理学療法士・作業療法士は歯科医師のワークシフトを学べ

近い将来、理学療法士・作業療法士は過剰供給になるのか?ならないのか?
そういった議論が、業界内で渦巻いている
現状のペースで新規資格取得者が増加すれば、2025年には理学療法士、作業療法士が30万人近くになる可能性もある。

劇的な経済発展が望めないことや社会保障費の圧縮などにより、医療・介護分野へのお金の流れは低調になる。また、理学療法士や作業療法士の有資格者も増加し、人件費の自然増もさけられない。
したがって、理学療法士や作業療法士の給料が今後、劇的に増加していく見込みはない。
年3,000円の昇給をしたとしても、10年間で月30,000円の増加である。

今後は国や外部環境に強く依存しない「働き方」が必要とされる時代になったと言える。
「働き方」を考える上で、必要な軸としては「個のブランディング」である。
すなわち、個人としての実力を磨き、世の中から信頼を得ることである。

このような「働き方」が、顕在化している医療職が既に存在している。それは、歯科医師である。

現在、歯科診療所はコンビニエンスストアの数より多い。
歯科医師の数も近年では、10万人を超えており、過当競争となっている。
そのような環境では、自ずと市場原理が作用し、歯科医師の個の力の差が顕在化する。

現在、歯科医師でワークシフトをしている事例には以下のものがある。

・往診専門に特化する
・摂食嚥下リハビリテーションを行う
・STを採用し、訪問リハビリテーションを行う
・審美歯科を行う
・介護事業所やサービス付き高齢者向け住宅を運営する
・他院と連携して、術後感染予防のために、術前患者への治療を行う
などである。

外来で、ひたすら治療するという「働き方」から、脱却している歯科医師が自分の専門性を新しい市場で提供している。他の歯科医院とは差別化することで、業界や地域で新しいポジショニングを得ているのだ。

では、理学療法士や作業療法士はワークシフトを行うことが可能なのか?
確かに、理学療法士や作業療法士には開業権がないので、開業という視点ではワークシフトは困難である。
しかし、理学療法士や作業療法士の専門性を活かせる市場は山とある。
社内を見渡しても、リハビリテーションの教育や他職種との連携、新しいリハビリテーション技術の開発やその治験、介護士や看護師への教育やカンファレンスのファシリテーター・・・・など多くの活躍できる分野があるのではないか?
社外においては、在宅生活を支えるサービスや異業種へのアドバイス、物販やインターネットを活用したサービスなど・・・・非常に多くの可能性を秘めている。

資格という国家が与えてくれたパワーで働くのではなく、その資格の専門性を活かして社内外に貢献できる新たな分野で個の力を発揮していく。
これが、今後、理学療法士や作業療法士に求められるものではないか。

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地域包括ケアシステムの本質

地域包括ケアとは何か?

住み慣れたところで、その人らしく生きていける社会システムを構築すること

これが一般的に理解されている内容である。

しかし、この本質は非常に複雑である。

地域包括ケアには、地域という言葉が含まれている。

だが、全国津々浦々、地域の事情は大きく異なる。

大病院がひしめく地域、在宅診療が少ない地域、医師会が先進的な取り組みをしている地域、力のある民間医療法人がある地域、極端に高齢者が多い地域、高齢者の少ない地域、訪問看護やデイサービスなどの事業所が過剰な地域など・・・・・。

つまり、地域という性質の標準偏差が大きく、一概に「地域包括ケアシステム」と言っても、地域が抱える課題が異なる。

すなわち、地域包括ケアシステムは「地域課題解決システム」と言い換えることができる。

地域課題解決システムが日本において導入できる要因は何か?

介護保険の保険者は市区町村(市町村・特別区)である。

また、国民健康保険(国保)は、2018年度に市町村から都道府県に運営を移管される。

すなわち、保険の主たる運営者が地方自治体であることから、その財源の使い道を地域課題解決に活用することが可能となっている。

言い換えれば、地方自治体の医療・介護行政に対するリーダーシップが非常に必要とされる時代になっており、地方自治体の担当者のプレッシャーは相当なものと推察される。

さらに、医療機関・介護事業所・民間産業は地域課題が解決できなければ地域から必要とれなくなり、経営はジリ貧になっていく。

地域包括ケアシステムとは地域課題解決システムであり、地域課題が行政や医療・介護事業所のマーケティングの対象である。

行政や医療機関、介護事業所は今まで本気でマーケティングをしてこなかった。

粗悪なサービスをしていても、それなりに患者、利用者が確保できた。

しかし、これからは患者や利用者だけでなく、地域課題解決に目を向けなければ事業所としての存在意義が問われることになる。

 

 

 

 

機能強化型訪問看護ステーションと地域包括診療料を算定する診療所への期待値は高い

2014年診療報酬改定では機能強化型訪問看護ステーションと地域包括診療料が新設された。

機能強化型訪問看護ステーションは
「5名以上の常勤看護師が確保された体制で看取りや重症患者に取り組む訪問看護ステーション」が期待されており、高い診療報酬の単価が設定されている。

地域包括診療料は
「3名以上の常勤医師の体制で高血圧、認知症等の管理および介護保険対応、時間外対応を行う診療所」が期待されており、これも高い診療報酬が設定されている。

