病院は重症の方が入院する所であるという論理は、療養病床にも当てはめられた

2016年度診療報酬改定にて、療養病棟入院基本料2の施設基準に、「当該病棟の入院患者のうち、医療区分2又は3の患者の割合の合計が5割以上」という要件が加わった。

医療区分は以下のように定められている。
医療区分

「病院は重症の人が入院する所である」
これは、近年、日本で進められている病床機能の編成を行う上での基本方針である。
病床機能編成は急性期病院だけの問題と考えられがちであるが、慢性期医療を担う療養病床にもその影響が出ている。

現在、進められている地域医療構想の議論において、在宅医療と病院における慢性期医療の区分として、、一日当たりの医療投入費用が2,250円(※入院基本料・リハビリテーション料は除く)が検討されている。

つまり、一日当たりの医療投入費用が2,250円以上の患者は入院医療を受ける対象として適正であるという考えである。言い換えると、2,250円以下の患者は在宅医療で対応をするべきという考えである。

療養病棟に一日当たり医療投入費用が2,250円以下の医療必要度が低い患者が入院していることは、「病院は重症の人が入院する所である」という病床機能分化の基本方針に反することになる。

今後、療養病床においても、重症者の入院を推進するマーケティングや、重症者に対応できる医療技術・看護技術・リハビリテーション技術の開発が益々重要となってくる。

療養病棟入院基本料2の評価

2016年2月10日
中央社会保険医療協議会 総会 資料

劣化したセラピストを生み続ける理念・基本方針軽視のブラック法人は社会悪でしかない

皆さんの医療機関や介護事業所に勤務するセラピストは、貴社の理念に共感しているだろうか?

勤務しているセラピストの何%が法人やリハビリテーション部門の理念や行動方針を諳(そら)んじられるだろうか?

そもそも、理念や行動方針が明確でない法人や部門さえ存在している。

そして、多くのセラピストは理念や基本方針なんかに興味はない。

理念や行動方針を常に意識しながらサービスを提供しているセラピストは全国的にみれば、絶滅危惧種の数程度であろう。

大勢のセラピストは、理念や行動指針よりも、はるかに自分の理学療法、作業療法、言語聴覚療法、あるいは労働条件やプライベートな時間に興味がある。
理念や行動方針に共鳴していないセラピストにとって、働く場所はどこでもよい。

面接時に、「貴社の理念や基本方針に興味があり、入職を希望します」と述べていても、入職後、理念や方針に対して質問をしてくる事例などほとんどない。

セラピストの社会貢献や給料をもらうことへの知性のなさも問題であるが、それ以上に問題であるのは、理念や基本方針について従業員であるセラピストに教育できない医療機関や介護事業所である。

資格を持っていれば誰でも良い
ワークライフバランスの意味も分からずに、ワークライフバランスを提唱する
稼ぐためなら、法人に魂を売れるセラピストを採用する

こういった法人が存在するのも事実である。

まさに、理念・基本方針軽視のブラック法人と言える。

医療・介護分野では2025年以降の高齢者増大の時代に向けて、国を挙げて対応している。

劣化したセラピストを生み続ける理念・基本方針軽視のブラック法人は社会悪でしかない。

2016年9月末までに医療機関からの訪問リハビリテーションの立ち上げが急増する!?

2016年度診療報酬個別改定が明らかになった。

リハビリテーション分野で注目されていた項目の一つに、維持期リハビリテーションがあげられる。

今回、介護保険被保険者の維持期リハビリテーションに関しては、極めて厳しい経済的誘導が行われた。

1)介護保険被保険者で月13単位の維持期リハビリテーションを受けた時点で、一回目のプライスダウン

2)当該医療機関で通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを行っていなければ、二回目のプライダウン

3)新設される目標設定等支援・管理料を算定しない場合、三回目のプライスダウン

厚生労働省は3段階のプライスダウンで、事実上、医療保険を用いた介護保険被保険者の維持期リハビリテーションを廃止する算段である。

また、目標設定等支援・管理料の減算が免除される経過措置期間が明らかになった。
2016年10月1日から目標設定等支援・管理料を過去に算定していなければ、上記した三回目のプライスダウンが発動されることになる。

すなわち、介護保険被保険者の維持期リハビリテーションを生業の一部としていた医療機関においては、2016年9月末までに、医療保険を用いた介護保険被保険者の維持期リハビリテーションを終了し、介護保険を用いた維持期リハビリテーションを提供するといった事業運営の変更が必要な状況となった。

