診療・介護報酬改定前後だけ、盛り上がる経営者はあきまへん!

2015年介護報酬改定がいよいよ行われる。

年明けから多くの情報が一気に公開され、いよいよ改定に熱を帯びてきた。

この時期になると診療報酬や介護報酬改定前後だけ熱くなる経営者や管理職がいる。

次々と出てくる改定情報に一喜一憂し、不安になり、管理職との面談が急に増える。

管理職の方はこの時期に経営者に呼び出されることが増えているのではないだろうか?

しかし、普段、コミュニケーションを取っていないものだから、経営者から急に熱い話をされても、理解が難しい。

常日頃、経営者と管理職が意思疎通をとっていれば、共通の課題を背景にして、協議ができるが、急に熱く話をされても、逆に冷めるだけである。

そもそも、診療・介護報酬改定の準備は、改定年の4月に行うものではない。

常日頃から、2年後、3年後の改訂を見越して、組織のダーバーシティーを高めておくことが重要である。

日頃から、愚直に経営や現場の運営に力を入れることが、診療・介護報酬改定を乗り切る基本である。

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医療・介護報酬改定前後だけ、急に話し合いの数が増えるのはマネジメントレベルが低いとしか言わざる得ない。

ドラッガーは「既に起こっている未来」を探すことが重要であると述べている。

未来は既に起こっている。

今の現実をしっかりと見定めることで、未来は見えてくる。

改定前だけ騒ぐレベルでは、今後の地域包括ケアシステムは乗り切れない

 

 

人間関係の悪い病院・診療所・介護事業所は2025年まで生き残れません

マズローの欲求段階説によると人間の欲求は5層構造になっており、それぞれの階層を満たすことで上位の階層にたどり着けると結論づけている。

第一層「生理的欲求」
生きていくための基本的・本能的な欲求

第二層「安全欲求」
危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたいという欲求

第三層「社会的欲求」
集団に所属することやより良い人間関係を求める欲求

第四層「承認欲求」
他者から認められたい、尊敬されたいという欲求

第五層「自己実現欲求」
自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという欲求

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多くの病院、診療所、介護事業所の最大の問題点は、第三層「社会的欲求」を満たせていないことである。

生理的欲求や安全欲求すら満たせていない組織は以前、より少なくなっている。

むしろ、生理的欲求、安全欲求だけの外面の福利厚生や給与面だけを満たして、社会的欲求を満たさないというレベルの低いマネジメントが展開されている。

特に、経営者の医療や介護へのマインドが乏しい場合、社会的欲求のための活動は急激に乏しくなる。

マインドが乏しいオーナーや経営者が採用した管理者や幹部は、医療や介護サービスの本質や従業員の育成という視点が乏しい場合が多く、その結果、人間関係や職場におけるモチベーションが低下する。

社会的欲求が乏しい状況が続けば、第四層「承認欲求」・第五層「自己実現欲求」のステージに個人がたどり着くことはない。

したがって、地域包括ケアや医療介護の連携、質の向上といった極めて高次元の課題に取り組むために必要な「従業員のモチベーション」を醸成することができず、組織は衰退の一途を辿る。

社会的欲求に最大限配慮した組織作りが2025年に向けてのキーワードである。

人間関係を良好に保つ機能は別名「集団維持機能」と言われる。

「集団維持機能」を高めるためには、人材マネジメント・組織心理学・メンターの存在、そして、企業理念の学習と展開が重要である。

これらの内容は、「マネジメント」の領域であり、「マネジメント」の学習なくして、組織の発展などありえない時代になっている。

 

 

 

経営者を支えるブレーンがいない病院・診療所・介護事業所は潰れます

2025年に向けた医療・介護制度のパラダイム転換が本格的に始まっている。

経営課題は山積しており、課題の解決なくして次期介護報酬・診療報酬改定は乗り切れない。

各分野における経営課題をあげると
病院
在宅復帰推進・在院日数短縮・病床機能報告制度への対応・介護との連携・医師や看護師の確保・電気料金増加への対策・稼働率の向上

診療所
外来患者の確保・大規模診療所への転換・基幹病院との連携・夜間対応・在宅診療報酬減額への対応・医師、看護師、セラピストの確保・介護の多角経営・

介護事業所
利用者の確保・介護報酬減額への対応・診療所、ケアマネージャー連携・在宅復帰の受け皿機能・介護施設間連携・重度者への対応・介護職の確保と教育

などが挙げられる

このような経営環境を、経営者一人で乗り越えることは不可能である。

最低、二名のブレーンが必要である。

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しかし、日本の多くの病院・診療所・介護事業所は中小企業レベルのマネジメントスタイルであり、家族経営中心の家業気質が抜けていない。