この二つの新設項目は、高い診療報酬単価が設定されていることからインセンティブ項目であることが明白である。

伝統的に、訪問看護ステーションと診療所は、「少ない人数で効率よく業務を行う」イメージがあり、経営者や管理者も小さい組織に対するマネジメントしか行ってこなかった。

しかし、昨今の医療・介護情勢の変化により、訪問看護ステーションと診療所の大規模化が求められている。

大学病院や500床以上の病院の外来機能縮小、急性期や回復期病院からの在宅復帰者増加などにより、地域の訪問看護や診療所の役割は変化してい。

医療介護政策により、地域には軽度者から重度者が在宅で生活をしており、様々なニーズに対応できる訪問看護や診療所が必要になってきている。

外来診察、訪問診療、介護保険サービス、急変時の対応、看取り、回復を促すリハビリテーション、生活機能向上のためのリハビリテーション・・・など、多くのニーズが地域には存在している。

これらのニーズに対応するためには、当然のことながら、マンパワーが必要である。

マンパワーが増えれば、当然、高度なマネジメントが必要となる。

今まで、訪問看護ステーションや診療所は最小限の人数、最小限のコストで行うことにより高い利益率をあげてきた。

しかし、今後は、地域のニーズに応えることができる大規模化事業所がのみ生き残る仕組みへの変更を厚生労働省は試みている。

訪問看護ステーションと診療所の生き残り方法には、答えが出ている。

しかし、多くの事業所はその対応策を取っていない。

マーケット感覚のなさが、自らの事業所を破滅に追いやる。

 

 

 

 

 

目の前に患者や利用者がいなくなったら、看護師、療法士はご飯を食べれなくなる

病院、診療所、老健、介護事業所のすべてに共通していることは、提供したサービスに応じた介護報酬や診療報酬を原資として経営を行っているということである。

つまり、介護報酬、診療報酬がゼロになれば、経営は頓挫し、従業員に支払える給料は途絶えることになる。

看護師、療法士は専門職であり、専門的な知識や技術を人間や社会に還元することで収入を得ている。

しかし、患者や利用者がいなくなれば、専門的な知識や技術を発揮することができない。

つまり、専門職は目の前に、患者や利用者がいてはじめて、専門職としての役割を担うことができ、また、自身のアイデンティティーを高めることが出来る。

診療報酬改定、介護報酬改定により医療・介護を取り巻く環境は激しく変化している。

とりわけ、病床機能や各介護事業所の役割の改革が強く求められており、2025年までに多くの病院や介護事業所は市場環境に適応できず、経営不振になると考えられる。

今、看護師、療法士などの医療・介護従事者に求められるものは何か?

専門職としての知識や技術を高めることは当然である。

しかし、知識や技術を高めても目の前に患者や利用者がいなくなったら意味がない。

つまり、今、求められるものは「マーケット感覚」である。

自分の知識や技術、さらに、態度や考え方が、勤め先の経営に貢献し、患者、利用者の獲得に繋がっているかを、今一度考えなければならない。

自分のやりたいことと組織が期待していることが、重なっていない場合は、組織へ貢献ができていない。

雇用されている以上、組織が期待していることへの理解は義務である。

これからは、勤め先で地域に貢献できているか?を考える・・・つまり、マーケット感覚に基づく専門的知識、技能の研鑽が求められる。

 

多くの看護師・療法士とって病院・診療所・介護施設の経営は他人事である

帝国データバンクによると、医療機関や介護事業所の倒産件数は増加している。

特に、介護事業所と診療所の倒産件数の増加が目立つ。

年々、事業所や診療所が増加しているため、競争が激しくなり倒産するケースが増えている。

言い換えると、「少し競合が増えるだけで倒産するような診療所や介護事業所が増えている」と言える。

2010年ぐらいまでの倒産の原因は、多角経営の失敗、設備投資の失敗であったが、近年は経営環境の悪化に対応できなかったための業績不振である。

安倍政権になって、多少、金融機関の締め付けが緩くなり、資金繰りが改善したため、倒産件数はやや減少傾向となった。

しかし、2018年診療報酬・介護報酬のダブル改定で大幅に減収する医療機関や介護事業所が増えると予想され、倒産件数が急増するのではないかと予想されている。

医療機関や介護事業所の生業を支えているのは間違いなく現場で働く職員である。

その職員の経営参画の意識なしに今後の医療機関・介護事業所は生き残ることは不可能である。

当然、経営者や事務長クラスが経営への意識が低ければ、倒産まっしぐらである。

「従業員への経営参画意識の向上」が2018年に向かって大きな課題である。

基本的には「看護師・療法士とって病院・診療所・介護施設の経営は他人事」である。

医療関連資格を取った時点で、専門家として働いていることから、あくまでも「自分の専門性を発揮するが仕事」と考えている看護師・療法士が多い。

経営体力があるうちに、経営指標や統計を公表し、現状把握に対する問題意識を常日頃から現場に伝達する必要がある。

そして、改善策を立てて、実行していく。

改善策をより効果的なものにするためには、職員に経営参画意識を浸透させ、モチベーションを高められるようにしなければならない。

そのためには、組織風土醸成、採用者の厳選、経営幹部のリーダーシップ、中間管理職のフォロアーシップ、研修によるスキルアップなどが日頃から実行されていなければならない。

これらのことは当たり前な事であるが、多くの人は他人事だと思っている。

他人事ではなく、自分事である。

倒産するような組織で働いていること自体が、自分の成長を阻んでいるからである。