将来の希望が持てない医療機関・介護事業所の職場は、いずれ崩壊する

みなさんの職場には将来の希望があるだろうか?
希望とは「将来の明るい見通しを指して用いる言葉」である。
将来の希望の持てない職場は恐ろしい現象が生まれる。

将来の希望が持てない職場では
有能な社員が辞めていく
そして
組織や社会への社会貢献や自身のキャリアアップなどを考えない社畜キャラが残っていく

社畜とは、会社に飼い慣らされてしまい自分の意思と良心を放棄し奴隷(家畜)と化したサラリーマンの状態を揶揄したものである(ウィキペディア)。

ではなぜ、職場には将来の希望が必要なのだろうか?
それには、動機付け理論の一つである期待理論が関係する。
期待理論とは「どこまで努力をすればよいかが明確になっており、さらに達成した目標の成果が魅力的であれば、モチベーションが高まり、目標達成の可能性が高くなるという理論」である。

現在、医療・介護情勢は混沌としている。
急性期・回復期・生活期のリハビリテーションにおいても、求められる能力や成果が急激に変化している。そのような状況では、医療機関や介護事業所は自社のもつリハビリテーションサービスに関する課題を解決してくれるモチベーションの高い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を必要としている。

しかし、理念の形骸化、人事制度の不備、上司との人間関係の悪さ、組織の風通しの悪さが存在する職場では、「どのような努力をどれぐらいすれば、どれぐらい魅力的な評価や報酬が得られるかが、わからない」ことが多い。

期待理論に従えば、そのような希望の持てない職場では、従業員のモチベーションは向上しない。従業員のモチベーションが上がらなければ、医療機関や介護事業所が抱える経営的課題を解決することができず、最悪、経営が破綻する。

将来の希望の持てる職場を作ることは、まさに管理職の仕事である。

この職場では、このような努力を、これぐらいの量を行い、これぐらいの目標を達成すれば、あなたの人生にとってこれぐらいの成果があるということを部下や同僚に明示することが管理者の仕事である。

そういった導きができない人は、これからの時代の管理者には不適当である。

貴方の職場には将来の希望があるか?
貴方は部下に将来の希望を与えているか?

 

回復期リハビリテーション病棟9単位の厳格化が及ぼす影響はデ・カ・イ。

2015年12月2日に中央社会保障医療協議会(中医協)にてリハビリテーションの個別事項に関する協議が行われた。リハビリテーション分野に関して、厳しい意見が多く出たが、とりわけ「回復期リハビリテーション病棟の9単位取得悪用論」が注目された(図1)。

2015年12月2日中医協発表資料図1 2015年 中央社会保険医療協議会資料

一言で言うと、9単位の必要性が疑わしい症例に9単位のリハビリテーションを提供している、9単位と6単位以下のリハビリテーションを比較すると、ADLの変化があまり変わらない病棟も多い・・・。とのことである。よって、次期診療報酬改定では9単位を厳格化し、6単位を基本とするとの議論が進んでいる。

2006年に9単位が緩和された時、脳卒中患者への一日3時間のリハビリテーションが効果的であるとの論文やデータが提示された。回復期リハビリテーション病棟では、ADLの回復をいち早く促すことがリハビリテーション医療の役割であると定められた。
しかし、時は過ぎ、日本経済の低迷、社会保障費の増大、少子化の改善の見込みがない状況が継続し、財源確保の目処が立たなくなると、9単位取得に対する懐疑的な意見ができた。

今回の中医協の議論は、9単位を有効に活用するための制度設計を考えるのではなく、9単位の不要論や悪用論が目立つ。つまり、エビデンスが確保されている治療法であっても、財源の確保や医療の効率性が議論の優先順位として高くなると、その治療法は採用されることはないということである。

今後、回復期リハビリテーション病棟で9単位が認められず、6単位が上限になった場合、急性期や慢性期における取得単位数に大きな影響を及ぼすと考えられる。回復期リハビリテーション病棟は文字通り、最大限の機能回復を図るリハビリテーション医療を提供する病棟である。その病棟が最大6単位ということになると、他の病棟が6単位を標準的に算定できる可能性は低い。

実は、リハビリテーション提供単位の削減に関しては、密かに多くの制度設計がなされている。
急性期病棟にはADL維持向上体制加算というリハビリテーションが包括された加算
慢性期病棟には標準算定日数を超えた人が入院しているため、月13単位の対象者が多い
2014年度からは地域包括ケア病棟が新設され、2単位が標準となっている。