しかし、通所リハビリテーションンは建物や所定の人員が必要となり、多額の経費が必要となることから多くの医療機関は、訪問リハビリテーション事業所の設立を目指すと考えられる。

2016年9月末までに訪問リハビリテーション事業所が急増する可能性が高まった。

地域によっては、訪問リハビリテーションのマーケットが大きく変化するだろう。

維持期リハビリテーション
2016年2月10日
中央社会保険医療協議会 総会 資料

診療報酬改定雑感:梯子は外されたら、ちゃんと次の梯子が掛けられる。むしろ、次の梯子を登れないことに問題がある。

2016年診療報酬改定の詳細が明らかになった。

多くの医療機関では、当面の期間、今から対応の準備に追われる。

そもそも診療報酬改定とは何を目的にしているのだろうか?

診療報酬改定は経済的な誘導を用いて、国の施策を実現していく手法であると言える。
したがって、時に、「国に梯子を準備され、梯子を上り切ったら、国に梯子を外される」と揶揄されることもしばしばである。

ある診療報酬改定の項目を経済的に誘導し、大勢の医療機関がその項目に取り組むことが実現すると、ある日突然、その項目が外され、医療機関は窮地に陥るというものである。

2000年に新設された回復期リハビリテーション病棟も多くの梯子が準備され、そして、外されていった。
休日リハビリテーション加算・充実加算・体制加算・施設基準の3段階など、様々な梯子が準備され、多くの医療機関がその梯子を登った。

今回、2016年度診療報酬改定でも多くの梯子が外される。

7:1病床の重症度比率と在宅復帰率の厳格化
10:1病床の急性期看護補助体制加算・看護職員夜間配置加算・看護必要度加算の重症度比率の厳格化
療養病棟入院基本料2の入院患者対象者の厳格化
回復期リハビリテーション病棟の一定期間のFIM利得によるアウトカム評価
外来リハビリテーションの介護保険被保険者の減算
などその他にも多くの「梯子外し」が存在している。

確かに、「梯子外し」には多くの医療関係者が違和感を感じる内容も多い。
現場の実情や経済性を考えていないと思われる内容も多々ある。

しかし、
国はただ理不尽なことをしているだけではない。

梯子を外せば、次の梯子を準備する。

多くの医療機関が診療報酬改定の度に経営危機に陥る原因は、次の梯子を登るだけのマーケティングや社内資源の開発を怠っていることである。

マーケティングなどのマネジメントが機能している医療機関が、国の方針が変わっても、常に高い利益率を保っている事例は沢山ある。

梯子が外されたら、次の梯子をすぐに登る。

このような経営姿勢がなければ多くの医療機関は苦境に立たせられる時代である。

組織の改革スピードと国の改革スピードのどちらが早いか。

そういう視点なくして、これからの時代は生き残れない。

 

電話一本もろくにできない医療・介護従事者は、将来の見込みなし

医療機関や介護施設に勤めていると、社内PHSや携帯電話で社内外の方と話すことが多い。
また、目の前の相手が、自分との会話中に、会話が中断して、他人と電話でやり取りをすることも多い。そんな時によく経験することがある。

電話をかけてきた相手が名前を名乗らずに、話続ける
かかってきた電話に態度が悪い
相手が忙しいことを配慮せず、一方的に話を続ける
などなど・・・・。

電話で社内外の人と話すときに、態度が悪い、偉そう、名前を名乗らない、相手の状況に配慮しないレベルの医療・介護関係者は非常に多い。

特に、医師・看護師・理学療法士・薬剤師など専門職の電話対応の悪さは目立つ。

自分より立場が下と判断した相手には、なんとも冷たい対応をすることも多い。

たかが、電話一本で何が問題なんだ?と声が聞こえてきそうだが、それが実が電話一本ですまされる問題ではない。

実は、電話一本からセルフ・マーケティングが始まっている。

どれだけ技術や知識を持っていても
どれだけ学歴や偏差値が高くても
どれだけ貴重な資格を持っていても

電話一本もまともにできなければ、社内外での評価は下がり、潜在的顧客が減少する。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師が社内外で、自身の活躍の場を増やし、給与などの処遇を増やしたい場合、セルフマーケティングを行い、自分自身の価値を社内外で購入してもらう必要がある。

どれだけセルフマーケティングの努力をしていても、態度の悪い電話一本で、セルフマーケティングの努力は吹き飛ぶ。

大体、電話一本も出来ない人間に、チーム医療やチーム介護、ましてや地域包括ケアなど出来るはずもない。

たかが、電話一本

されど、電話一本

である。