老人保健施設は正念場が続く

近年の介護報酬改定では、老人保健施設に対する多機能化を求める改定が行われており老人保健施設はその対応に追われている。

看取り
認知症
中重度者対応
在宅復帰

これらの様々な役割が期待されているが、組織力が乏しい老人保健施設は社内を改革することが出来ず旧態依然としたサービスの提供にとどまっている。

2018年度介護報酬改定ではどのような変化が老人保健施設に生じるのだろうか?

2018年度介護報酬改定に関して全国老人保健施設協会より次のような要望が出ている。
※詳細はここをクリックしてください

1 在宅支援機能の評価
在宅復帰や在宅復帰後の支援に関する評価の拡充

2 医療提供の質の評価
所定疾患施設療養費の対象の拡充(蜂窩織炎・感染性胃腸炎を追加)
薬剤の減薬に対する評価

3 ケアの質の評価
質の高いケアの実践や人材配置を評価

4 チーム・リハビリテーション
多職種によるチームリハビリテーションの評価

また、2017年8月4日に行われた社会保障審議会介護給付分科会では、老人保健施設の課題として次のようなものが議論されている(下図)。

全国老人保健施設協会と介護給付分科会の議論より、概ねの老人保健施設の方向性が見えてくる。

老人保健施設の在宅復帰および在宅支援の役割はより強化されていく可能性が高い。

現在、4割程度が在宅復帰型へ移行しているが、今後はさらに在宅復帰型への移行が推進されるだろう。

老人保健施設における医療行為や薬剤への評価が追加されることになれば、医療行為のハンドリングが老健単体できるようになり、入院医療と遜色のない対応が可能となる。

その上で、比較的早い回転で入所・退所を行うことが出来れば多くの利用者に対して短期集中リハビリテーション加算を算定することができ、地域包括ケア病棟と同様の機能を老人保健施設が持つことが可能となる。

さらに、チームによるリハビリテーションやケアが評価される事態になれば、老人保健施設としての強みが増すだろう。

老人保健施設では、入院医療機関より理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が少ないことから、チームによるリハビリテーションやケアが重要である。

しかし、現実的には看護・介護・リハビリテーションの各部門は縦割りで働いており、チームケアやリハビリテーションが難しい状況である。

しかし、報酬において評価されることなれば、チームケア・リハビリテーションへのインセンティブが働くことになり、老人保健施設としての機能は向上するだろう。

ただし、介護報酬により老人保健施設の評価が強化されただけで、老人保健施設のサービスの質が急に改善するものでもない。

愚直に人材育成、採用強化、新規入所者獲得のマーケティングなどをしっかりと行っている老人保健施設のみが、介護報酬改定の恩恵を受けるだろう。

2018年度介護報酬改定は、生き残れる老人保健施設を峻別する重大な契機となる可能性がある。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・鍼灸師・パーソナルトレーナーの仁義なき戦い

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・鍼灸師・パーソナルトレーナーの資格価値の下落が止まらない。

これらの資格保持者の年収、時給、福利厚生は下がる一方である。

資格価値の下落の主な原因は資格保持者数が増加の一途をたどっており需要と供給のミスマッチである。

各職種の供給が過剰となっていることから、各々の業界における競争が一段と激しくなっている。

各職種の競争が激しくなると、それぞれの職種は他領域へ市場機会を求めて参入をしてくる。

現在、次のような他領域への参入事例が認められる。

柔道整復師がフィットネスクラブでパーソナルトレーナーとして働く
理学療法士が摂食嚥下リハビリテーションを提供する
作業療法士が基本動作と応用的動作のリハビリテーションを提供する
パーソナルトレーナーが脳卒中患者やTHA術後患者の運動指導を行う
鍼灸師がターミナル患者に対してターミナルケアを行う
言語聴覚士が呼吸リハビリテーションを提供する
理学療法士・作業療法士が子供向けフィットネスジムを経営する
柔道整復師がデイサービスでリハビリテーションを提供する

このように、治療系コメディカルの仁義なき戦いが巷では既に起こっている。

高齢者数が2042年でピークを迎えることや治療系コメディカルの過剰供給が加速することを考えると、益々、領域を跨いだ仁義なき戦いは激しくなる。

益々、資格そのものが持つ価値は薄くなり、ビジネスパーソンとしての社会への価値提供が労働市場での優位性を示すことになるだろう。

もはや、ライバルは自分と同じ資格を持つものではなく、他の資格を有する者である。

そこには、共存共栄という「キレイごと」は通用せず、純然たる競争が存在する。

他職種の参入を阻止できる能力はあるか?

他領域に参入できる能力はあるか?

