地域包括ケアの前に、事業所包括ケアである

多くの医療・介護事業所において「地域包括ケアに取り組まなければ、利用者が確保できない。他の事業所との連携が大切だ!」と叫ばれている。

医療・介護の連携が叫ばれて久しいが、その連携の実態はうまく進んでいない。

筆者は「そもそも医療・介護事業所内において包括ケアや連携ができていない」ことが、連携や地域包括ケアが進まない最大の原因であると考えている。

特に、現場を省みないトップダウン型の経営者は、現場のケアやリハビリテーションの全体最適には興味を示さないくせに、外部との連携が重要だ!と叫ぶ。

これ最悪。

事業所内の包括ケアが出来ている事業所しか、地域包括ケアの意味が理解できない。

書類や口頭での申し送りや、表面上の会話のオンパレードのカンファレンスやサービス担当者会議が包括ケアではない。

各専門職が利用者の目標達成に向けて、専門性をぶつけ合い、協議の結果出てきた知恵の活用が、包括ケアである。

このような取り組みをしているところは、非常に少ない。

全体の1割もないのでは。

殆どの事業所が地域包括ケアの意味をわかってないのが実情だろう。

自分の働いている事業所の包括ケアが出来ているか?

出来ていなければ、やるべきことは明確である。

自らが動いて、包括ケアのキーパーソンになれば良い。

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護福祉士になることは手段であって、目的ではない

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、介護福祉士。

これらはただの資格である。

資格とは、あることを行うためのパスポート。

しかし、パスポートより「あること」の方が、遥かに大切である。

「あること」とは何か?

それは、「自分の人生で何を成し遂げて、何を表現したいのか?」という人生の理念であり目的である。

多くの有資格者は人生の目的が薄れ、手段が目的化している。

漫然と臨床をこなす日々が続いている、給料のために働いている、毎日の充実感が少ない。

この状態に陥っている人は、手段が目的化している。

ヘルスケア産業は大きな多様性を求められる時代なった。

地域包括ケアシステムやセフルメディケーションが当たり前の社会の実現には、多様な人材にの活躍が必要である。。

医療・介護・住まい・生活支援・物販・インフラ・サービス・企業間取引・産官学連携など、多くの分野で多様な人材が求められている。

資格で、自らの視野を狭め、自らの可能性を潰すのではなく、「自分の人生で何を成し遂げて、何を表現したいのか?」という疑問を解決するために「資格」を徹底的に利用することが大切である。

キャリアデザイン=資格 ではない。

資格=人生 ではない。

あなたは、資格に支配されていないか?

今一度、人生の目的を考えて欲しい。

 

 

マネジメントなき医療・介護専門家集団は烏合の衆

医療・介護職の多くは専門家である。

専門家は自身の分野には長けているが、他の分野には長けていない。

多くの医療・介護事業所は専門家を雇用し、専門家の専門家による専門家のための業務を容認している。

この現状を経営者は「権限移譲」という言葉で誤魔化している。

これは「権限移譲」ではなく、ただの「マネジメントの放棄」である。

マネジメントを放棄した組織の典型例は、組織内で何か問題があると「専門家である職員が悪い」という結論が導き出される組織である。

「専門家である職員が悪い」のではなく、「専門家である職員が悪いという結論が、安易に導き出される組織」が悪いのである。

くしくも、時代は地域医療連携、地域包括ケアシステム、ワークライフバランスの時代。

さまざまな組織の経営資源を統合し、有効活用しなければならない時代である。

専門家の能力をどのように組織の価値創造に寄与させるのか?

この命題に立ち向かえる医療・介護事業所だけが2025年以降も生き残ることができる。

医療・介護職や事業所は「情報共有が大切です」と述べることが多いが「理念の共有が大切です」と述べることは少ない。

情報は共有しても実は大して意味がない

その情報をどのように活用するのかについての行動指針となる理念がはるかに大切である。

会議の場で、情報を共有しても反対意見ばかりが飛び交う、否定的な反応が多い、建設的な意見がでないことは多くないだろうか?

これは、情報をどのように活用するかについての理念が理解されていないことが原因である。

規律や自律がなく、「ただ集まっただけの群衆」を烏合の衆と呼ぶ。

皆さんの事業所は理念を共有した組織か?はたまた、ただの烏合の衆か?

診療報酬改定・介護報酬改定・医療制度改革は烏合の衆の大掃除を狙っている。

 

なんちゃって医療・介護事業所は本気で淘汰される

地域医療構想が2015年度より本格的に検討される。

地域医療構想とは地域ごとの医療需要に的確に応えるため、病院や有床診療所に対して病床機能の現状(高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4区分)を都道府県に報告させ、その後に報告された医療機能が満たされているかどうかを判断し、医療機能が満たされていない場合は、病床の変更や返上を国より命ずる制度である。

公的病院は都道府県知事の命令により強制的にこの指示に従わなければならない。

都道府県知事の命令により民間病院が病床の変更や返上に応じなかった場合は、医療機関名が公表されるというペナルティーが課せられる。

現在、厚労省では各医療機能の医療資源に費やした費用の標準化を図っており、標準化された費用に満たない医療機関は「各下げ」を命令されるスキームが検討されている。

介護報酬改定でも、通所リハビリテーション、小規模デイサービス、特別養護老人ホームの淘汰が本格的に始まった。

2015年度介護報酬改定では、基本報酬を下げ、加算部分で評価するという手法が全面的に導入された。

今まで、地域連携、重症利用者、リハビリテーションに対して質の低いサービスで対応していた事業所は、一気に経営が悪化する状況となった。

診療所や訪問看護ステーションも安心できない。

地域包括診療料や機能強化型訪問看護ステーションなど明らかに専門職スタッフの人員増を促進する施策が導入されている。

国はやる気のない「なんちゃって急性期」「なんちゃって回復期」「なんちゃってリハビリ特化型通所介護」「なんちゃって通所リハビリテーション」を本気で潰そうとしている。