これらの背景を考えると急性期、慢性期において現状認められている6単位が、今後厳格化される可能性は極めて高い。診療報酬で単位数を限定しなくても、レセプトの査定で一律に厳格化するなどの動きが今後は考えられる。つまり、回復期リハビリテーショ病棟の9単位の厳格化は他の病棟におけるリハビリテーション医療の萎縮につながる可能性は高い。

回復期リハビリテーションの9単位をどのように運用していくのかについてリハビリテーション業界は真摯に議論し、9単位の制度を維持する方向性も探るべきである。それが、他の病棟におけるリハビリテーションの萎縮医療を防ぐことになる。

組織は目的を達成するために存在する 

組織は目的を達成するために存在する。
目的がなく集まっている集団は単なる群集である。
群集には共通の目的がないので、各人が自己の目的のために行動する。
したがって、永遠に組織の目的が達成されることはない。

今の医療・介護業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。社会保障費が増大し、人口が減少が著しい2050年までは、医療・介護業界に求められる社会的使命は質と量ともに増していくばかりである。
社会から求められる使命に応えることができなければ、組織は社会に潰され、淘汰されていく。

在宅医療の推進、認知症への対応、急性期病院の機能強化、リハビリテーションの社会化、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の多様な職域での活躍、要介護者の生活の質の向上など多くの社会的な課題を解決することが、組織には求められている。

しかし、今の医療・介護従事者に社会的課題の解決や社会的使命を意識して働いている人がどれほどいるだろうか?

自身の給料や自己満足の充足感のみを得るために働いている人が多くはないか?
今の時代、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師などの医療・介護関係職種は国の規制緩和により量産される時代である。
量産により、養成校偏差値の低下、教育の質の低下、卒業生の能力の標準偏差増大等が生じることは容易に想像できる。

能力が低い、あるいは、社会的使命を理解していない医療・介護関係職種が増えれば増えるほど、社会問題は解決されずに社会保障費だけが増大していくという負のスパイラルが繰り返される。

組織は目的を達成するために存在する。
あらゆる社内外の活動はそのことを達成するために存在する。
今一度、この原点に立ち返り、組織を運営しなければ、今から10年以内にその組織は淘汰される可能性が高い。

経営・運営の基本はトップダウン その先にボトムアップがある

経営・運営は責任ある立場の人の意志によって行われる。
その意志とは理念・ビジョン・志である。
その理念・ビジョン・志を組織というインターフェースを通じて社会において実現することが経営であり、運営である。

従業員満足や従業員の働きやすさが最近の経営論や労働法制では注目されている。
確かに、それらの要素は重要であり、経営や運営において軽視することはできない。

しかし、ここに大きな落とし穴がある。
従業員満足や働きやすさを実現させるために従業員からの意見や要求を集めるボトムアップを行うことで、様々な意見や価値観が顕在化し、その後の経営や運営が難しくなるという負のスパイラルに陥る組織が多い。

本来、組織とは目的を持った集団である。
目的を達成するために集められた人で構成するのが組織である。
従業員も目的を達成するために自らの意思で集っているのが組織である。
つまり、経営者、運営者、従業員は全員同じ目的を持っているのが組織である。

同じ目的を持っている組織のボトムアップは負のスパイラルに落ち込むことはない。
そのような組織のボトムアップでは目的を達成するために必要な意見や提案が下から上がってくる可能性が高い。

しかし、同じ目的を持っていない従業員で構成されている組織でボトムアップを行うとどうなろうだろうか?
組織の目的など気にせずに、自分のやりたいことや価値観について言及する可能性が高い。あるいは、不満を持っている従業員は組織を転覆させてやろうと思う人もいるかも知れない。

理念やビジョンは組織にとって、最重要の経営資源である。
この経営資源を生かすも殺すも、経営者、管理者からの情熱的なトップダウンである。
情熱的なトップダウンに共感してくれる仲間を一人も多く採用し、育てていくことこそ、組織の本質である。
トップダウン経営か?ボトムアップ経営か?という質問は愚問である。
なぜならば、「トップダウン&ボトムアップ」でなければ、健全に経営や運営はできないからだ。

介護報酬、診療報酬改定という時代の変化が定期的に訪れる医療・介護業界において、ボトムアップのみの経営や運営は成り立たない。

今こそ、「トップダウン&ボトムアップ」を意識する時である。

2016年度診療報酬改定の動向 地域医療構想が大きな原則論を作り上げる

2016年度診療報酬改定の議論が本格化している。

2015年10月21日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、次期診療報酬改定に関して以下の方針が確認された。

改定の狙い
1)患者の状態に応じた評価
2)チーム医療の推進
3)勤務環境の改善
4)診療所などの主治医機能(かかりつけ医機能)の確保
5)退院支援
6)医療介護連携
7)医歯薬連携
8)大病院の専門的な外来機能の確保

