医療チームはあるが、チーム医療はない日本の医療機関

日本には医療チームは沢山あるが、チーム医療の実践は乏しい。

これは、医療マネジメントの世界ではよく聞かれる言葉である。

NSTチーム・呼吸ケアチーム・褥瘡対策チーム・感染対策チーム・医療安全チーム・退院調整チームなど・・・・・多くの「チーム」が医療機関には存在している。

医療チームの目的は、チーム医療を行うことである。

しかし、実際は、チームの活動が形骸化しているケースが多い。

医師が参加しない、形だけの集まりで何も決まらない、何らかの活動は行うが、その反省や振り返りはしない、形式的に書類だけを作って情報を共有するだけ・・・・という状況に陥っている。

多くの医療機関の医療チームは、診療報酬上の規定や病院機能評価機構などの第三者評価に従って、設置しているというのが実情であろう。

では、なぜチーム医療の実践が難しいのだろうか?

筆者は2つの大きな問題があると考える。

一つ目の問題は、医局・看護部・リハビリテーション部・薬剤部・検査部・事務部などのパワーバランスが偏在しており、お互いの部門が相互依存の関係になっていないことである。

一般的には、医局・看護部のパワーが強く、リハビリテーション部や検査部などのチーム医療への参画が阻害されているケースが多い。

医局・看護部のパワーが強いことは、裏を返せばリハビリテーション部や検査部が院内での立ち位置を十分に獲得できてないということである。

二つ目の問題は、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師・管理栄養士などの専門職が各専門職間で共有できる知識や経験を持ち合わせていないため、チーム医療遂行のための共通言語が乏しいということである。

各専門職の専門用語や診療に対する思想の違いが、チーム医療を阻害している。

例えば、看護師の考えるリスク管理と理学療法士の考えるリスク管理は思想レベルで異なることが多い。

看護師はより病状の改善に資するリスク管理を目指すが、理学療法士はより廃用症候群を防止するリスク管理を目指す傾向がある。

こういった思想の違いは、お互いの職種間の情報連携を阻害する要因になる。
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以上のことから、
チーム医療を実践するためには、お互いの仕事の内容を知ることが重要であると言える。

病院の在院日数短縮や医療の在宅シフトが進む昨今、各専門職の連携はますます重要となる。

このような時代では、お互いの職種の仕事や知識について理解したハイブリッドな医療・介護従事者が活躍することは間違いない。

付き合う人でキャリアは変わる

自分より能力の高い人と交流が少ない人は多い。

正確に言うと、自分より能力が高い人との交流がしたくない人が多い。

なぜならば、
自分より能力の高い人と交流すれば、その人との能力の差を感じ、その能力の差が、自分自身を傷つけることになるからだ。

よって、傷つくことを恐れて、自分より能力の低い人との交流を選ぶ人が多い。

自分より能力の低い人と交流すれば、自分が傷つくことはないし、時に、相手から認められ、優越感を感じることもある。

しかし、そのような環境に身を置くと、将来のキャリアにおいて取り返しのつかない事態を招く。

これからの社会においては、自分の能力を高めていくことは、益々、重要となってくる。

日本の終身雇用制は完全に崩壊しており、働く人の価値の高低が雇用の有無を決める最大の条件となってきた。

しかし、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師・薬剤師等の医療従事者は、自分が提供できる価値よりも、国家資格を振りかざして働いている人が多い。

そのような人は、資格に依存したキャリアを歩んでいる。

もし、近い将来、資格だけでなく、その人の価値に重きが置かれる時代になったとすれば、資格を振りかざした人たちは労働市場から総スカンを喰らうだろう。

たしかに、自分より能力の低い人たちと交流を持つことは、精神的には楽である。

しかし、そのようなことをしていると、全く自分の能力の棚卸ができず、能力の向上に必要な「能力の現状把握」が困難となる。

最も悲惨な状況は、自分の現状把握もできていないことに加えて、「自分はしっかりと価値提供ができている」と勘違いしまうことである。

これは、自分の能力の比較対象が自分より能力の低い人となっているために、生じる現象である。

自分の能力を伸ばしていくための、比較対象は、「自分より能力の高い人」や、「昨日までの自分」でなければならない。

付き合う人で人生は変わる。

キャリア開発をする上で、付き合う人は極めて重要である。

 

 

 

 

PT・OT・STの古典的ロールモデルは、すでに崩壊した

2025年問題が医療・介護業界に様々な風を流している。

ネガティブな風もあれば、ポジティブな風もある。

このような風が吹く中、今日の我が国のセラピスト業界におけるキャリア開発上の大きな問題点として、「ロールモデルの不明瞭」が顕在化している。

皆さんは、現在の
理学療法士のロールモデル
作業療法士のロールモデル
言語聴覚士のロールモデル
をそれぞれ答えることができるだろうか?

20年ぐらい前までなら
卓越したテクニックを持つ技師や養成校の教員がロールモデルとして存在していた。

確かに、当時のロールモデルは、セラピストが憧れる技術や知識を有しており、かつ経済的にも成功していた。

しかし、今はどうだろうか?

誤解を恐れずに言うと、
今の時代、卓越したテクニックを持つ技師や養成校の教員に強い訴求力があるだろうか?