この2つの能力が必須の時代が近づいている。

 

独立してよいタイミング

40歳近くになってくると自身のアイデンティティが確立し、仕事において自分の夢や希望を実現する働き方を希望するようになる。

40歳前後というのは仕事の経験や人脈も蓄積し、独立することも可能となる年齢である。

全ての行動に責任を持ち、仕事や人生を自分自身の判断でハンドリングしていく働き方は、環境変化が激しいこれからの時代にふさわしい選択でもある。

独立にはリスクもあるが、相当な魅力があることも確かである。

独立をするために必要な要件は、先述したようにアイデンティティの確立、経験や人脈の蓄積であるが、もう一つ大切なものがある。

それは、会社の看板を外れた時の自分のブランド力である。

自分のブランド力を確認する方法は次のような方法がある。

専門学校から学生への講義依頼
行政からの介護予防に関する講演依頼
上司や上席者から依頼された対外的な仕事
などの自分に対して依頼されたものが、自分と言う個人に来たものなのか?それとも会社という看板に対するものなのかを判断する方法である。

もし、会社と言う看板に来たのではなく、自分という個人に依頼されたのもであればブランド力は着実に高まっていると言えるだろう。

多くの人は会社のブランドにぶらさった状態で仕事をしている。

しかし、社会環境が不安定な時代においては、会社のブランドに依存するのではなく、個人のブランドを高めておくことが労働市場を勝ち抜く上では重要である。

独立をするタイミングは、個人のブランド力が高まっていることを実感できるタイミングであると言えるだろう。

独立を考えている人は、今一度、自分のブランド力を確認することをお勧めする。

戦略なきセラピストのキャリアデザインは成功率が低い

PT・OT・STは他の医療職と比較して、自己研鑽に非常に熱心な職種である。

筆者はセミナー事業をしているので、このことを良く実感する。

また、大手出版会社の調査によるとPT・OT・STの一人当たりの書籍購入は他の職種を大きく上回るそうだ。

しかし、自己研鑽のための論文執筆、学会発表、セミナー参加は手段であり、目的ではない。

目的は、「なりたい自分になること」「社会的価値の創出」「組織への貢献」「対外的評価の向上」などであり、自己研鑽はそのための手段にしか過ぎない

手段を目的に活かしていくためには、キャリア戦略が必要である。

キャリア戦略とは

目的-現状=戦略

と言える。

 

つまり、目的と現状のギャップを埋める方法を考えることがキャリア戦略である。

優れた戦略をとるためには次のようなことに留意する必要がある。

人生の目的を明確に定める
自分のやるべき仕事の範囲を明確に定める
どの業界で働いていくかを決定する
目的とする業界で働いていくためにどのような能力が必要であるかを定める

例えば、以下のようなものが戦略として優れていると言える。

人生の目的:在宅リハビリテーション分野の第一人者になる
仕事の範囲:学術と臨床
どの業界:在宅ターミナル患者
どのような能力:フィジカルアセスメント・内科系疾患・呼吸循環機能・摂食嚥下・ポジショニング

やみくもに、論文執筆・学会発表・セミナー参加をするのではなく、キャリア戦略を立案することが大切である。

そのためには、業界の動向、自分の価値観、キャリアの種類、能力開発に必要な手段などに関する情報収集を行う必要がある。

そして、さらに大切なことは「自分自身の仕事や人生をどのようにしたいのか?」ということを考える時間を確保することである。

つまり、キャリア戦略を立案・実行するにも知識や技術が必要であるということだ。

しかし、ほとんどのセラピストはキャリア戦略のための知識や技術を学んでいない。

キャリア戦略なき自己研鑽は、仕事や人生の投資にならずに、不良債権となる。

自己研鑽に熱心なセラピストほど今すぐキャリア戦略を再考しなければならない。

 

 

 

年功序列制度は悪いことなのか?

成果主義や目標管理制度が浸透しつつある日本において、年功序列制度は「悪」として考えられている。

年功序列制度とは
勤続年数、年齢などに応じて役職や賃金を上昇させる人事制度・慣習のシステム
である。

日本経済が上昇の一途を辿っていた1965年から1990年代において、企業における年功序列制度は一般化し、日本の社会における一種の文化となった。

その後、年功序列制度は実力のない人が高い賃金を得られる、実力があっても若い人が評価されない、企業にとって優秀な人が評価しにくいなどの理由から、徐々に衰退の一途を辿っている。

しかし、年功序列制度は人材育成の本質を実践する制度として、近年見直されている。

「年齢を重ねた人が高い給与をもらう」と言うのが今までの年功序列制度の解釈である。

しかし、次のような解釈がこれからの年功序列制度の在り方である。

「年齢を重ねるごとに、知識や経験が豊富になり、それにより企業価値を高めることが出来るようなった人が高い給与をもらう」

年功とは

年と共に生じる功

である。

年功序列制度が問題になる企業の問題の本質は、人材育成が出来ていないことである。

人間は年を重ねれば知識や経験が増えるのが普通である。

そんな普通のことが実現できない企業の人材育成の在り方が、年功序列制度における本質的な問題である。

皆さんの組織に40代・50代で大した企業への貢献もしていないのに高い給与をもらっている人いないだろうか?

その人の給与を下げる方法は、企業への貢献を中心にした人事考課制度を導入することである。

人材育成や人事考課を適切に行えば、必然的に「年と共に生じる功」が実現し、年功序列となる。

皆さんの組織の年功序列制度は、組織への貢献がない人も高い給与がもらえる制度か?それとも、「年と共に生じる功」を実現する制度か?

今一度、自社の年功序列の在り方を考えていただきたい。