本人の力 と組織や周囲から認識される。

このような作品がない人たちが、冒頭で述べているような愚痴を言っていてもなんの説得力もない。

むしろ、「私には作品はありませんが、周りで生じる事柄に関しては不満です」というマイナスなイメージしか周囲には与えないだろう。

英語で作品は Work
英語で仕事は Work

今こそ、Work Shift が必要である。

 

 

そもそも、通所リハビリテーションは理学療法・作業療法を提供する施設であると定義づけられている

2015年度介護報酬改定では、通所リハビリテーションにおける心身機能・活動・参加のアプローチが注目された。

また、2016年度診療報酬改定では、要介護保険被保険者の維持期リハビリテーションの通所リハビリテーションへの強い誘導策が導入された。

2018年度診療報酬・介護報酬のダブル改定では、通所リハビリテーションと通所介護の役割や機能が明確化され、通所リハビリテーションの在り方は大きく変化が求められる。

しかし、介護保険法により「通所リハビリテーション」とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、介護老人保健施設、病院、診療所その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、当該施設において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うこと、と定められている。

通所リハビリテーションは、理学療法、作業療法を提供する施設であると明確に定義されているのである。

理学療法は基本的動作能力の改善
作業療法は応用的動作能力の改善
を医学的・科学的に行うものである。

よって、介護保険法により、通所リハビリテーションは、基本的動作能力や応用的動作能力を医学的・科学的に改善する施設であると定義されていると言える。

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しかし、実際の通所リハビリテーションでは
1)セラピストの数が足りず十分な個別リハビリテーションが提供できない
2)動作分析に基づかない運動療法が漫然と繰り返されている
3)アルバイトのセラピストを中心に個別リハビリテーションや自主トレーニングの指導を行っているため、施設としての理念や方向性を共有できない
4)通所リハビリテーションを副業的な立ち位置で経営している医療機関が多く、打算的な経営をしている
などの問題が横行している。

よって、介護保険法が定義する通所リハビリテーションの姿には到底なっていない。

通所リハビリテーションは、今後、急増していく要介護被保険者に対する本格的なリハビリテーション施設としての役割が期待される。

したがって、今後の通所リハビリテーションでは、介護保険法の定義に原点回帰が必要であり、基本動作が診れる理学療法士、応用的動作が診れる作業療法士が活躍が重要である。

なんとなく、活動を促す
なんとなく、参加を促す
のではなく
機能をあげて活動と参加を改善させる
活動と参加を通じて機能を改善させる

こんな視点をもつ理学療法士・作業療法士がいる通所リハビリテーションは国が求める心身機能・活動・参加にバランスよく働きかけることができる施設になるだろう。