地域包括ケア病棟の役割のミスマッチを解消せよ

2014年度診療報酬改定にて、地域包括ケア病棟が新設された。
地域包括ケア病棟の役割は①急性期からの受け入れ ②在宅復帰支援 ③緊急時の受け入れである(下図)。

10:1病棟、回復期リハビリテーション病棟ⅡorⅢ、療養型病棟などが経営的安定を図るために地域包括ケア病棟に変更するケースが多い。現在、地域包括ケア病棟は徐々に件数を増やしてきており、今後さらに存在感がます病棟である。
しかし、地域包括ケア病棟は厚労省が期待する役割を満たせていない現状がある。

多くの地域包括ケア病棟では
①地域からの緊急時の受け入れは少なく、自前の急性期病棟からの転棟患者が多い
②リハビリテーション2単位/日の提供で在宅復帰を達成するため、回復が見込める整形外科患者の入院が多い
という現状が散見される。

このような運用では、事実上、「整形外科リハビリテーション病棟」であり、決して地域との密な連携を期待されている地域包括ケア病棟になっていない。

2014年診療報酬改定後に経営的安定を図るために地域包括ケア病棟へ機能転換した病院は多いが、本来の地域包括ケアの仕組みを構築しないまま病棟運用をしている病院も多い。そのため、求められる機能とのミスマッチが生じている。

現在、地域包括ケア病棟の運用状態に関する調査が行われている。おそらく、上記した問題点が具体的なデータとして抽出され、2016年度診療報酬改定では地域包括ケア病棟の要件強化が図られるだろう。特に地域との連携実績、在宅医療への関与、軽症患者の要件強化などが検討される可能性が高い。
そのため、現在、地域包括ケア病棟を開設している病院、あるいはこれから開設する病院は、病棟運営だけでなく、地域包括ケアの意味を理解し、地域連携に努めるべきである。さもなければ、次期診療報酬改定で痛いしっぺ返しをいただくことになる。

地域包括ケア病棟の役割

平成26年度診療報酬改定資料 厚生労働省

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現状の不満に耐えるか?未来の不安を消し去るか?

医療・介護情勢が混沌としている。
今後、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護福祉士を取り巻く状況はますます厳しくなる。
与えられた仕事をしていれば、給料や処遇が改善するかどうかもわからない。非常に不確実な時代に突入している。このような時代では職場に対して不満や憤りをもつ人が増加する。多くの人が不満や憤りを心に抱えながら働いている。かといって、不満を解消するために行動する人も多くいるわけではない。転職や起業をしたからといって、成功するのかどうか?わからないという不安もある。

多くの医療・介護従事者は不満と不安の狭間で立ち止まっている。
不満に耐えるか、不安を消し去るかを選択できずに思考停止になっている。

しかし、不満は外部環境から生まれ、不安は内部環境から生まれる。外部環境は職場、政治、経済であり、人が制御できるものではない。しかし、内部環境は人の知識や経験であり、人によって調整ができるものである。つまり、自分の知識や経験を高めていくことで、将来の不安は消し去ることができる。

今の時代は明治維新や戦後直後の状況に近い。価値観の変化、政治や経済の不安定、国外からの情報流入などが目まぐるい。明治維新や戦後直後の環境変化に対して不満を耐え忍び、愚痴ばかり言っていた人達は時代の荒波の飲まれていった。
しかし、環境変化とともに知識や経験を高めていくことで時代に適応し時代を創造する側に立つ人達もいた。

不満に耐えるか?不安を消し去るか?
あなたはどっちを選択する?

生活期リハビリテーションの市場化が始まった

2015年度介護報酬改定では、今後の生活期のリハビリテーションの方向性が明示された。
2018年度診療報酬・介護報酬同時改定においては、急性期・回復期の短縮に伴い、生活期リハビリテーションのさらなる見直しが行われるだろう。

生活期とは文字通り、医療依存度の高い状況が終了し、その人それぞれの生活空間で再び生活を行う時期であり、急性期と回復期と比べると圧倒的に期間は長い。
長期間にわたり、QOLを維持・向上させるためには生活そのものへの評価が重要となる。
2015年度介護報酬改定では通所リハビリテーション・訪問リハビリテーション・通所介護において、生活機能を高める取り組みが評価された。
高齢者の生活を評価し支援するためには、当然「生活の構成要素」を把握する必要がある。
高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会 報告書(平成27年3月)では、高齢者のニーズ把握表が提案された(下図)。