今後は、この家業気質が今後の経営のボトルネックになる可能性が高い。

家業では、家族や身内の保身を背景とした経営判断が行われやすく、環境変化に対応することが難しい。

今後、生き残る医療・介護事業になるためには、経営と家業を分離する家業分離経営を実現し、優秀なブレーンを雇用する必要がある。

オーナーや創業家のマネジメントだけで、乗り切れない時代になった今日、医療介護の従事者はマネジメント能力を磨く必要がより高まっている。

医療・介護従事者が医療技術・介護技術だけを提供していれば良い時代は終焉している。

マネジメントに関する能力を高めることは、一労働者としての生き残るためにも必要である。

 

 

仕事や人生の前進を阻害するベーシック・ミステイクに注意しろ

アーロン・ベックが確立した認知療法では、「人間の認知が行動や感情に影響を与えている」と考えている。

人間がどのように外界をとらえ、それを意味づけたか?という認知が、行動や感情に影響を与えている。


歯科医師になったが思ったより、給料をもらえないという出来事により、落ち込むという感情が生じた場合、「思ったより給料をもらえない」という出来事をどのように捉えているかという信念が落ち込みの感情を生じさせるのである。

このような非論理的な認知を、心理学では認知の歪みと呼ぶ。

認知の歪みには、6つの例があり、「ベーシック・ミステイク」と呼ばれている。

6つのベーシック・ミステイク
1.選択的抽出  文脈の中から一部だけを取り出し、全体の状況は把握せずに判断すること

2.恣意的推論  証拠がない、あるいは正反対の証拠があるにもかかわらず、否定的な結論を出してしまうこと

3.過度の一般化 一部分だけを取り上げて、すべての事柄に当てはめる

4.拡大解釈や過小評価 失敗の拡大解釈、成功の過小評価

5.自己関連付け わずかな情報を自分に関連付ける

6.分極化思考 白か黒か、両極端に考えること

このようなベーシック・ミステイクという非論理的な信念を持っていると、多くの出来事を悲観的に捉え、行動を制限してしまう。

例えば、すこし失敗しただけで「取り返しのつかないものである」と考えてしまったり、人から少し批判されただけで全員から批判されていると感じるなどが挙げられる。

セルフケアや部下の指導においては、ベーシック・ミステイクをしていないかを充分に注意し、もしベーシック・ミステイクに取り付かれている場合は、認知の歪を正していく必要性がある。

ちょっとしたことで落ち込む人、失敗を恐れて何もできない人、他人の目が気になる人はベーシックミステイクに陥っている

 

 

 

PT・OT・ST・Nrsのキャリア・デザインは相互依存型から自律支援型へ

バブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機や日本の債務超過により、企業のダウンサイジングやリストラクチャリングは加速を極めている。

その結果、長期雇用を前提としたキャリア・デザインは困難となっている。

長期雇用が約束される代わりに、従業員は退職せずに労働を提供し続けるという相互依存のキャリア・デザインのスタイルは完全に崩壊したと言える。

医療や介護においても、定期的に行われる診療報酬改定・介護報酬改定により、事業の再編、人材市場の流動化が加速化しており、長期雇用を前提とする状況ではなくなっている。

このような状況の労働市場で勝ち残るためにはエンプロイアビリティーを開発しなければならない。

エンプロイアビリティとは、「雇用され得る能力」「労働移動を可能にする能力」である。

現代におけるエンプロイアビリティの開発においては
一つの組織の中で展開されるキャリアではなく、様々な組織や労働市場で展開することを前提としたキャリア・デザインが重要と考えられる。

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特に、地域包括ケアシステムの推進により、医療・介護分野においても新たな労働市場が生まれており、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師等のキャリア・デザインは複雑化している。

環境変化の激しい医療・介護分野において人材は企業にとっての「固定資産」ではなく「流動資産」となった。

この現実の中で、企業に対して優れた貢献を提供できる人材は、自らが望む労働市場を自由に移動することが可能となる。

つまり、能動的にキャリアを想像する自律支援型キャリア・デザインが今後の主流と言える。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師等が自らの資格にしがみつくのではなく、転移可能なスキル(どんな業種でも通用するスキル。例:コミュニケーション能力・事務能力・交渉能力等)も積極的に開発することが重要な時代に突入している。