このことに気づいてない経営者は経営者としての資質はないし、危機感を感じていない医師、看護師、セラピスト、介護士等も明るい未来はない。

自分が勤めているところが「なんちゃって・・・」ではないか、今一度、確認をして欲しい。

大塚家具と通所リハビリテーション

2015年介護報酬改定の目玉の一つとして通所リハビリテーションにおける「リハビリテーションマネジメント加算Ⅱ」と「生活行為向上リハビリテーション実施加算」が挙げられる。

これらの加算の単位と主な要件は、以下の通りである。

リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)
・開始日から6月以内 1,020単位/月
・開始日から6月超    700単位/月

主な要件
(1)リハビリテーション会議を開催し、利用者の状況等に関する情報を、会議の構成員である医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、居宅介護支援専門員、居宅サービス計画に位置づけられた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有し、当該リハビリテーション会議の内容を記載すること。

(2)通所リハビリテーション計画について、医師が利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得ること。

(3)通所リハビリテーション計画の作成に当たって、当該計画の同意を得た日の属する月から起算して6ヶ月以内の場合にあっては1ヶ月に1回以上、6月を超えた場合にあっては3月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、利用者の状態の変化に応じ、通所リハビリテーション計画を見なおしていること。

生活行為向上リハビリテーション実施加算
利用開始日から起算して3月以内の期間に行われた場合 2,000単位/月
利用開始日から起算して3月超6月以内の期間に行われた場合 1,000単位/月

主な要件
通所リハビリテーション費におけるリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)を算定していること。ただし、短期集中個別リハビリテーション実施加算又は認知症短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合は、算定しない。

生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後に継続利用する場合の減算
生活行為向上リハビリテーション実施加算の実施後の翌月から6月間に限り1日につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数から減算する。

二つの単位数は非常に高く設定されており、厚生労働省の強い政策的誘導を感じる。

今後の通所リハビリテーションのあるべき姿を、加算によって表現したと言える。

全国の通所リハビリテーション事業所は現在、この二つの加算をどのように取るべきかについて非常に頭を悩ませている。

筆者のところにも多くの相談が寄せられているが、次のような相談内容が多い。

1.医師のカンファレンスの参加、利用者、家族へのリハビリテーション計画の説明が困難
2.結局、医師の代わりにセラピストが多くのことを仕切ることになり、業務負担が増加する
3.書類上の帳尻を合わせて、おけば加算が取れると上司やオーナーが言っている
4.利用者の多くがレスパイト目的での利用であるため、生活行為向上リハビリテーションに該当する方が少ない
5.今まで、利用者と接したことがない医師が、リハビリテーションに関する主治医になれるとは思えない
と様々である。

これらの問題はなぜ生じるのか?

それはまさに、新しいビジネスモデルの転換に関して組織のケイパビリティーが著しく不足しているからである。

ケイパビリティとは、企業が全体として持つ組織的な能力を示す。

環境変化が著しいヘルスケア産業では、競争戦略による差別化が最大の課題である。

ケイパビリティを高めることで、戦略の実現性で他社に差をつける、地域や市場における持続的な競争優位を確立することができる。

おそらく、2018年度診療報酬・介護報酬ダブル改訂においては、通所リハビリテーションは二段階に分けられる。

リハビリテーションマネジメントや生活行為向上リハビリテーションを提供できるリハビリテーション施設としての通所リハビリテーション

食事、入浴、レクレーションと質の悪い個別リハビリテーションを提供する送迎付きの入浴施設的通所リハビリテーション

に分別される。

当然、後者は経営的には厳しくなる。

そして、通所介護と通所リハビリテーションの統合の議論も本格化してくる。

時代背景に合わせたビジネスモデルを導入する時は、権力闘争、組織間対立、コンプライアンス低下が起こる。

大塚家具のように成功体験があるビジネスモデルがあると、さらにビジネスモデルの新生には大きなエネルギーが必要となる。

大塚家具の問題は、単なる親子の問題ではない。

企業統治や組織のケイパビリティーに関して、手を抜いていたからあのような騒動に発展したのである。

一部上場の大企業ですら、ビジネスモデルの転換には苦労する。

ましてや、家業経営体質やワンマンオーナーの通所リハビリテーションは、ほぼガバナンスは正常に作用していないと考えても良い。

通所リハビリテーションの事業モデルの転換には2018年までの3年間の猶予が与えられた。

病院、診療所、老人保健施設の副業的な収入源として運営してた事業所には修羅場の3年間である。

医師がリハビリテーション会議に参加しない、利用者のリハビリテーション中の話しかけで同意を得たことにする、リハビリテーション会議をセラピストだけで行う、対象とする利用者をいつまでも変えられない・・・・・などのことをやっている通所リハビリテーション事業所は、2018年に、通所リハビリテーション業界から退場を命じられるだろう。