充実すべき項目
1)緩和ケアを含む室の高いがん医療
2)「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療
3)難病患者への適切な医療
4)救急、小児、周産期医療

効率化・適正化項目
1)後発医薬品の使用促進・価格適正化
2)長期収載品の評価の仕組みの検討
3)残薬や多剤・重複投薬を減らすための取り組み
4)早期の在宅復帰の推進▽重症化予防の取り組み

2016年度改定は2018年度診療報酬・介護報酬のダブル改定に向けた布石であり、2018年度診療報酬改定に対応するためにも重要な改訂であると言える。この改定に乗り遅れた場合、2018年度改定では経営的な致命傷を負う可能性が高い。

特に、改定の狙いである1)~8)に対して既存の医療機関が取り組みを怠った場合、2018年度以降取り返しのつかない状態になる。
1)~8)の項目は2000年当初より進めてきた医療機関の機能分化・連携政策がブラッシュアップされている項目であり、これらの項目を基準として医療機関の淘汰が行われる。

1)患者の状態に応じた評価は、改定の一丁目一番地であり2025年問題や地域包括ケアを推進するために、厚生労働省も財務省も何がなんでも実現をしたい項目である。
各ステージで診るべき患者を明確し、圧倒的多数の患者を慢性期医療・在宅医療・在宅介護で対応したいという思惑があり、この考えを推進するために様々な原則や施策が検討されている。

現在の診療報酬改定の原則の一つとして急浮上しているのが地域医療構想である。
地域医療構想は二次医療域で将来必要となるベット数を定めて、それをもとに病床を削減、もしくは増加させるものである。ただし、日本の多くの地域は病床過剰と判断されており、基本的には削減が目的とされた政策である。
削減に向けた議論をするためには、各医療機能を定義する必要があり、そのひとつの基準として、患者一人あたりに必要とされる医療費が検討されている(図1)。
一人あたり医療費図1 医療機能ごとの境界を規定する医療費
※入院基本料とリハビリテーション料は除外されている
厚生労働省資料

つまり、高度急性期は一日3000点以上、急性期は600点以上、回復期は225点以上、在宅等は225点未満の医療費が必要な患者(入院基本料・リハビリテーション料は除く)を診るべきであるという定義である。

この定義に基づくと、急性期病床、療養病床、在宅医療に関して課題が浮き彫りになってくる。

日本は急性期病床が過剰であり、多くの急性期病床が高度な急性期患者に対応しておらず、回復期や慢性期に近い患者の対応を行っている現状がある。国による病床規制が明確に行われず、民間医療法人が多いことが、機能不全に陥った急性期病床を多く生み出したと言える。
今後、急性期機能を保持するためには、一日当り3000点、600点を生み出せるマーケティング活動、医療従事者確保、退院先確保、救急機能確保などが重要であり、これらの要素を満たせなければ、急性期機能を諦めることになる。

療養病床は2017年度末に、介護療養病床と看護職員、看護補助者25:1の医療療養病床が廃止される。つまり、今後は20:1の医療療養病床が標準的な施設基準となる。
医療療養病床が「医療療養」として意義をもつためには、「医療」で対応するべき患者を診ているかという視点が重要になってくる。
現在、医療区分に関する見直しが検討されており、2016年度改定では医療区分の厳格化が行われる予定である。より重症で医療必要度の高い患者すなわち、医療区分2.3の患者が入院していなければ、診療報酬上不利になる可能性が高い。とくに、一日あたりの医療費用が225点未満の患者が多く入院している療養病床は、在宅医療等と同じステージと見なされ、著しく入院基本料が減額されると予想される。

在宅医療に関しては、一日当り225点未満の医療費の患者が多い。しかしながら、在宅医療は軽症から重症な患者が幅広く存在しており、診療上、必要な手間や対応などが異なる(図2.図3)。これらの観点から、「患者の疾患・状態に応じた評価のあり方と、診療頻度に応じた評価のあり方を、どう 考えるか」について議論が行われている。次期改定では「継続的な医学管理が必要な処置」(人工呼吸器の使用、悪性腫瘍)、「長期に渡る療養が必要な疾病」(スモン、悪性腫瘍)などについて、診療報酬上、評価される可能性が高い。また、今後は訪問診療だけでなく、訪問看護、訪問リハビリテーションに関しても重度化評価が進んでいくと考えられる。

診療区分

図2 訪問診療対象者の医療区分
医療区分1が4割を占める
中央社会保険医療協議会 総会資料 平成27年5月27日
訪問診療 区分図 3 訪問診療の医療行為について
中央社会保険医療協議会 総会資料 平成27年5月27日