これらの内容は従来のリハビリテーション医療では、網羅できていない部分も多い。従来のリハビリテーション医療ではADLの自立や在宅復帰を目的としたサービスが行われてきており、卒前・卒後教育でもそれらは重要視されてきた。
しかし、急性期・回復期の短縮・軽度高齢者の増加・介護予防対象者の増加などにより、従来のリハビリテーション医療モデルは限界に来ている。

このような背景を受けて、多くの民間企業が高齢者の生活機能支援をビジネス化している。
学習塾・大手清掃会社・フィットネスクラブ・旅行業界・・・などが市場への参入を図っている。
しかし、高齢者への対応においては、当然、心身機能のリスク管理も重要である。
したがって、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護福祉士が、生活機能支援ビジネスに対して企画・運営面から協力できる時代になったと言える。

生活機能支援ビジネスに取り組む民間企業を医療・介護従事者の敵とみなすか・味方とみなすか。その発想の違いは、今後の新しいリハビリテーション医療に大きく影響するだろう。ニーズ把握表高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会 報告書(平成27年3月)

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2016年度診療報酬改定 外来リハビリテーションの行方

平成27年6月24日に中央社会保険医療協議会が開催された。
その中で、平成27年度に診療報酬関係の調査項目について検討が行われた
電子レセプトを用いて
1)廃用症候群へのリハビリテーションの実施状況
2)医療保険リハビリテーションから介護保険リハビリテーションへの流れ
3)外来リハビリテーションの状況
4)入退院時のリハビリテーション対象患者の状況
が調査されることが公表された。

このことから次期介護報酬改定では
廃用症候群の定義のさらなる厳格化
介護保険を有する患者に対する介護保険リハビリテーションへの誘導
外来リハビリテーションの機能分化
軽症患者へのリハビリテーションの制限
に対する議論が行われると予想される。

特に、外来リハビリテーションの機能分化は大きく求められるだろう。
医療保険で行うリハビリテーションにおいて、外来と入院では患者の状態は大きく異なる。
したがって、外来で対応する患者に関しては一定の基準が明確化されるのではないか。
外来で取り扱える患者が限定されると、必然的に介護保険への誘導が活発化する。

電子レセプトにより、あらゆるデータが丸裸にされているため、制度改革は以前より容易になっている。リハビリテーションを生業の中心としている診療所、病院は次期診療報酬改定を見据えた対応策を今から準備する必要がある。

 

無題平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成27年度調査)の調査票案について(資料)

 

診療・介護報酬改定から数ヶ月経つと現場の盛り上がりは急激に低下する 

2015年4月に介護報酬改定が行われ、3月、4月、5月において、多くの介護事業所では、様々な議論が社内で行われたのではないだろうか。

特に、介護報酬改定は直接的に収益に影響するため、経営者、院長、事務長、部長クラスは多いに盛り上がり、様々な指示・命令を現場に下したのではないだろうか?

それを受けて、現場も多くの業務変更や書類変更に追われ、新しい加算取得や体制の構築に向けて一生懸命に取り組んでいるのではないだろうか?

しかし、どの事業所でも6月ぐらいから、社内の雰囲気がおかしくなる
当初は、一緒に取り組んでくれていた事務長や上司が「すーーーっと」と業務から消えていく
「権限委譲」「考えられる現場」などのスローガンを振りかざし、業務から遠ざかっていく

6月ぐらいになると実務的な対応が多くなり、現場の業務体制やプロセス作りが忙しくなる
そんな時こそ、現場はともに、悩み、考えてくれる上司を求めている
しかし、実務的なことになると非協力的な経営者や上司は多い

そして、秋ぐらいになると、「○○加算はとれているのか?」と突然、質問をしてくる
その加算が取得できていなければ、「ばかもん!なぜもっと早く相談をしてくれないのか!!」と叱責される。

経営環境が激変する時、経営者や上司は焦り出し急に様々な行動を行う
しかし、環境変化に対して自分が適応できないと悟った時、それを他人に丸投げして、推移を見守る

みなさんの事業所はどうだろうか?
そして、自分自身はどうだろうか?
他人に丸投げしているなら、いち早く、従業員に声をかけて、「出来ることはないか?」と従業員に寄り添っていただきたい

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