時代は変わった。

社会保障費は圧縮され、セラピストの給料は減り、地域包括ケアシステムが推進される。
養成校は乱立し、学生の偏差値も拡大している。
急性期病床は削減され、慢性期や在宅医療が推進される。
働く人間の価値観も多様化を極め、ダイバーシティーも進んでいる。

これらの変化に伴い、セラピストのロールモデルが不明確になっている。

もはや、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の古典的なロールモデルはもはや崩壊しているといっても過言ではない。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の市場における役割も激変している。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士への期待や市場価値が拡大している。

この拡大は、古典的なロールモデルをより不明確にしている。

ロールモデルが不明瞭な時代では
自分自身の価値観や社会が求める能力を反映したロールモデルに一歩でも近づいていくために、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自らのキャリアを自主的に開発していく必要がある。

このような時代では、自主的にキャリア開発を行う価値観やモチベーションがないセラピストは、時代の流れに逆行したロールモデルを追及したり、あるいは、ロールモデルの追求自体を止めてしまい、社会的な価値の低いセラピストになってしまう可能性がある。

2025年問題は、言い換えると、2025年セラピスト問題である。

 

急性期病棟×地域包括ケア病棟=地域密着型在宅復帰支援強化病院

 

2014年度診療報酬改定では、地域包括ケア病棟が新設された。

疾患の条件なく急性期病棟や在宅からの患者を受け入れ、在宅復帰を目指すという回復期リハビリテーション病棟とは異なる機能を有する病棟である。

2016年度診療報酬改定では、地域包括ケア病棟において手術が出来高算定可能となり、その病棟運営のハードルが緩和された。

国は、地域包括ケア病棟を推進し、急性期の在院日数短縮、過剰医療の抑制、在宅患者の後方支援を促進したいと考えている。

ここに来て、急性期病棟(特に7:1・10:1)と地域包括ケア病棟の両方の病棟を運営する病院が増えている。

特に平均在院日数に関しては7:1病棟には18日、10:1病棟には21日という条件があり、多くの病院が退院調整には神経を尖らせている。

地域包括ケア病棟は最大60日まで入院基本料を算定することができる。

よって、入院時に入院が長期間となることが予測される症例では、優先的に地域包括ケア病棟にて入院治療を行うことで、急性期病棟の在院日数短縮を図ることができる。

また、2016年度改定で、地域包括ケア病棟にて手術が出来高算定になったことから、地域包括ケア病棟での対応可能な患者や疾患の幅も 広がった。

そのため、急性期病棟にはより医療必要度が高い患者を集めることが出来やすくなった。

さらに、もう一つ急性期病棟と地域包括ケア病棟の両方を持つメリットがある。

回復期リハビリテーション病棟は在宅からの患者の受け入れができない。

したがって、在宅から直接患者を受け入れることができる地域包括ケア病棟は、廃用症候群や疾患の急性増悪により機能が低下した患者を受け入れ、在宅復帰に向けたリハビリテーションが提供できるといった今までにない機能を持つ病棟である。

すなわち、これからの時代において、急性期病棟と地域包括ケア病棟を持つ保険医療機関は、地域の事業所や家族とより密接し、在宅復帰支援を行う機能が求められ、地域包括ケアシステムにおける重大な役割を担う可能性が高い。

 

どれだけ知識や技術があっても周囲の認知度が低ければ、永遠にあなたの評価は上がらない

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がこれからの厳しい雇用情勢の中で生き残って行くためには、セルフ・マーケティングが重要であることは過去の記事でも繰述べさせて頂いた。

過去記事
セルフマーケティングなき医療・介護従事者の未来は明るくない
療法士等医療・介護従事者のセルフマーケティング まずはセルフリサーチから!!

今回は、セルフ・マーケティングにおける「認知度」の重要性を述べる。

多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は自らのリハビリテーション技術を高めるために、様々な自己研鑽に日々励んでいる。

プライベートの時間、大学院やセミナー受講のための費用などの様々なコストを投資をして、知識や経験を高めている。

しかし、世の中は甘くない。

知識や経験を高めれば、周囲からの評価が高まるということは、幻想である。

自分の給料や立場を上げたい、周りから認められたいという承認欲求や自己実現欲求を人間には持っている。すなわち、知識や技術を上げることで、それらの欲求を満たしたいという考えは生理的には正しいものである。

だが、現実的には知識や経験が高まれば、自動的に周囲からの評価が高まることは希である。

では、周囲からの評価を高めるには、どのような要素が必要であるか?

それは社内や社外における自分自身の知識や経験の「認知度」を高めることである。

社内や社外において、「あなたがどういう人材であるか」という認知度が高まって初めて、周囲からあなたへの「期待」が生まれる。

その「期待」に応えることができた時に、一気に周囲からの評価は上がる。

最大のハードルは、「認知度」を上げる行動を行う勇気があるかどうか?である。

多くの人は、この「勇気」がない。

「認知度」を上げるということは、同時に責任が生じる。

すなわち、自身という商品の品質管理が問われるわけである。

多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は確かによく勉強してる。

しかし、よく「認知度」を上げる行動をしているか?というと、甚だ疑問である。

セルフ・マーケティングでは、知識や技術を高めること以外の要素の学習や行動が重要となってくる。